世界一の経済メディアをつくる

ビジネスの意思決定を効率化し、創造性を解放する挑戦

Mar, 11, 2016

株式会社ユーザベース

梅田 優祐 氏 ・ 新野 良介 氏

世界中のナレッジワーカーの生産性を向上させる

■梅田 ユーザベースの創業には、新野と私の前職にあたる投資銀行で感じた問題意識が大きく関わっています。というのも、当時はまだ、的確な投資判断をおこなうための前提となる企業・業界データへのアクセスがきわめて不自由でした。一般消費者の領域ではGoogleにより世界中のあらゆる情報を誰もが手に入れられていたにも関わらず、ビジネスの領域では相変わらず情報取得がボトルネックとなっていたのです。経済情報を提供するサービス自体はあったものの、どれも操作が複雑すぎ、知識労働者(ナレッジワーカー)が創造的に時間を使えるとは言いがたい状況でした。

■新野 そこで立ち上げたのが、ビジネス情報の収集および分析の効率化を図り、操作性を圧倒的に向上させたオンライン情報サービス『SPEEDA』でした。これは、現在では世界180カ国における企業の財務・株価・統計データや経済ニュースに、専属のアナリストによって執筆される550を超える業界レポートを付与した形で一貫して提供するプラットフォームとなっています。当初はプロフェッショナルファーム、つまりコンサルティングファームや投資銀行等をターゲット顧客に設定していましたが、すでに3大戦略コンサルティングファーム、5大証券会社の全てが導入するに至っています。また、経営企画室や新規事業開発室といった、事業会社の意思決定部門にも導入が広がっており、事実上、ほとんどのビジネスパーソンが『SPEEDA』を通してビジネス情報にアクセスする世界が見え始めています。

■梅田 『SPEEDA』が目指すのは、「ビジネス界のGoogle」とでも言えるような、ビジネス情報プラットフォームのデファクト・スタンダードとなることです。不必要な作業を自動化し、ナレッジワーカーがより創造的な仕事に集中できる。良質な情報へのアクセスを容易にし、より的確な判断のできる人を増やす。こうして、世界の生産性を向上させ、創造性を解放していくことこそ、ユーザベースの存在意義だと考えています。

■新野 我々は世界展開の第一歩として、アジア経済の中心地となるシンガポールと香港、上海へ進出しました。まもなく北米でも本格的にスタートする予定です。日本発の企業が、グローバルなインフラとなりうるサービスを創る。そんな挑戦には、大きな醍醐味があります。

多様な考え方、ものの見方を可視化するプラットフォーム

■梅田 『SPEEDA』を展開する際に我々が採った戦略は、まず情報を集約したプラットフォームを創り、十分なユーザを獲得した上で、人が介在して生み出したオリジナルコンテンツを提供する、というものでした。これは、新たに展開している一般消費者領域の経済メディア『NewsPicks』でも踏襲しています。

近年では、スマートフォンとソーシャルメディアの登場によって、情報流通の構造に革新がもたらされています。消費者はスマートフォンにより、良質なコンテンツに常時アクセスできるようになりました。同時に、ソーシャルメディアを介して情報流通の片翼を担ってもいます。新聞や雑誌といった紙媒体が一方的に情報を供給していた時代は過ぎ、消費者側がより大きな力を持つ、情報流通のパワーシフトが引き起こされたのです。

■新野 消費者にとっては、情報を得るための選択肢にあふれた時代です。だからこそ、もっとも効率的に、本当にほしい情報を得られるメディアを創ることが最重要な課題となります。『NewsPicks』では、多数のコンテンツサプライヤーと提携してニュースや解説記事を配信していただいています。また、ローンチから1年半ほど経ったタイミングで独自編集部を立ち上げ、より一層練り込んだ特集企画やオリジナル記事といった読者ニーズに応えられるコンテンツを提供できる体制を整え始めました。その上で、多くの有識者が各記事に対してコメントを書き、読者が多様な意見を解釈できる仕組みを作り上げた点はユニークだと自負しています。

リスクを恐れず、世界に挑戦しよう

■梅田 創業当初に新卒でユーザベースに入社したある社員は、同級生がコンサルティングファームや投資銀行で大きな仕事をしているのに、自分は名もない企業で泥臭い仕事をしていることに長い間葛藤していました。それが、今では事業責任者として、自ら大きな意思決定をして、事業を前進させています。自ら意思決定し、結果を出す。これこそリアルビジネスの醍醐味であり、投資銀行やコンサルでは経験できないことです。機会にあふれたスタートアップの環境では、特別なバックグラウンドが無いとしても、事業を前進させる主体として角度の急な成長曲線を描いていけると思います。

■新野 中途で入社を希望される30代前後の方は、口を揃えて若い時から挑戦をしていれば良かったと言います。スタートアップに初めから入っていれば、20代後半で役員クラスの活躍ができることも珍しくありませんから。日本の一流大学に通う学生は、その時点でのポテンシャルはアジアトップ層だと思ってよいでしょう。だからこそ、自分のバリューが最も高まるフィールドを、グローバルな視野を持って探しているアジア諸国の学生と同じように、視野をぐっと広げてキャリアを選択してほしいと思います。慣れ親しんだ環境を飛び出して、求められるレベル感を肌で感じてみてください。きっと、挑戦したくなるはずです。

株式会社ユーザベース

Interviewee

梅田 優祐 氏

うめだ・ゆうすけ

株式会社ユーザベース

代表取締役共同経営者

コーポレイトディレクションにて製造業、商社を中心とした全社成長戦略、再生戦略の立案・実行支援、食品メーカー等のBPRを中心に従事。その後、UBS証券投資銀行本部にて、事業会社の財務戦略の立案、資金調達支援、自己勘定投資に従事。2008年、ユーザベースを設立。

Interviewee

新野 良介 氏

にいの・りょうすけ

株式会社ユーザベース

代表取締役共同経営者

三井物産にて、国内中間流通戦略の立案、事業投資の実行、企業再建に携わる。2007年にUBS証券に入社。投資銀行本部にて消費財・リテールセクターを担当し、企業の財務戦略アドバイザー業務に携わる。2008年にユーザベースを設立し、2013年よりASEAN地域の事業も統括。