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ITを活用し課題解決に導ける人が、次の変革者になれる医療の世界

アルムが開発した医療用アプリ「Join」は、史上初めて医療機器として保険適用されたソフトウェア。門外漢の船出から医療×IT領域に風穴を開けた坂野代表が、マーケットの可能性、医療におけるIT人材の希少価値、真に求められる能力を語る。

Mar, 31, 2016

株式会社アルム

坂野 哲平 氏

100万人の命を救えるビジネス

医療現場へ出向くと、ITを活用すれば解決できる問題が大量にあります。

例えば、日本では死因の第3位である脳血管疾患の発症者は、全世界で年間約1,500万人。そのうち約600万人は亡くなり、約500万人が後遺症を負っているという現状です。一方、発症後に早期に適正な診断・治療を実現できていれば2~3割の方が予後良好でいられたと発表されています。

即ち、ここにITを活用して脳血管疾患の治療を開始するまでの時間を短縮し、早期に診断・治療につなげられれば、年間100万人以上もの命を救える可能性があるのです。脳血管疾患だけではなく、急性期医療全般にもITの活用がもたらす社会的価値と事業性の大きさこそ、医療×IT領域のビジネスが意義深い点だと思います。

日本初、スマホアプリが医療機器に

アルムが開発した医療関係者間のコミュニケーションアプリ「Join」は、日本で初めて医療機器として認定を受け、保険適用されたソフトウェアという点で、医療業界×IT領域に新しい風を吹かせることができたと思います。

従来の医療現場では、脳卒中のように早期治療が必要な急患が夜中に運び込まれた際、経験豊かな医師の不在による治療の遅れから、患者の容態が悪化することが少なくありませんでした。それがJoinを導入することで、病院内外の医師と迅速に連携できるようになり、治療にかかるまでのタイムロスを減らすことができ、また医師不足という問題解決にもつながります。

さらに2016年4月からの保険適用により、医療機関がJoinを導入しやすくなるため、今後急速に利用が進み、ビジネスとしても大きく成長する可能性を秘めています。

大手もスタートアップも参入できない、不思議な医療業界

アルムのようなベンチャーが医療×IT領域を切り開いていくことに対して、学生のみなさんの中には「なぜ大手IT企業が診療領域に進出しないのか?」という疑問を持つ方もいるでしょう。その点に関しては、そもそもIT業界の構造自体が、医療業界への進出に不向きである点が挙げられます。というのも現状、大手IT企業では勃興市場である診断ソフトや医療モバイルソフトといった診療分野へは進出せず、従来からの電子カルテや医療機関の会計システムといった、診療ではなく業務・会計システムのような既存市場にリソースを集中させているので、ITを活用した新領域のソリューションを開発しようという動きが起こりづらいのです。また、医療機器メーカーにおいてもITは専門外の分野であるため、そもそもアプリ開発への進出が難しくなっているのが現状です。

だからといってスタートアップが参入しやすいかといえば、全くそうではありません。医療機器の開発には治験や薬事承認、保険適用のプロセスを含めて5~10年はかかり、投資に対するリターンに時間を要します。それゆえに資本力の乏しいスタートアップは手を出しづらく、投資家もその仕組みを十分に理解できていないケースがほとんどのため、現実的に参入ハードルが非常に高くなっている状態です。

アルムの場合は開発に必要な自己資本があった上、ITの活用に積極的な大学病院や国からの協力を受けられたことも支えになり、リスクを取って医療×IT領域を開拓してきました。 現在、アルムはグローバル展開を進めていますが、上記のような業界構造もあり、世界的にも競合がほぼ見当たりません。IT先進国のアメリカですらコンペにならないことが多く、他の業界からすれば不思議に思えるような成長市場が医療×IT領域には存在しています。

医療の知識よりも、課題解決力や戦略的にビジネスをつくれる力が求められる

医療の知識はあるに越したことはないですが、数年前までは私自身も医療の素人でしたからね(苦笑)。

医療業界はIT業界よりも遥かに長い歴史があり、医師は日本中に30万人以上もいますので、臨床のノウハウはいくらでも現場で聞くことができます。むしろ、医療のプロたちがこれまで解決できなかった医療現場の問題や困りごとを咀嚼し、どのようにITを活用して解決に導くかという課題解決力を有しているほうが、現在の医療現場においては希少な存在です。

キャリアパスという視点では、成長市場の医療×ITの組み合わせは、IT業態単体でのキャリアよりも付加価値を見出しやすいかと考えます。ただし、自らの仕事が人の命を救ったり、人に健康をもたらしたりする社会貢献度の高さに惹かれるのは結構ですが、ビジネス・オリエンテッドな感覚は必要です。そして、医療業界のように変革が容易でない業界でイノベーションを起こすためには、開拓者精神と泥臭く行動できる強さを持ち、諦めずにチャレンジし続けることが極めて重要です。

医学や薬学のバックグラウンドは必要ありません。ビジネスを戦略的にやりたい、やるからには社会の役に立ちたいという方にとって、医療×IT領域でのキャリアは十分検討に値するはずです。市場規模的にも医療業界は最大のセクターです。そこにブルーオーシャン、ホワイトスペースがまだまだあるわけで。先行者としては内緒にしておいても良いのですが(笑)、開拓者になりたい方はぜひアルムの門を叩いてください。

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【アルムが開発した「Join」とは?】

「モバイル×クラウド」でリアルタイムに医療関係者間のコミュニケーションをとることができるアプリです。クラウド上での医療用画像の共有、医療データの閲覧、関係者間のチャットの機能により、救急時などに院内外でも診療が可能になります。医療現場を支える新しいコミュニケーションの形を実現します。

株式会社アルム

Interviewee

坂野 哲平 氏

さかの・てっぺい

株式会社アルム

代表取締役社長/CEO

早稲田大学理工学部卒。2001年にアルムの前身となるスキルアップジャパン設立。キーテレビ局をはじめ150社以上と取引、100以上のデジタルコンテンツ配信サービスを展開。2015年に医療ICT事業への本格参入に伴いアルムに社名変更。医療用アプリ「Join」が日本で初めて保険適用されたソフトウェアに。