三井物産の事業内容/経営戦略

目次

  • 三井物産の特徴
  • 主な事業例
  • これまでの事業の歩み
  • 今後の経営戦略
  • 三井物産や、出身者による著書

三井物産の特徴

三井物産株式会社は日本で歴史のある総合商社です。本社従業員は5900名、グループ全体をみると43000名以上が従事しています。世界65カ国に事業所を持ち、海外拠点も126箇所にのぼるなど、まさにグローバルビジネスを日々実践しています。

事業分野は、機械・インフラ分野、エネルギー分野、化学品分野、生活産業分野、次世代・機能推進分野、金属分野の大きく6つに分類されます。それぞれの分野においても更に細かい区分があり、三井物産の事業体形は年々複雑化。現在は連結子会社・持分法適用会社あわせて約460社で事業を行っています。

機械・インフラに関連する会社は100社を超え、分野別従業員数も三井物産の中では最大を誇ります。一方、実際の売上利益はエネルギー分野が最大となっているようです。

地区別での売り上げ収益は、米国が圧倒的に多くなっています。他セグメント(欧州・中東・アフリカセグメント/アジア・大洋州セグメント)と比べると、米国がおおおよそ8~9倍ほどあることから、海外市場において米国での取り組みが現段階においては重要であるといえるでしょう。

リーマンショック時においても全体の収益を上げているなど安定した経営状況を見せていましたが、2015年度においては創業以来の赤字が見られました。本社における従業員数に関しては減少傾向にあるものの、ここ何年かは6000人程度を水準とした推移を見せています。

主な事業例

機械・インフラ分野

トヨタグループ(トヨタ、日野、ダイハツ)とのバリューチェーン展開(米州、アジア)、ヤマハ販売金融事業(アジア)、ペンスキーオートモーティブグループとのディーラー事業(米国、欧州ほか)およびペンスキートラックリーシングとの商用車リース、レンタル、物流事業、鉄道貨車・機関車リース事業(米国、欧州、ブラジル、ロシア)、貨物鉄道事業、旅客鉄道事業(ブラジル)

エネルギー分野

オマーン陸上油・ガス田開発・生産プロジェクト(オマーン)、エンフィールド・ヴィンセント油田開発・生産プロジェクト(豪州)

生活産業分野

ブランドリテール事業(PaulStuart の製品販売など)、コントラクトフードサービス(給食)関連事業(日本、中国)

次世代・機能推進分野

TVショッピング事業(日本、中国、インド)、データセンター・クラウド事業(日本、インドネシア、ベトナム)、物流センター事業(日本およびアジア諸国でのEコマース・通販対応を含む消費財物流)、スペシャルティロジスティクス(重量物ハンドリング事業など)、企業投資事業(バイアウト投資、国内外におけるベンチャー投資)

化学品分野

MC社でのメタノール製造事業(サウジアラビア)、Celanese社とのメタノール合弁製造事業(米国)

金属分野

サウスウォーカークリーク、ポイトレル炭鉱事業(BMC社操業、豪州)、米電炉ニューコア社との合弁会社、スチール・テクノロジーズ社が北米各地に鋼材加工拠点を展開(米州)、サルテン社との中近東における総合パッケージ製造・販売事業(トルコ)

これまでの事業の歩み

1876年頃に益田孝を社長として、三井物産会社が設立されます。名前の由来は三井財閥の支援を受けていたことからでした。商事組織としての取り組みを強化し事業内容を拡大していくも、戦後の財閥解体のため組織解体。新たに「第一物産」が設立され、旧三井物産の業務を行っていくこととなります。解体後、各事業が順調に成果を出し続け、1959年には全事業合同を果たします。これが現在の「三井物産」となっています。米国三井物産、1974年には欧州三井物産を設立するなど、早い段階において海外との取り組みを実施してきたのも特徴的です。

天然資源関連事業を重要視しており、アメリカ・モービル石油と合弁で極東石油設立、アブダビ・ダス島LNG開発契約の調印、三井石油開発の設立などを行っていきます。1990年代にも、サハリンIIのプロジェクト契約を調印したり、インドネシアのパイトンプロジェクトのプラント建設契約を締結するなど、「エネルギーの生産・開発」に関する大きなプロジェクトを動かしています。

事業内容の多角化と企業買収を積極的に実施しており、保有する子会社数は増加傾向にあります。近年には医療事業にも参入し、日本で開発された医療技術をアジア諸国でも生かしていく方針です。2011年には、アジア各国・トルコにおける病院経営・運営受託からヘルスケア関連事業までを行う、アジア最大手の民間病院グループ「IHHヘルスケア社」へ出資参画。また、エス・エム・エスとの共同出資においてMIMSグループ(アジア大洋州における医療情報サービス提供するグループ)を買収し、アジアでの医療分野における活動に期待を寄せています。

三井物産出身の著名人

籾井 勝人
三井物産元代表取締役副社長、現・NHK会長
林芳正
政治家

今後の経営戦略

2016年3月期連結決算の最終損益が700億円と、資源安の影響により創業以来初の赤字を計上しました。2020年度にむけた活動内容として『「既存事業」の収益基盤強化と「パイプライン案件」の完遂』を挙げています。つまり、引き続き資源を重要分野と位置づけ、優良資産買収を進めながらコスト削減を追求するということです。特に天然ガスの生産から販売までにおける一連の事業への投資を強めおり、「イタリア・テンパロッサ油田」や「モザンピーク 炭鉱・インフラ・LNG」などにおける開発には将来的な期待が大きいようです。これらのプロジェクトへの投資額はそれぞれ1兆円を超える規模になるとされています。こういった大規模投資における結果が出るまでには数年の時間がかかるために、三井物産の業績連動ボーナスカットが行われており、この傾向はしばらく続くでしょう。

また、前述のIHHヘルスケア社を核として医療関連サービスの事業展開を進める方向性も明らかにしています。今後の戦略の動向に注目が集まります。

三井物産や、出身者による著書