巨大組織が陥る個人の才能を潰してしまう罠とは

優秀な若手が、巨大組織に入って熱意を失うのはなぜなのか。その原因は日本社会の構造問題と、経営者と社員との信頼関係にあった。エスキュービズム・ホールディングスの薮崎氏と真田氏が、個人の能力と組織の成長を最大化させる組織づくりの意義を語る。

Jun, 30, 2016

株式会社エスキュービズム

薮崎 敬祐 氏 ・ 真田 幹己 氏

頑張らないことが最適解となってしまう組織の仕組み

―企業や組織に大きな変化が起きていると言われますが

■薮崎 1990年代までは経済成長とともにパイが増え続けていましたが、少子高齢化に伴い経済成長が止まった今は、パイを奪い合うゼロサムゲームになっています。問題は、大抵の企業は利益が伸びていないにもかかわらず、50年前に定めた年功序列・終身雇用制度が続いているということです。つまりは、パイが大きくなっていたからこそ成立していた富の分配方法を、パイが縮小している今になっても続けているのです。これにより給与が高額な管理職が増え、膨れ上がるコストを、数も給与も少ない若手が負担するという不合理な構造になっています。これでは、いくら頑張ったところで会社の成長が望めず、給与が上がることも期待できません。いくら頑張っても評価されない。こういった若手の最適解は適度に手を抜くことです。これでは人が育たない。このような若手にしわ寄せが来ている企業の問題は、社会保障費の世代間格差と同じ構造をしています。

―企業は今後、どのように組織を組み立てていけば良いのでしょうか

■薮崎 こうした組織の問題に対して経営者が取りうる解決策は、会社を成長させるか、人を切るかのどちらかです。私たちのような新興企業が前者を選ぶのは当然のこととして、巨大企業がさらなる成長を目指すとなると、組織の再編成が必要となります。今の大企業の多くは、戦後経済を主導した銀行が積極的に融資した基幹産業に取り組み、ここまで成長してきました。ところが現代において、日本に伸びしろのある産業はほとんど存在しませんから、1兆円産業を一つ抱えるという、かつて常識とされていた組織形態は変革を余儀なくされています。今後日本企業が成長するためには、複数の産業で、複数の事業を営むホールディングス・カンパニーへと移行し、一つひとつの事業部を黒字化し、プロフィットセンターを多く形成することで利益を上げるしかないでしょう。

―それがエスキュービズムの組織戦略にも反映されているのですね

■薮崎 はい。こういった経済状況の変化を受け、エスキュービズム・ホールディングスも、2030年までに売上10億円規模の事業を300創ることを目標としています。企業の成長率は市場の成長率を大きくは超えません。国内には成長市場がほとんど無い以上、色々な市場に事業を広げる必要があるのです。事業を複数ライン走らせているのは、社員一人ひとりにさまざまな経験を積ませることで、自分の能力が最大限発揮できるフィールドを見つけやすくする狙いもあります。 才能を信じ、環境を用意する

才能を信じ、環境を用意する

―旧態依然とした組織構造の他に、若手の成長を阻害する要因はあるのでしょうか

■薮崎 ここまでは現在の大企業が持つ構造的な問題についてお話してきましたが、新卒1日目に持っていたはずのやる気を軒並み失う真の原因は、こういった外的要因ではなく、心理的な内的要因にあると考えています。先にも触れたように、頑張った分だけ評価されるということが重要です。そして「どれだけ頑張ったか」というのは結果への評価であるべきです。しかしながら、結果というのは、「今」頑張った先の「未来」にある。これが難しい。今頑張ったからといって、結果が出るかどうかは分からない。じゃあ頑張らない。これではダメなのです。そこで、「会社は、自分に成果を出させようとしている」という企業と個人との信頼関係が重要になるのです。

―信頼関係を築くために必要なこととは

■真田 経営陣が社員一人ひとりに成果を出させる気があるということを体感してもらうことですね。エスキュービズムでは、やる気と能力のある社員には惜しみなく成長環境を用意しますが、あとはそれぞれ自ら考え行動する中で突然変異とも言えるような成長を遂げることを期待します。もし結果が出なかったとしても責任は追及しませんが、途中で辞めることも許しません。大切なのは最終成果の評価から逃げないこと。やり続ければどのようなことも上手くいくと考えているので、成功するまでやり切ってもらいます。こうして成果が出て、それが評価されれば、自然と信頼関係は生まれてくると考えています。

―実際に若手が活躍された事例があれば教えてください

■真田 入社3カ月でベトナム・ホーチミンへ赴任し、かき氷カフェの経営を任せた新卒の女性社員がいます。彼女は言葉の通じない異国の地で、1人、家もオフィスも無い状態から、店舗探しやホーチミンのマーケティング調査、現地スタッフの採用とマネジメントまで行いました。悪戦苦闘しながら順調に売上を伸ばしてくれました。

エスキュービズムが目指すのは、優秀な人材が最大限活躍する組織

―理想とする組織像はありますか

■薮崎 エスキュービズムはよく将来どういった事業をして何者になりたいのか、という質問を受けます。しかし結局のところ未来のことは分からない。ゆえに事業面でのWhatはあえて決めず、一人ひとりがやりたいことをやって事業を創っていくという組織づくりを考えています。言えるのは「2030年に300の事業を立ち上げ3000億円の売上を出す」という目標と、目標達成のためにどのように事業を立ち上げ経営するかというHowの部分のみ。Howにフォーカスしていれば、時代に合わせて柔軟な思考を持って経営することが可能になります。事業面でのWhatが変わったからといって、人材が離れていくこともありません。

―事業立ち上げのHowについてお聞かせください

■真田 エスキュービズムの事業は、商品や技術ありきのプロダクトアウトではなく、答えはお客さまのみが知るとの考えから、ニーズを満たすためのマーケットインを基本としています。売れると思った商品は研究開発などという手続きを取らず、素早く少量のプロトタイプを作って、実際にお客さまに使っていただきます。そしてお客さまとの対話を繰り返しながら、最適解に向けて改善を積み重ねていくのです。このように私たちは、既存市場において顧客ニーズを最速で満たす手法を用い、価値を生み出しています。こうした体験ができるのはエスキュービズムだからこそ、他社にはない面白さではないでしょうか。

―最後に学生へメッセージをお願いします

■薮崎 エスキュービズムは、本人のやりたいことと社内のオポチュニティをマッチングさせることで、個と組織の成長を最大化しています。目指すのは、優秀な人材が一人ひとりやりたい事業に打ち込んで、最大限活躍する組織づくり。こうした組織ビジョンに共感して、やりたい事業にとことん打ち込む覚悟のある方は、ぜひエスキュービズムの門を叩いてください。その能力を余すこと無く発揮できる環境を用意してお待ちしています。

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▼エントリー

株式会社エスキュービズム

Interviewee

薮崎 敬祐 氏

やぶさき・たかひろ

株式会社エスキュービズム

代表取締役会長兼社長

1979年兵庫県生まれ。東京大学大学院経済学研究科修了後、リクルートに入社。新卒および中途採用を中心にした人材サービスのソリューション営業部門にて、幾多のトップセールスを記録する。2006年5月のエスキュービズム設立以来、テクノロジー、小売、製造、食品、自動車、人材支援など広範な領域に事業展開している。2014年にはホールディングス制に移行した。

Interviewee

真田 幹己 氏

さなだ・もとき

株式会社エスキュービズム

取締役

1983年北海道生まれ。中小企業(飲食・美容・医療業)の約2000店舗に対しITを利用した業務改善や販促施策のコンサルティングを経験後、2011年にエスキュービズムに入社。大手企業のECシステムや業務改善のタブレットシステムをエヴァンジェリストとして数多く手がける。現在、取締役としてグループ全体の人材戦略を統括し、エスキュービズム通商代表取締役社長を兼務する。