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CFOとは何者なのか?「専門性を極めたゼネラリスト」の条件

CFO人材を輩出する組織のトップが語る

Mar, 11, 2016

株式会社エスネットワークス

須原 伸太郎 氏

いま真に求められる経営者「CFO」とは

日本にはいま、経営人材が足りていません。資金面から事業支援を手がけるVCやファンドは国内でも多くのプレイヤーがいますし、日本の対外純資産は世界トップ。お金はあり余っています。しかし、肝心の事業を回す経営人材、特に現代の経営において欠かせないポジションとなりつつあるCFO(Chief Financial Officer:最高財務責任者)が十分に存在していないことが、多くの企業経営において課題になっています。

20世紀の高度経済成長期においては、爆発的に伸びる市場のニーズに応えてさえいれば企業は成長できました。加えて、大企業を中心とした系列環境が前提とされ、大企業が潤えば中小企業も潤うトリクルダウンが起こる構造もありました。企業内に高度なファイナンスや数値管理のノウハウを持たずとも経営が成り立っていたのです。

しかし近年では、マクロ環境は大きく変わり日本経済全体が縮小しているばかりか、大企業の業績悪化も原因となって系列環境は事実上崩壊しています。だからこそ、どの企業であってもより直接的にマーケットと対峙し、社内の数字を見える化して、能動的にサバイブしていく姿勢が求められています。

ところがベンチャー企業や中小企業のトップが一人でこれらを担うことは難しく、財務や管理面でCEOを支えるCFOという存在が、いまその重要性を増しています。実際、近年倒産してしまった有名企業にも、もしCFOが適切に機能していれば経営危機を乗り越えられたかもしれない、と感じる事案がいくつもあります。

「経営サポート」にはとどまらないCFOの役割

私は、こうした社会課題を捉え、中小企業にとってのCFOとして、ファイナンス、IPO支援、M&A、企業再生、事業承継、アジア進出など、クライアント企業に不足している役割・機能を包括的に提供すべくエスネットワークスを立ち上げました。

コンサルティングサービスと言っても、外部からの単なるアドバイスとは、提供している価値が大きく異なります。企業理念として「経営者の支援と経営者の輩出を通じて日本国経済に貢献する」、事業理念として「100年続く100億企業の創造」を掲げており、あくまでクライアントの経営者の目線で、事業の成長・発展においてCFOに求められる役割を柔軟に変化させ、対応しています。

私自身、リーマン・ショックの直後に1300億円の負債を抱える企業の企業再生を手がけたのですが、10名規模のチームでほぼ丸2年常駐して事に当たりました。同様に企業再生を手がけハンズオンを謳うファームはいくつかありますが、エスネットワークスのように、外部のコンサルタントとしてではなく、クライアントのCFOとして年単位で常駐するケースはあまりないでしょう。時にはクライアントの名刺をもって対外折衝に当たり、M&Aにおいても明確に当事者である企業にコミットします。コンサルタントでありながらも「他人事」ではない経営を担うべく、クライアントの一員として事業を継続的に成長・発展させることを徹底しています。

「回転扉」のシステムでCFOを育成する

当然ですが、CFOとしてクライアントに価値を提供するためには、経営人材としての素養を備えている必要があります。つまり、コンサルタントとして求められる財務会計領域の専門性だけでなく、全般的な経営能力も高い水準で求められるのです。

そこで、社内では「リボルビング・ドア(回転扉)」と呼ばれる考え方で、個人の成長サイクルを設計しています。というのは、コンサルタントとしての立ち位置に慣れてしまうと、どうしても当事者意識を強く持ち続けることが難しくなり、本来求められる経営人材としての役割を全うできないリスクがあります。そこで、メンバーが一度外に出て、シビアな環境下で成果を生み出す経験を積んだ後にまた戻ってくることで、クライアントに提供できる価値が一層幅広く、深くなることを意図しています。国内大学での学びは座学に偏りがちであることを鑑みると、こういった実学の機会は必須です。

ケースとしては、クライアントから請われて経営に参画することも多数ありますし、エスネットワークスの自社事業にコミットする場合もあります。実は、我々は自社グループとして不動産投資、教育などの事業会社も所有しており、実際に社員自らが経営経験を積むことができる環境を提供しています。

今後は経営資源のうち「カネ」にまつわる課題に加え、「ヒト」および「アジア」をテーマとした課題への対処もCFO人材には要求されるでしょう。例えば事業承継における後継者育成・組織設計やアジア市場でのIPO支援等はニーズがすでに顕在化しており、エスネットワークスでもシンガポール、香港、ベトナムに現地拠点を設置しています。

最後に、私たちは経営と経営人材にこだわるメンバーを求めています。ベンチャー企業や中小企業の経営者を内外から支援する活動を通じて、優れた経営人材を輩出し続け、事業を創造し、雇用を生み出し、ひいては日本経済の発展に貢献していきたいと考えています。

株式会社エスネットワークス

Interviewee

須原 伸太郎 氏

すはら・しんたろう

株式会社エスネットワークス

代表取締役社長

一橋大学経済学部卒業。有限責任監査法人トーマツ入所後、株式会社マッキャンエリクソンにて企業のブランド戦略立案及びマーケティング・プランニングに従事。1999年株式会社エスネットワークス共同設立。2011年4月、代表取締役社長に就任。