丸紅の特徴・企業研究レポート

目次

  • 丸紅の特徴
  • 事業事例
  • これまで事業の歩み
  • 今後の経営戦略
  • 丸紅や、出身者による著書

丸紅の特徴

スタジオジブリが制作した、グループの企業イメージ動画が一時期話題となった丸紅。世界67カ国・120箇所の拠点を持つグローバル総合商社です。生活産業グループ、素材グループ、エネルギー・金属グループ、電力・プラントグループ、輸送機グループに分かれた事業運営を行っています。

また、事業を業種別に分けるだけでなく、セールス&マーケティング事業、ファイナンス事業、安定収益型事業、資源投資と4つのビジネスモデルに明確に分けて経営方針を分けていることが特徴的です。グローバル展開の手法は、現地の有力プレイヤーを各地域で目指すグローバル×ローカルの戦略が採用されています。

特に強みを持つのが穀物事業で、総合商社の中でトップの取扱量である6700万トンを誇ります。次いで農業資材を扱うヘレナ事業、輸送機関連事業(航空機・船舶・自動車等)、発電事業、資源投資などが主な収益源です。その他、日本のコーヒーシェア30%、世界のエチレントレードシェア30%などが有名です。

2016年3月期は資源安の影響もあり業績が大幅に悪化、連結純利益は前期比433億円・41%減益の623億円となっています。チリの銅事業やオーストリアの鉄鉱石事業などの減損処理が大きな要因です。

教科書にも載ったロッキード事件以外にも、2002年以降にインドネシア発電所開発をめぐる贈賄事件なども起こっており、コンプライアンスの問題が度々ニュースになっています。

事業事例

生活産業グループ

穀物トレーディング、ASEANにおけるタイヤ小売事業、携帯電話販売代理店事業、不動産アセットマネジメント事業ほか

素材グループ

農業資材の小売(ヘレナ事業)、エチレントレード、紙パルプ事業ほか

エネルギー・金属グループ

LNG事業(カタール、赤道ギニア、パプアニューギニア、ペルー)、石油・ガスの開発生産(米国、英国、ロシア)、鉄鋼製品事業、金属資源事業(豪州・チリ等での鉄鉱石、石炭、銅の鉱山開発やアルミ精錬事業)ほか

電力・プラントグループ

電力事業(英国ウェスタモスト・ラフ洋上風力発電事業など)、水事業(フィリピン・マニラ首都圏における上下水道事業)、オイル・ガス事業、産業プラント事業、交通インフラ事業(タイ・バンコク都市鉄道パープルライン向け鉄道システム納入・メンテナンス事業など)ほか

輸送機グループ

自動車ディーラー事業(イギリス)、建機レンタル事業(ミャンマー)、航空機オペレーティング・リース(アメリカ)、冷凍冷蔵トレーラーリース事業(アメリカ)、LNG船の保有・運航事業、デジタルサイネージ事業(日本)ほか

これまで事業の歩み

丸紅は、もとを正せば伊藤忠との兄弟会社にあたります。近江商人であった伊藤長兵衛が「伊藤長兵衛商店」を創業、弟であった伊藤忠兵衛が「紅忠(べんちゅう)」を出店。その後繊維商社となった両者は分離合併を繰り返し、1944年には大建産業という社名になります。しかし、終戦後の財閥解体により伊藤忠商事・丸紅などに分割され今に至ります。

総合商社の大手であった三井物産・三菱商事も解散の対象となり弱くなったため、繊維商社であった伊藤忠・丸紅は総合商社化。1950年には大阪・東京証券取引所に上場、1951年にはニューヨーク現地法人設立など、その規模を一気に拡大していきます。

さらに1955年、経営危機だった高島屋飯田を吸収合併し、メインバンクを住友銀行から富士銀行(現・みずほ銀行)に変更。みずほグループの総合商社として歩み始めました。その後も、1966年東通の吸収合併、1973年南洋物産との合併など拡大は進み有力総合商社群「3M」の一角として三菱商事、三井物産に次ぐ3位の地位を確立しました。しかし、1976年にロッキード事件で社長を含む丸紅幹部が逮捕され、世間からの評判を落とし失速してしまいます。

1997年のアジア通貨危機によって多大な不良債権を抱え、1998年には一度業績を立て直すためリストラクチャリング・プランを実施。倒産の危機に瀕したものの、2013年には純利益2000億円超えを達成し復活を遂げています。

今後の経営戦略

丸紅は、Global Challenge 2018という中期経営計画の中で、競合を他商社ではなく「各分野・市場のトッププレーヤー」に設定。総合商社としての戦いではなく、個別ビジネスの伸長を目指しています。他商社が貿易から事業投資へと舵を切る中で、セールスやマーケティング、トレーディングを中心としたビジネス展開を計画しています。

グローバル展開では、すでに強みのあるアグリ関連事業、インフラ事業、輸送機関連事業をより強くする一方、米国を中心とする先進国、中間層が厚みをますASEANを重点市場に位置づけるとともに、将来の布石としてサブサハラ地域での取り組みも強化していく方針です。

グローバルにおける地域密着型ビジネスの強化を目標に、地域に根ざしながら特定の市場・商品を集中的に掘り下げ、競争相手を寄せ付けない強みを追求していきます。

2018年度中経における業績目標(純利益)は以下の通りです。

セールス&マーケティング事業
1,400億円
ファイナンス事業
400億円
安定収益型事業
500億円
資源投資
200億円

丸紅や、出身者による著書