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「見えない敵と戦っていませんか?」採用担当と語る、仕事とは

Goodfind College編集部が、採用担当と仕事について語らうシリーズ第1弾。今回は日本たばこ産業(以下、JT)社で新たに採用担当になったお二人をお招きしました。就職活動の現場では聞きづらいホンネを聞く中で、皆さんが社会に出る上で考えたいヒントを一緒に探しましょう。今回のキーフレーズは「見えない敵と戦っていないかい?」です。

Jun, 24, 2020

日本たばこ産業株式会社(JT)

川島 哲也 氏 ・ 佐藤 崚 氏

こだわりの強い人にあふれた、懐の深い会社

―― いきなりですが、まずJTはどんな会社だと思いますか?

佐藤 自分がJTに入社を決めた最後の決め手が、出会うすべての人がクレイジーだったからなんです(笑)。今でも一番印象的なのが、学内開催の説明会に来た人が40分の持ち時間、ずっとポケモンGOの話をしてたんですよ。JTの話とは全く関係がなくて、クレイジーだなと思ったんです。だけど、それって自分が心の底から面白い、と入れ込んでいるモノがあって、その人なりのこだわりになっている、ということだと思うんですよね。そのこだわりを惜しげなく公の場で語れるような人が多いなら、懐の深い会社かなと。

川島 クレイジーかはさておいて(笑)、確かに何かにこだわっている人が多いと思います。それも「そこまでこだわるの?」みたいなところまで。それが良い方向にいくこともあれば、もっと時間を有効に使おうよ、みたいなこともあります。これまで多様な部署を経験していますが、どこでもそれは共通していました。みんな楽しみつつ、こだわりつつ、やっていますね。

――具体的に、仕事をする上で感じたこだわり、はありますか?

川島 例えば、商品企画部のときの話で、商品を作る際にコンセプトやお客様に届けたいメッセージを文字に起こすのですが、その1文字1文字へのこだわりが凄くて「ほのかに香る」なのか「ほんのり香る」なのか、なにが一番お客さんに伝わるのか、伝えたいのか、をとにかく考えぬきます。傍から見ると「そこまでやる?」と思うこともあったのですが、そのこだわりが研ぎ澄まされていって、集合されているから、人の心を動かす商品が生まれてくるのだと思います。

商品のデザインについても同様です。パターンを何種類も何種類も作ってそこから絞るのですが、色一つにしてもこだわりがすごいんです。どちらの色でもそんなに変わらなく見えるのに、こだわりがあるから「これじゃ嫌だ」「こっちがいい!」がスパッと出てくるんですよね。


JT社の来客用のお水。「そういえばなかったので、採用チームでつくっちゃいました」

佐藤 僕がパッと思いつくのは開発現場のエンジニアですね。機器の電子制御を一つつくるにしても、同じ機能を実現するためのコードが複数あるのですが、美しいコードはどれか、と謎の美意識を持ってやっていたり(笑)。製造においても、生産性・品質向上という大目的をひたすら追求していました。改善の為に、AIとかドローンとか、新しい技術の活用を模索したり(笑)。こだわりとかクレイジーな部分が、とにかく節々に出ていると思います。

――どんな規模やフェーズでも、そこまでやりきれる会社ってなかなか聞かないですね。どうしてここまでできるんでしょうか?

川島 素のままの人が多いのだと思います。JTの社員だからこうしていなくちゃ! って感じで自分を抑えている人があんまりいなくって。自分のあり方を矯正されないんですよね。もちろん最低限社会人として守るべきところはあるのですけど、自分を変えろっていうことは、入社16年になりますが一度もないですね。

社外の人に「JTって雰囲気いいですよね」って言ってもらうことが多いのですが、それも皆が素のままだからなのかなと思います。

佐藤 そういう決まりだからそうしているのではなく、そもそも素のままでいられる人が集まっているのだと思います。あくまで自然にそういう雰囲気が作られているのかな、と。

川島 まあ周りもそうだし、自分もそれでいいかな、みたいな感じはありますけどね(笑)。でもそれを同じ様にやれ、って言われているわけではないので、大切なことは自分がどう捉えるか。必要だと思うならやればいいし、そうじゃないなら自分なりの別のベクトルでこだわっていけばいいですから。

――みんなが素のままでいて、それぞれこだわりがあると、その違いによる衝突も起きそうです。

佐藤 本当にぶつかったときは、じゃあやってみな、と言ってくれる上司が多いですね。

川島 上司は客観的に見ていろいろアドバイスをくれますが。最後は想いを熱く語るやつが強い。最終的には若手にやらせるチャンスをもらえることが多かったです。

佐藤 それをやって効果はあるのか、意味があるのか、もちろん上司は気にすると思います。「あまり得策じゃないな」となったとしても、あまりに自分がベラベラとしつこいから、まあやってみろや、とやらせてもらったことは、過去何回かありましたね。(笑)。

どの仕事をするかより、どうこだわってやるか

――改めて、これまでのキャリアを教えていただけますか? お二人とも新卒でご入社されていますね。

川島 私は今年で入社16年目で、とにかく色々な部署を転々としてきました。まずは郡山の支店で営業からスタート。その後、支社の目標や予算管理、CRM、ブランド総括などなど、多種多様でした。その後やりたいと思っていた商品の企画を担当できる! と思えば、組織風土改革とか部門人事・研修担当とまた転々……。そして3月から現職の採用担当になっています。

――とてつもない変遷ですね……それぞれのご異動は、川島さんの自身のご希望だったんですか?

川島 商品の企画に携わりたいっていうのがあって、そこまでは希望通りだったかなと。そのあとは、自分でもわかりませんね(笑)。

――これだけ数々の異動があると、見方によっては会社に良いように使われている、とも考えてしまいそうです。

川島 ぶっちゃけ人のアサインって、完璧に思い通りにいくものではないじゃないですか。もちろん思い通りにいくこともあるかもしれませんが。思い通りにいかないのだとしたら、どんな役割だろうとそこで何をするかを自分なりに考え、やれることをやるだけだと思っています。

――なるほど。どんな仕事でも、どうやるかのほうが大事だと。一方で佐藤さんはここまでのキャリアはいかがでしたか?

佐藤 自分も新卒で入社して、この4月で4年目になります。最初は京都にあるたばこ製造工場でスタートしました。最初は工場内の総務チームにいて、工場の運営に関わるなんでも屋さんみたいな仕事でした。人事から安全・服務規定関係とか、工場運営に関わることを手広く経験しました。

その中で実は採用も経験していて、高専生・地場の高卒採用をやりました。大学卒採用のリクルーターもそのときからやっていましたね。その後、3年目の最後の1月に採用チームに着任しました。

――佐藤さんは希望してその配属になられたんですか?

佐藤 最初の配属についても、2つ目の配属も、自分の希望というわけではないです(笑)。入社当時から、具体的にやりたい仕事は思いつかなかったので、なんでもいいや、と正直思っていました。むしろ、自分より仕事のことをよく分かっている上の方が、適材適所でおいてくれるだろうと(笑)。でも、どんな仕事にせよ、なんでもやってやるぞ、という気持ちでしたね。

――川島さんと同じく、どんな仕事でもそこでやりきろうというご意思だったんですね。

佐藤 そうですね。もともとは就活のときから、具体的な仕事内容をもとに会社選びをしていなくて。入社してからもどの仕事がいいかはあまり考えておらず、まずは目の前の仕事をがんばります、と言う気持ちでした。

――先程まで「こだわり」のお話でしたが、いまは一方で組織の決定に対する「柔軟性」が感じられます。そこのバランスって両立しうるものなんですね。

川島 仮に自分の希望してない仕事に就いたとしても、そこで切り替えさえ上手く出来れば良いです。その仕事において何をこだわるかを考え、頑張っていけば良いんだと思うんですよね。

佐藤 当たり前ですが、思い通りになるもの・ならないものと両方あります。思い通りになるものをどうするか、に力を注いだらいいですよね。

――どの職種につきたいか、具体的なイメージが持てないと考える学生が多いと思います。それ自体を心配しすぎる必要はなくて、その中で自分なりにどうこだわってやるか、が大切なのだと感じました。

採用って言葉、おかしくない?

――お二人はこの2020年から採用担当という仕事に就かれました。これまでの仕事と違いはあると思いますか?

佐藤 自分の意識として、差はないですね。先程までの話と同じですが、採用でも他の仕事でも、自分がその仕事で何を成したいか、今の状況において何ができるか、を考えること。理想を描きそこに向けて頑張るぞ、という仕事のスタンスは変わらないなと思います。

川島 佐藤に同じく向き合うスタンスはこれまでと変わらないですね。お客様と対話し相互理解をしていくセールスの仕事と、それを戦略立てて社内外に発信していくマーケティングの仕事、2つの経験を活かしていけると思っています。

――採用だからといって、他の仕事と考え方は変わらないんですね。一方で、採用においてならではの「こだわり」はありますか?

佐藤 採用チーム全体として、大事にしているのは「リクルーティングはしない」ということです。

具体的には「君がこう考えているなら、うちの会社は君に合っていると思うよ」というように、その人が合っているかどうかをこちらで定義しない。「うちの会社はこうだ」と情報は最大限伝えることはしますが、その情報をどう感じて、合っているかの判断するのはあくまでその方次第だと想いますので。

ちなみに、これって武士道に通ずるのですが……。

――ぶ、武士道? 詳しく教えてもらってもいいですか?(笑)

佐藤 そもそも武士道とは、人の振る舞い方、人はどうあるべきかを示した考え方なんですね。

――なるほど。どういったところが通ずるのでしょうか?

私が学生時代研究していた「葉隠」では、「行為の純粋性を突き詰めよ」と言っています。行為するときには、何か「裏の理由とか目的」を持って行為すべきではありません。

例えば、僕が説明会とかでJTの話をするときは、僕が感じているJTの魅力を「ただ話したいから」であって、学生に「JTって魅力的だなあ」と思って欲しくて話しているわけではないんですよね。当たり前ですが、人間一人ひとり、考えは違っていて、同じ情報でもその受け止め方は異なります。「JTはたばこの会社」という情報だけでも、「面白そうな会社」と思うか「堅そうな会社」と思うか、様々ですよね。僕の話をどう受け止めるかは学生次第なので、僕ができることは、「JTの魅力をちゃんと考えて、伝わるように話すこと」だけです。

もうこれは葉隠採用と言っても差し支えないんじゃないかと(笑)。

川島 今日一番饒舌だね(笑)。葉隠採用かどうかは分からないけど、確かに採用チームとして大事にしていることと共通点はありそうだね。

――ありがとうございます。いまのお話のような、個人が大切にする思想が、JTという組織が大切にしているものと重ねられ、さらに高まっていってますよね。

川島 昔から採用では対話を重視してきたようですが、自分としても「対話」をしたいと思っています。学生だから、と特別な関係として考えるのではなく、あくまで人として対等に対話をしたい。お話する中で、自分たちのことを良く言ってしまうことはあるかも知れませんが、そこに決して嘘はないですし、その情報だけで判断してほしいとも思いません。

なによりも結局判断するのはその方ですし、嘘なく最大限の情報を提供したいと思います。

――採用の仕事をされる中で、課題と感じることはありますか?

佐藤 まず個人的に「採用」っていう言葉自体にまず違和感があります。「採」って「用」いると書くんですよね。字を読んでクソだなと(笑)。「採用」ではなくて「集合!」的なニュアンスで活動をしたいですね。「採る」側、「採られる」側、ではなくて、会社としては「僕らはこう考えているけど、一緒になんか面白そうなことできる人集合!」で、学生側も「私はこう考えているけど、一緒になんか面白そうなことできる会社集合!」みたいな。同じ方向を向いている者同士がたまたま出会って、一緒に働けるといいですよね。

――たしかに一方通行と言うか、力関係があるように見えてしまうのは否めないですよね。

川島 確かに、そういった関係を示す言葉って結構ありますよね。企業が一方的に判断をするのではなく、お互いがお互いを選ぶ機会であるはずなのに、選考して、「合格です、おめでとうございます」みたいなのは、おかしいですよね。

佐藤 この採用における変な関係性は、江戸幕府のやり口みたいだなと思っていて。

徳川は父であり、臣下は子である。子が親に従うのは当たり前だという儒教の教えで、権威を築いていたんですよね。そういう理屈っぽい関係性は、一人ひとりの感情と必ずしも一致はしませんよね。主君から土地を貰っているから仕えてはいるけど、必ずしも主君が好きなわけではない、っていう風に。

一方で葉隠によると、戦国時代では、人は理屈っぽい概念で動くのではない、もっと情で動くものである、と考えられていました。純粋に、自分は主君が好きだから尽くすのである、って考えですね。

佐藤 葉隠では後者を武士としての「あるべき姿」としていました。「情」に余計なロジックが入ると、主君のための良い働きができないので、ロジックなど捨ててしまえ、主従関係はシンプルにしろ、と。事実、深い情の繋がりを持つ佐賀鍋島藩は、とんでもない武力を誇っていました。

これも葉隠採用の考え方として用いることができます(笑)。

採用も同じことで、会社と学生の間に変な力関係があると、素直なコミュニケーションが出来なくなります。人と人との素直な関係性をもとに、互いの価値観や想いを純粋に確かめ合えれば、採用も就活ももっと上手くいくのにな、と思います。

見えない敵と戦っていませんか?

――改めてJTの面接では、どんなところを重視されていますか?

佐藤 特定の要素を絶対的な基準として大事にする、っていうのはないです。それよりもまず実際に相手と話してみることで、どういう人間かお互いを理解するというのが大切なことだと思っています。

川島 そうですね、先程お話しした「対話」の話になるのですが、その人が歩んできた中での節目節目において、何を考えてどんな選択をしたか、ということを聞くことにしています。そこからその人の価値観など、考え方のベースが見えてくるので。

佐藤 JTに入るかどうかに関係なく、その価値観はぜひ聞いてみたいと思いますね。面接という場は、「対話」を通してお互いの価値観を理解しあう場です。

その結果、ともに進むのが良さそうだね、と思えれば一緒に働くことになればいいし、仮に違ったとしても、それぞれの道で頑張ることをお互い応援できればいいと思います。

――一方で就活をしている学生の中では、まだ自分の価値観が見えず悩んでいる方も多数いる気がします。

川島 どんな仕事がしたい! というように具体的なところまで落ちていなくてもいいと思います。「何がしたい」というのは生きていく中でいくらでも変わっていきますので。

それよりももっと根本にある、自分が大切にしたいことや、このためなら頑張れる、そういった価値観はきっと持っているはずです。当たり前なことなんですが、この「自分のこだわり」を把握しておけば、仕事に限らず何をするにも判断軸になるでしょうし、迷ったときに立ち戻れる場所になるので、やっぱりこれが大切なのでは、と思います。

佐藤 見つかっていないことに焦る必要はないし、見つかったから偉いわけではないです。正解はないし、生きていく中でゆっくり見つけていけば良いんじゃないですかね。

――確かに、そういった価値観を持たなくてはならない、と自分を追い込んでしまいがちですよね。最後に学生にメッセージを頂けますか?

佐藤 なんでもいいんだよ、って言いたいですね(笑)。

価値観に上下優劣は無いと思っています。極端な例ですが、「世界平和」のために人生をささげたい!」という価値観も、「毎日ごろごろ寝たい!」という価値観も、等しく尊いです。「犬が好き」「猫が好き」みたいなもので、どちらが立派とかはありません。就活の文脈でも、「正解」な価値観はありません。惑わされず、自分に対して素直にあればいいのでは、と思います。

川島 言い換えれば、自分らしさを大事にするってことかなと思います。見えない敵のような、よくわからない何かと比較しちゃうから、人と違うことに対して自分は出来ていない、劣っていると感じてしまいます。人それぞれの価値観や幸せを測るものさしは違うのに、他人の目線や尺度を気にしてしまうこともあるかもしれません。

けれど、そうした場面で、優劣や他人を気にするのではなく、「自分はなんでそう思うのか、なんでそう選択するのか」ということと向き合うことができれば、人との違いを自分らしさに変換できるチャンスに変わるんじゃないかと思います。そして、そうやって見つけた自分らしさは、迷ったり悩んだりしたときに立ち戻れる場所にすることができます。

川島 結局のところ、就活でもこの先の人生でも自分の進む道は自分でしか決められないのだから、自分の選択に胸を張れるように、後悔しないためにも、自分らしさを大事にして考え、行動していくのが大切なんだと思います。変にカッコつけたり飾ったりせずに、素の自分をぶつけてみて、それを受け止められる会社を探してやるんだ、というくらいの気持ちになれると、漠然とした不安から解放されて、充実した就活やその後の社会人生活に繋がるんじゃないかなと思います。自分らしさをぶつけてくれる皆さんと対話ができるのを楽しみにしています。

※本記事は、関連メディア『Goodfind College』に2022年5月22日公開した記事を転載・一部加筆したものです。

日本たばこ産業株式会社(JT)

Interviewee

川島 哲也 氏

かわしま・てつや

日本たばこ産業株式会社(JT)

たばこ事業本部 事業企画室 採用研修チーム 次長

2004年に日本たばこ産業株式会社へ入社。セールスグループにてたばこ販売店への個店営業に携わる。その後、プロモーション企画、ブランド戦略、事業企画、部門の採用・成長支援等に携わり、2020年3月より採用研修を担当。

Interviewee

佐藤 崚 氏

さとう・りょう

日本たばこ産業株式会社(JT)

たばこ事業本部 事業企画室 採用研修チーム エース?

2017年に日本たばこ産業株式会社へ入社。お笑いをこよなく愛する。自らM1に出場し、初出場ながら2回戦に進出する一方、武士道精神を胸に日々精進を欠かさない。あとは採用・研修の業務も担当している。