ゴールドマン・サックスの事業内容/経営戦略
目次
- ゴールドマン・サックスの特徴
- 日本での投資事例
- これまでの事業の歩み
- 今後の経営戦略
- ゴールドマン・サックスや、出身者による著書
ゴールドマン・サックスの特徴
ゴールドマン・サックスは、投資銀行業務、証券業務および資産運用業務を中心に、多岐にわたるグローバルな金融サービスを世界中の企業、金融機関、政府機関等に提供している世界有数の金融機関です。グローバル34,000人、日本1,100人、預かり資産1,178十億ドルという、名実ともにトップ投資銀行といえます。2015年度は、営業収益が758億円、営業利益が321億円となっています。
日本国内の多くの大手企業の事業再構築や資金調達、M&A(合併・買収)による戦略的な事業拡大などのビジネスを手がけています。また、国内外の機関投資家の資産運用のために、エクイティ、債券、コモディティ、通貨、それらを基に組成されたデリバティブ等を提供しているほか、企業価値の向上を目指すプリンシパル投資も行っています。
ゴールドマン・サックスの強さの秘訣は、徹底した合理主義と人脈にあります。 リーマンショックの際には、投資銀行が次々と破綻する中逆張りで利益を出したり、不動産投資銀行やマーチャントバンク、不良債権ビジネスやプライベートエクイティも常に先駆的存在感を示したりと、戦略の俊敏さと合理性が際立っています。また、歴代経営陣はホワイトハウスと関わりが深く、ゴールドマン・サックス出身者によるビジネスネットワークは強固なものがあります。
しかし、社員の1/4がテクノロジー部で勤務していることはあまり知られていません。ゴールドマン・サックスが開発・育成に携わった情報伝達・リスク管理・投資分析ツール等は、実際に商品化されたものもあります。
外銀の人気低迷を回復させるべく、人事にも力を入れています。2015年度新たにマネージング・ディレクターになったメンバーの40%はアナリストからのスタートであり、新卒を育てる環境は以前より改善されています。
一方で、「制度として」毎年従業員の約5%を解雇していることはあまり知られていません。また、長引く不振から抜け出せずにいる債券取引など、一部の事業において人員削減の割合が拡大してきている例もあります。2015年はアナリストアソシエイト・ヴァイスプレジデントを17%増加させる一方でパートナー・マネージング・ディレクターなど高報酬のメンバーを2%削減する、社員の25%をソルトレイクシティー、ダラス、アービング、ワルシャワ、シンガポール、ベンガルールなどの低コスト拠点で採用するなど、人件費の圧縮傾向は強まっています。
社員総数は過去4年間に増加したものの、報酬および福利厚生費の総額は約2.7億ドル減少。入社を考える時から、リスクとリターンを計算しなければならない会社といっても良いかもしれません。
日本での投資事例
投資銀行業務では、下記のような投資事例があります。経営難に陥っていたユニバーサル・スタジオ・ジャパンへの支援を行ったり、成長が見込まれる企業に対して多額の投資を行ったりと、長期間にわたり多くの資金が提供できるゴールドマン・サックスの強みが生かされています。
- ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)への投資
- JREへの投資(再生可能エネルギー発電事業)
- イー・アクセス、イー・モバイルへの出資
- 郵便貯金、簡易生命保険の投資顧問
- 公的年金の運用
- NTTドコモの海外IPOサポート
- 経営不振のゴルフ場を、日本最大級のゴルフ場運営業者へと再編
ほか
これまで事業の歩み
1869年、ニューヨーク州に設立されたゴールドマン・サックス。投資銀行業務、機関投資家向けクライアントサービス、投資及び貸付業務、投資運用業務の4つを柱に世界へ事業展開してきました。
東京事務所の開設は1974年、東京支店設立は1983年であり、米国の投資銀行としてアジアで最初に営業を開始した会社の一つです。近年では、USJの再生や、ゴルフ場の再建などでも話題を集めました。
日本での歴史もながいことから官公庁を含め信頼を集め、郵便貯金、簡易生命保険の投資顧問、公的年金の運用など運用がシビアな案件も手がけた実績があります。
ゴールドマン・サックス出身の著名人には、以下の人物がいます。
- 松本 大
- マネックスグループ代表取締役社長CEO、GS最年少ゼネラル・パートナー
- 木村 正明
- Jリーグ・ファジアーノ岡山代表
- 塩野 誠
- 経営共創基盤 取締役マネージングディレクター・パートナー
- 仲 暁子
- ウォンテッドリー株式会社代表取締役CEO
- 水永 政志
- スター・マイカ代表取締役社長(第11回ポーター賞受賞)
- 江原 伸好
- ユニゾン・キャピタル代表取締役
- 神谷 秀樹
- ロバーツ・ミタニ・LLC創業者(日本人初の米国投資銀行設立)
- 藤野 英人
- レオス・キャピタルワークス株式会社代表取締役社長
今後の経営戦略
短期的には厳しい業績予測をしており、近年はコスト管理対策に重点をおいています。
徹底したコスト管理の結果、2015年の投資銀行部門は歴代2番めの高収益で、財務面についてはほぼすべての尺度でモルガン・スタンレーを上回っています。従業員は40%少ないものの、ROEは11.2%であり、これはモルスタの2倍です。
事業面では、金融危機以前のウォール街を支配したトレーディングが盛り返し、ライバルの減った競争環境で利益を享受できるといった楽観的な戦略を立てています。簡単にいえば、「今まで通りのビジネス、ただしコストは減らす」といった戦略です。富裕層向けのビジネスの拡大を目指すモルスタとは異なる戦略となっています。
スタートアップを始めとしたPEファンドとしての投資、ビッグデータ関連の投資など、伝統的な産業だけでなく新規事業創出のための投資もわずかながら始めており、これからの行方を見守る必要があるでしょう。
ゴールドマン・サックスや、出身者による著書
ゴールドマン・サックス出身者の書籍のうち、ごく一部をご紹介します。