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社会や産業全体の未来を設計する。シンクタンクの使命を担う経営コンサルタント集団

日本のみならずアジア、グローバルで信頼される社会基盤を担うグループの一角として、三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社が果たすべき社会的使命は大きい。そんなシンクタンク系ファームである同社の経営コンサルタントに求められる視点や考え方について、コンサルティング事業本部プリンシパルの名藤氏とシニアマネージャーの木下氏に話を伺った。

Mar, 04, 2020

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

名藤 大樹 氏 ・ 木下 祐輔 氏

社会全体の視点で物事を見通す
シンクタンク系ファームならではの使命

名藤 まずお話ししたいのは、当社を象徴する企業理念です。前身の会社から数えると30年以上の歴史がありますが、設立当初から「ヒューマニズムに立脚し、ロマンティシズムとリアリズムの両立を目指す」という理念を掲げています。実際にこの理念に共感して集まってきているコンサルタントや研究員は多いです。

この理念が2020年代の今、改めて大事になってきている考え方だと感じています。格差社会や気候変動など、今日の世界には様々なグローバルな課題が存在し、日本も対処を迫られています。「どのようにテクノロジーを活用するのか」「問題にどう対処するのか」という時に、ヒューマニズムに立脚するという目線は欠かせません。ある意味で日本的な哲学かもしれませんが「とにかく儲かればいい」ということではなく、社会のためにどうあるべきかを考えることが私たちのベースにあります。「ヒューマニズムに立脚し、ロマンティシズムとリアリズムの両立を目指す」という理念は当社一人ひとりの基本スタンスになっています。

木下 私もこの理念に共感して入社した一人です。私たちは未来志向で、どういう社会を創っていくのかというところに力点を置いています。理念にあるロマンティシズムは、つまりありたい社会とは何なのかを追求していくということです。シンクタンクのミッションはそうした社会の実現に向けて、現実に則した形で企業や行政を引っ張っていくということですから、企業理念と私たちの取り組みはとてもマッチしていると感じています。

名藤 当社は何か一つのプロダクトで世の中を変えていくタイプの会社ではなく、様々な専門家や専門分野を抱えているというのが特徴です。三菱UFJフィナンシャルグループ(以下、MUFG)ということもあり、コンサルティング事業本部はファームの中でも、特に日本企業の経営者に寄り添い、長期的な信頼関係のもとで仕事をするという特徴が強いと思います。また、日本を始めアジア、グローバルで信頼される社会基盤を担うグループとして見られていますので、果たすべき社会的使命も大きいです。

木下 クライアントだけでなく、そのクライアントを取り巻く環境も含めて、社会全体がより良い世界になっていくことを考えるのが、まさにシンクタンクならではの視座です。その中で会社としてどう成長していけば良いのかという視点を持ちながら、官公庁とのプロジェクトや民間企業のコンサルティング案件を手がけたり、双方の密な連携を図ることができたりする立ち位置はコンサルタントとして非常に魅力的です。

経営コンサルタントとして
社会と企業全体の理解をベースに、
先端技術を活用する

名藤 経営コンサルタントとしては、まず社会全体を捉え、次に企業全体を理解するというアプローチが大事です。特に最初の1年間は、クライアントの財務諸表を全社レベル、事業レベルで理解できるかというところから、企業全体を数字で分析できる目線を持って欲しいと考えています。いまデジタルやテクノロジーを用いたデジタルトランスフォーメーションの領域は花盛りですが、経営コンサルタントとして、経営全体の理解がなければ、個別のテーマを実行するための単なる労働力になってしまいかねません。

木下 様々な専門性を有する人材が多くいることがシンクタンクの強みだと言われますが、それはもちろんその通りです。私の考える一番の特徴は「社会全体の視点で物事を見通す」という視座の置き方だと思っています。私たちは市場や環境の現状認識からではなく未来予測や将来見通しに基づき、社会全体がこれからどのように進んでいくべきかということをしっかりと捉えます。

その上で、どういう世界を作っていきたいのかということをクライアントと一緒にデザインし、プロジェクトとしてその実現までを支援していきます。変化のスピードが速く先が見えない時代には、より良い社会をどう創っていくのかを、クライアントと一緒に考えながら進めていくコンサルティングの需要が増しており、まさにシンクタンク系ファームならではの強みが活きる時代だと考えています。

そうして社会全体や企業全体を理解し、未来を創っていくという視点に立った時には、 AIやロボット、ブロックチェーンといった様々な技術が、理想に近づけるための原動力となるので、技術にどういう役割があり、どんな価値があるのかという理解を深めることに力を入れています。

例えば、社内の理系出身者中心に論文や専門書を読んで基礎的な知識をつけたり、実際の事例や応用例が重要になってくるので、国内の展示会に足を運んだり、例年ラスベガスで開かれる家電見本市(CES)のような海外で行われる最先端の技術が展示される場所を訪れたりします。技術そのものを詳しく理解するというよりも、世界でどういった技術が誕生し、それがどのように顧客を喜ばせるために使われているのか。その技術をベースにどのように会社の価値を発信しているのかを理解することに大きな意義があります。技術が顧客の役に立ち、会社がトランスフォーメーションされていく一連の流れから、創りたい未来や社会のイメージが湧き上がってくるので、それを私たちの仕事に還元させています。

官公庁と連携を図り、
産業を跨いで取り組む
豊富なプロジェクト

木下 一例をあげます。ロボット産業は日本製造業の強みが活きる分野であり、経済産業省も産業としての発展に相当な力を入れています。ここ数年で当社への相談も増えている状況で、民間企業からは「作ったロボットを販売して、いかに収益をあげていくか」というテーマを多く頂きます。また経済産業省のロボット案件では「いかにロボットを社会にインストールしていくか」というテーマを扱っています。どちらも目指すところは「どうしたらロボットを活用してありたい社会を創れるのか」ということですから、そこに向けた道筋作りをこの5年位で取り組んでいます。

国内製造業の技術力は高いので、ロボット自体は作れてしまうのですが、それをどう社会実装していくのかという課題が残ります。ロボットは非常に高価なので、気軽に導入できるものではありません。人手不足の物流現場にロボットを導入すれば生産性が上がりますと言われても、実際にどこまで効果が出るのか、費用対効果が見合うのかという点で企業は判断に迷うわけです。私たちはそうした課題を解消するために、いかにロボットの社会実装や現場実装が進められるかという観点で、様々なモデルを構築し検討を重ねています。

例えばロボットはハードだけなので、それを動かすためのシステムインテグレーションが必要です。しかし、現場独自の様々な課題がある中でシステムを搭載したら終わりということも多く、ロボット活用のネックになってしまうこともあります。そのような問題を解消すべく、私たちはロボットを用いたロボットならではの価値提供の仕組みまでをデザインし、新しい業務プロセスの設計や導入を支援しています。

また2019年には経済産業省とNEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)のプロジェクトで、IoTを活用したサプライチェーンスマート化の実証実験を行いました。コンビニで売られている食品や日用品にRFIDのタグをつけて、製造、物流、小売、消費者という一連のサプライチェーン全体の情報を取得するというもので、電子タグを読み取ると、いつどこでどのように製造された商品かをシステムに読み込むことができる仕組みです。製造、物流、小売と様々な領域のプレイヤーにメリットがあり、MUFGの中の色々な属性のお客様に幅広く価値訴求できる座組みだと考えて取り組んでいます。

サプライチェーンにおいて何がどこにいくつあるのかというのを、セントラルデータベースで見ることができる状態になっていると、需要予測と生産計画、在庫計画が作れるのでサプライチェーンが効率化される可能性があるのが期待される効果の一つです。また効率化や省力化以外に、付加価値の創出にも寄与できると考えています。例えば顧客がどこでどう消費したのかというような、これまでメーカーが全く把握していなかったデータまで集めることができれば、それをマーケティングや商品開発にも活かすことができます。

コンサルタントとしてもメーカーや製造業向けの戦略策定に活用し、付加価値を上げるところまでをセットで考えることができます。また小売でも販売して終わりではなく、お客様と継続的な関係性を構築することができるため、このスマートサプライチェーンというのは新しいビジネスモデルへの進化の手段としても非常に有効であると考えています。

社会への価値貢献と利潤追求の
バランスを取りながら、
新たなモデルを生み出す

名藤 先端技術領域以外にも、当社の人事コンサルティング部門では、政府や厚生労働省が推奨する1億総活躍社会の実現に向けて、企業の定年延長の制度改革プロジェクトに携わっています。また最近はESG(環境/Environment、社会/Social、ガバナンス/Governance)がブームになっていますが、世界的にも個々の企業が環境や社会、ガバナンスに配慮したESG経営に取り組む流れがあります。当社もこの実現に向け多くの企業を支援しています。他にも外務省と連携し、企業活動における人権問題のプロジェクトを手掛けるなど、日本が抱えている課題を企業レベルで解決し、社会に実装していく案件を多く扱っています。

このように当社では官公庁や企業の様々なプロジェクトを手掛けていますが、コンサルティングにおいて社会への価値貢献と利潤追求を両立させていくことは非常に難しく、バランスを取るには相当な教養が必要になります。そのバランスを上手く取れるようになるには、10年以上かかるのではないでしょうか。そこは焦らずに時間をかけて、社内の経験豊かな人材から学んだり、自分で経験したりしながら、いかにそのバランスを取るのかを考えていってもらいたいです。

木下 最近は未来予測ブームなので「十年後、二十年後の社会はこうなる」という様々な予測がなされていますが、正直それを実現するにはかなり高いハードルがあると考えています。ハードルの一つとして、様々なテクノロジーを用いるために資金が必要になるので、誰がそれを負担するのかという議論になることもあります。当然、私たちは企業がマネタイズできるモデルを考えるわけですが、企業が顧客から一方的に搾取するような構造ではなく、皆が少しずつ利益やメリットを享受できる社会をデザインするというのが、より良い社会づくりにおける一番の肝なのかもしれません。そこを解決することも、私たちの価値を発揮できるところです。また私たちだけで支援できる企業の数には限界があるので、一つの案件から世界標準となるようなモデルを生み出し、それが他の企業にも波及して社会全体が良くなっていけば、当社としても喜ばしい状況だと思います。

自己の探求と鍛錬の繰り返しが、
経営コンサルタントとしての価値を創る

名藤 学生の皆さんとお会いすると、人を助けたいという動機でコンサルティングファームを志望される方が多い印象です。もちろんその想いは大切にしてもらいたいですが、経営コンサルタントになるのであればより踏み込んだ動機や思考が求められます。社会は非常に複雑です。そうした中で「単に人を助けたい」という事を超えて、社会や企業経営について考え抜くだけの体力や知的好奇心があるのかというのは、学生の皆さんに一度考えてもらいたいですね。

そもそもコンサルティングという仕事自体が幅広く、決まった型があるわけではありません。ましてや3年程度コンサルティングの仕事に携わっただけで全てを理解しようとするには無理があります。最初は良くわからない部分も多く、特に20代のうちはたくさん悩むこともあるでしょうが、悩み抜いた分だけ骨のある一流のコンサルタントへと成長していけるのだと思います。

木下 私は入社当時、自分がこういうことをしたいという想いをあまり持っていませんでした。その分早くコンサルタントとしての専門性を見出さなければ、という自己暗示みたいなものにかかっていましたね。20代の頃はそれで結構苦しんだのですが、結局今やっていることは学生時代にやりたかった事とさほど変わっていない気がします。

もともと理論物理が好きだったので、宇宙を支配する四つの力みたいなものと同じように、社会を支配する原理みたいなものを見つけ出したいと考えていました。コンサルティングには物事を俯瞰的に捉えてそれを法則化していくという要素が含まれていますし、20代で悩み抜いて、それが自分らしさであるというところまで修練してきた感じです。

コンサルティング会社で言われる専門性はクライアントの業種や属性、もしくは戦略や人事、ITというようなテーマで分けられるのが一般的です。ただ、私の場合はその軸で専門性を語るのは難しいと思ったので、今は“未来を描き・創っていく”という第3の軸で専門性を築いています。

最近はコンサルタントとして、ファクト&ロジックを当たり前に求められる時代です。その上で、「あなた個人としての意見はどうですか?」という問いをクライアントから投げかけられることも多く、直感力や人間力みたいな観点からアドバイスを期待されている節があります。その部分は決して教育や研修だけで養うことができないので、受け身で教えてもらおうというスタンスの人には厳しい世界です。業界や会社を選ぶという感覚ではなく、自分はどういう人間なのか、何に興味関心があるのかを軸に、自分が一番幸せになるためのありたい姿を追求して欲しいと思います。

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

Interviewee

名藤 大樹 氏

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部
プリンシパル

一橋大学商学部卒業後、1998年入社。以降、組織改革・人事制度改革(評価・報酬等)・人材育成の領域を中心にコンサルティング経験を重ね、現在は同社コンサルタントの採用・育成・管理全般を担当。グロービス経営大学院大学講師として、ビジネスパーソンの人材育成にも携わっている。2016年には、一年間、海外で専業主夫として過ごした経験を持つ。05年3月一橋大学大学院商学研究科経営学修士(MBA)コース修了。 (その他取得資格) MIT Sloan Executive Certificate(Management & Leadership) 慶應義塾大学ビジネススクール(KBS) 公認ケースメソッドインストラクター

Interviewee

木下 祐輔 氏

三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社

コンサルティング事業本部
戦略第1ビジネスユニット
イノベーション&インキュベーション室
シニアマネージャー

東京工業大学大学院理工学研究科修了後、2007年入社。以降、大企業向けの成長戦略・新規事業戦略・BDD含むM&A支援といった戦略コンサルティングを専門に、多数の案件に従事。「未来の理想的な社会はどんな姿か、そのためにクライアント企業はどんな戦略を描き取り組むべきかという視点」を胸に昨今では、2040年を見据えた技術動向・生活者動向を押さえた未来洞察やIoT・ロボティクス・AIを活用したビジョン・成長戦略策定、新規事業戦略策定、中期経営計画策定、事業化支援などの案件に従事。 (その他取得資格) 気象予報士