東京大学・ボストン コンサルティング グループ出身でアウトドアスポーツを愛する2人が、心から欲しいものを作るために創業したBONX(旧:チケイ)。一般的にスタートアップにとって障壁の高いハードウェア業界に参入できた理由とは。プロダクトのコンセプトとPR手法にその秘密を探る。
Jun, 30, 2016
株式会社BONX(旧:チケイ株式会社)
宮坂 貴大 氏 ・ 楢崎 雄太 氏
学生時代は1年中、南半球と北半球を行き来するほど、スノーボードに熱中していました。もともと事業を創りたいという思いはあったものの、その時点ではスノーボードに関する事業を興すことは考えていませんでした。しかし近年、サーファーが自分を撮影するためにつくり出した『GoPro』にインスピレーションを受け、スノーボードから派生したアイデアをプロダクトにしました。それが、スノーボード中にコミュニケーションを取ることができるウェアラブルトランシーバー『BONX』です。
使い方は簡単。『BONX』を耳に掛け、スマートフォンとBluetoothで同期します。あとはただスノーボードを楽しむだけ。自分の練習していた技が初めてできるようになった瞬間、思わず「決まった!」と叫んだなら、耳元で仲間たちが「おめでとう!」と祝福してくれるでしょう。転んで「痛い!」とうめけば、すぐに「大丈夫?」と心配してくれるでしょう。
このようなハンズフリーの通話を可能にしているのが、人の声だけを認知する発話検知技術です。会話している間だけ通信が行われるため、バッテリーが必要以上に消耗する心配はありません。また、人の声を邪魔する風切音は、ハードウェアにノイズをカットする仕掛けを施すことで低減させています。つまり『BONX』は、ハードウェアとソフトウェアを高度に統合することで、ありそうでなかったユーザー体験を実現しているのです。
『BONX』を使えば、これまでコミュニケーションを取ることが容易ではなかったスノーボードやロードバイク、サバイバルゲームといった様々なアクティビティをもっと楽しむことができるでしょう。
『BONX』の開発にあたっては、クラウドファンディング※を利用しました。アイデアを公開した初日に目標金額を超える300~400万円が集まり、涙が出そうでした。これだけの支援を得られたのは、プロダクトの背景にある世界観やストーリーが影響しているのではないでしょうか。アウトドアスポーツを愛する自分が心から欲しいと思って作ったモノが『BONX』であり、世界を遊び場にするという世界観に、多くの人が共感してくれたのだろうと思います。
そして、この共感こそがクラウドファンディングに『BONX』のアイデアを公開した最大の目的です。資金を集める過程で次第に形成されるユーザーコミュニティが、何よりも財産になるだろうと考えました。結果的に、ユーザーから直接フィードバックを得ることができ、『BONX』をスピーディーに改善できました。「何十年かぶりにスキーをしたのですが、『BONX』のおかげで楽しく遊べました」という声をいただいたときには感激しましたね。地道な改善を通してファンを増やすことで、次のプロダクトのPRも勢い良く進めていけると思います。
BONX ベーシックモデル
株式会社BONX(旧:チケイ株式会社)
宮坂 貴大 氏
みやさか・たかひろ
株式会社BONX(旧:チケイ株式会社)
代表取締役CEO
東京大学大学院地域文化研究専攻。卒業後、ボストン コンサルティング グループで戦略コンサルタントとしての道を歩んでいたが、ウェアラブルトランシーバー『BONX』のアイデアを思いつき、2014年11月チケイを創業した。スノーボードをはじめアウトドアスポーツをこよなく愛する。
楢崎 雄太 氏
ならさき・ゆうた
株式会社BONX(旧:チケイ株式会社)
共同創業者CTO
東京大学大学院学際情報学府を卒業後、ボストン コンサルティング グループに就職。主に日本の大手製造業をクライアントとして、3年間にわたりR&D、SCM、販売戦略構築など多様なプロジェクトに参画。かねてから抱いていたプロダクト開発への思いが強くなり、チケイを共同創業した。