21世紀の企業経営を「ユーザ中心」に

人間心理を探究する、次世代型コンサルティングとは

Mar, 11, 2016

株式会社ビービット

遠藤 直紀 氏

「ユーザ中心」こそが21世紀の本質的テーマ 

起業を決意した際に、企業とは何か、何のために存在するのか、そして自分たちが何をするべきかを徹底的に考え抜きました。私が導きだした結論は「社会的課題を解決すること」でした。グローバル企業の創業記を読み漁り、彼らは皆、当時の課題を解決することで変革を成し遂げたという点で共通していることに気付いたのです。20世紀、多くの企業はモノを行き渡らせるという社会的課題を解決するために設立されました。モノがなかった時代には、とにかく生産し供給することが必要だったわけです。20世紀の課題を解決したそれらの企業同様に、21世紀の課題を解決することが自分たちの使命だと考えました。

では、21世紀の課題とは何か?私は「量から質への転換」こそが本質的課題であり、そのためには「ユーザ中心の社会づくりが必要」だと考えます。モノが行き渡れば、企業側では他社との差別化に注力するようになります。その結果、多機能過ぎてユーザが使いこなせない製品や、過剰なサービスが価格に転嫁された状況が生まれます。一方、ユーザ側ではより質の高いものや自分に合ったものを求めるようになり、ニーズが多様化します。さらにインターネットのインフラ化により、企業側からの一方的な情報発信だけでなく、ユーザも能動的に情報を発信し、自分で意思決定するようになります。この流れは、我々の生活にどんどん浸透していき、止まることはないでしょう。このような潮流の中では、人間の行動特性やニーズの徹底した理解を基盤とした新しい企業経営が必要になると考えています。「ユーザ中心の社会」という、当たり前の根本にもう一度立ち戻ろう。それこそが、私たちビービットの掲げている企業理念です。

ユーザ中心設計をマーケティングと経営に

インターネット上でのユーザの能動性を鑑みると、企業はユーザの心理や行動特性を理解した上でコミュニケーションを取らなければ成果を上げられないことは明らかです。そこで、「デジタルマーケティングの領域であれば、ユーザ理解によって大きな成果を出すことができる。ビジネスに『ユーザ理解』と『ユーザ中心設計』を取り入れる出発点となる」と考え、デジタルマーケティング戦略のコンサルティングを最初のビジネスとして選択しました。

私たちは、クライアント企業の一般的な理解に留まらず、徹底したユーザの行動観察を通して、「人間心理の解明」と「仮説検証」を行います。こうして得られた企業とユーザ双方の深い理解に基づき、双方に価値あるビジネスとコミュニケーションの設計・実行支援をおこない、従来にない大きな成果を創出しています。実際、この独自の方法論を用いて、サントリーやホンダ、日本経済新聞社など誰もが知る大手企業から、Yahoo!JAPANやライフネット生命、星野リゾートといった先進的な取り組みをおこなっている企業まで、数多くのクライアントにコンサルティングを提供してきました。

2014年からは、従来のマーケティング領域に加えて、企業活動そのものをユーザ理解を核とした「ユーザ中心」の形に変革するために、「顧客ロイヤルティ経営」を実現するコンサルティングサービスも開始しています。

一人ひとりの仕事を本当に誰かの役に立つものに

「ユーザ中心」という考え方にこだわる理由は、私が大学を卒業して最初に就職した会社での経験が基になっています。その会社はすでに倒産してしまいましたが、当時はお客様に本質的な価値を提供している実感を全く持てないまま、約1年間、仕事をしました。その結果、自分が社会に存在する意義を見失い、死んでしまいたいとまで思いました。

なかなか実感を持ちづらいかもしれませんが、他人のために役に立ちたいと考え、実際に価値を提供することで感謝されるというシンプルな「貢献志向」は、人間にとって極めて重要です。そういう視点で様々な企業活動を眺めてみると、「貢献」ではなく、「お金(売上)」が目的になっていると感じるケースも多くあります。

「お金(売上)は指標であり、良いも悪いもない」という考え方もありますが、私たちはお客様が喜んで払ってくださっている「良い利益」と、十分に納得しないで、または意図せずに払っている「悪い利益」があると考えます。「良い利益」はお客様もそれを提供する企業も双方が笑顔になれますが、「悪い利益」はお客様が笑顔になれないばかりか、貢献実感を持って仕事をできないため従業員からも笑顔を奪うのです。

数々の大企業の課題解決にあたる中で、笑顔が失われるのは個々人の意識の問題ではなく、経営の仕組みの問題だと確信しました。「ユーザ中心」の考え方で、人間にとっての品質を探究し続ける企業経営・活動の仕組みを確立し、多くの企業に適用することで、一人ひとりが貢献実感を持って日々の仕事に取り組める、仕事を通して多くの笑顔が創られている、そんな社会を目指しています。

このビジョンの実現のために、個人レベルはもちろん、組織としても、変化を機会と捉えチャレンジし続けることを大切にしています。既存のサービスを進化させ、自らの新しいサービスで置き換え続けることで、我々の社会に対する価値を高め続け、人々が長期的な「価値提供」と「笑顔」を目的に活動する、「ユーザ中心」社会への変革を成し遂げていきます。

 

株式会社ビービット

Interviewee

遠藤 直紀 氏

えんどう・なおき

株式会社ビービット

代表取締役

横浜国立大学経営学部経営システム科学科卒。アクセンチュア(当時アンダーセン・コンサルティング)を経て、2000年にビービット設立。「Marketing Communication」等、ビジネスカンファレンスにて多数講演。2013年TED×Todaiへ登壇。