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誰もやらない価値ある事業でIT業界の構造変革に挑む

ビジネスの本質を突く、プロセステクノロジーを定義する起業家

Mar, 11, 2016

株式会社SHIFT(シフト)

丹下 大 氏

理系の〝頭の使い方〟がビジネスになった瞬間

私は工学系の大学院を修了していますが、研究室時代に徹底して学んだのは、専門的な知識だけではありません。加えて、どのような前提であっても一度は疑い、自分なりの答えを導き出す知的スタンス、そして他人がやらない、自分がトップになれる本質的なイシューに泥臭く取り組む胆力。この2点でした。「専門性」よりは「普遍性」に力点を置いた頭の使い方を磨いた期間だったとも言えます。

実は、この時期の経験こそが、前職のコンサルティングファームでの新規事業立ち上げ、そしてSHIFT創業に影響しています。当時の花形コンサルタントは、顧客課題の解決にあたり3次元CADやCATIAと呼ばれるアプリケーションを用いた独自技術を価値創出の源としていました。もちろん、その道を知り尽くしたクライアントですら手を焼く課題に解を与える価値は絶大でしたが、本質的には、ツール自体の希少性や自社―クライアント間での情報非対称性があるからこそ成り立ったビジネスであり、時間とともに陳腐化が進みかねない状態であったことは事実です。その上、特定の手法が解決できる領域は一部分に留まるわけですから、そのインパクトは非常に限られることも自明でした。

そこで、プロセス全体に関わるコンサルティングにこそ可能性があると判断し、基礎調査として可能な限り多くのプロジェクトについて、作業プロセスをすべて洗い出し記録するところから始めました。資材の加工や組み立てといった、一つの製品を完成させるための各ステップをそれぞれバーとして表現し、時系列順に並べるのです。

そうして発見したのは、「タスク粒度」の概念、つまりそれ以上切り分けられない仕事の単位です。本来なら独立し並行してこなせるタスクであっても、ひと塊のものとして与えられることもしばしばあり、いわば先に述べたバーが必要以上に長くなった状態が至るところで見受けられました。これは、全体最適化の失敗を意味します。だからこそ、まずプロセスを定義し、タスクの標準化を進めることで極力無駄を省き、従来は2ヶ月かかった仕事を2日に短縮するような、圧倒的に高い生産性を再現できる仕組みを創りました。当初は誰も注目せず、濡れ雑巾とすら揶揄される地味な仕事でしたが、結果的には大きなブレイクスルーにつながっています。

この一連の発見をアルゴリズムに落とし込みプログラム化した「プロセステクノロジー」は特許にもなり、3名で立ち上げた新規コンサルティング事業は5年後には140名体制、全社の事業構造を逆転させる規模へと育ちました。ここまでが私の前職におけるトラックレコードです。

日本人固有の強みを世界標準に押しあげたい

こうした思考フレームワークは、製造業に限らず普遍的に適用できます。起業し最終的に選択したのはIT分野、中でも国内だけで4兆円という膨大な市場規模を誇りながら、未だ1%程度しか開拓されていないブルーオーシャン、「ソフトウェア品質保証」の領域です。優秀なエンジニアの確保が企業競争力を大きく左右することは周知の通りですが、実際には、いざ獲得したエンジニアが使える時間の実に4割は、いわば単純作業であるソフトウェアテストに割かれているのが現状。熟知したプロセステクノロジーを応用すれば、この社会課題も解消できると考えました。現在のソフトウェア開発領域の構造を変革し、判断と作業に分ける仕組み化で、より高品質なプロダクトを世に送り出すための役割を担っているのがSHIFTです。

現在はエンタープライズ領域をメインに、エンターテインメント領域をも含めた幅広い業界のコンサルティング事業をコアとする一方、日々蓄積される不具合の知見を『ヒンシツプラットフォーム』として再展開する新規事業も動き始めています。これは同時に、SHIFTの方法論・ノウハウを業界全体に周知し、早々にデファクト・スタンダードとするための布石でもあります。

昨今では、欧米発のサービスやプロダクトを後追いするかのような事業企画も散見されます。しかし翻ってみれば、生真面目な気質をもつ日本人が固有の強みとしてきたのは、かつて、ものづくりで世界を圧倒した「Made in Japan」ブランド、つまり、より良いものへの創意工夫と品質の高さにこそあるのではないでしょうか。であればこそ、SHIFTはその強みを最大限に発揮できる環境を創り、再び産業化していく存在でありたいと考えます。2014年に上場を果たし、いま大きな挑戦として掲げるのは「すべてのソフトウェアにMade in Japanの品質を」与えること。今後、国内はもとよりアジアを足掛かりとしたグローバル展開も加速させていきます。

本質を見抜き世の中をより良くしていく

何よりもメンバーの多様性を大事にしています。テスト分野だからこそ輝ける人材、誰かのサポートに喜びを感じる人材、市場に魅力を感じ事業づくりに邁進する人材、いずれも重要です。実際、抜擢人事により新卒1年目で大手IT企業の専属部署を立ち上げた者や、同じく新卒2年目で子会社社長に就いた者、テストエンジニアとしての高みを目指す者もいます。共通するのは、本質的に重要なポイントを言葉にでき、世の中をより良く、また人々の日々の生活を豊かにすることに貢献したいと真摯に考えていることですね。自己中心的で損得勘定するようなキャリア観を捨て、フラットに眺められる目を持つ方々こそ、伸びていくと信じています。

株式会社SHIFT(シフト)

Interviewee

丹下 大 氏

たんげ・まさる

株式会社SHIFT(シフト)

代表取締役社長

1974年、広島県生まれ。1997年、同志社大学工学部機械工学科卒業。2000年、京都大学大学院工学研究科機械物理工学専攻修了。たった3名のコンサルティング部門を、5年で50億円、140人のコンサルティング部隊に仕立て上げる。