• トップページ
  • 平成に取り残されるコンサルタント、令和に活躍するコンサルタント

平成に取り残されるコンサルタント、令和に活躍するコンサルタント

東京オフィスのパートナー・消費財・流通プラクティスのリーダーを務める福田氏。 クールジャパンなど経産省のプロジェクトをリードする一方、 業界の革新を促すスタートアップでは戦略アドバイザーを務めるなど、 その活動はいちコンサルタントでは収まりきらず、常に挑戦にあふれている。 そんな福田氏が、時代の変わり目だからこそ考えるべきコンサルタントの生き方を語る。

Dec, 23, 2019

株式会社ローランド・ベルガー

福田 稔 氏

「VUCA」時代におけるディスラプター企業の存在

ローランド・ベルガーはドイツで設立されたコンサルティングファームで、50年余りの歴史があります。日本唯一の欧州出身・戦略コンサルティングファームで、世界35カ国に52のオフィスを構え、コンサルタントは2,400名程います。ローランド・ベルガーは、製造業や自動車業界に強いというイメージがあるかも知れませんが、実に様々な業界のクライアントを支援しています。

コンサルタントの仕事についてお話しする前に、現在我々が支援しているクライアントが直面している事業環境についてお話ししたいと思います。近年グローバルでは、私たちが生きる現代は未来が読めず、答えのない「VUCA」の時代と呼ばれています。「Volatility(不安定)」、「Uncertainty(不確実)」、「Complexity(複雑)」、「Ambiguity(曖昧模糊)」の頭文字を取って「VUCA」。非常に難しい、答えのない、曖昧模糊とした先の見えない時代に、クライアントの皆さんはビジネスをしているのです。最近はデジタル化に伴う変化が非常に激しく、中国とアメリカの貿易戦争など、予期せぬ出来事も数多く起こります。経営者の方からすれば、先を読んだ経営は難しく、乱気流の中を経営しているような感覚でしょう。

こうした時代には、どのような経営スタイルが適しているのでしょうか? それは「未来を読むのではなく、自分たちで“ありたい未来”を創り、そこへ向かう」というビジョンドリブンの経営スタイルです。そうした、周囲を巻き込み、競合を追随させるような、ビジョンドリブンの経営によって躍進を遂げているのが、GAFA(Google、Amazon、Facebook、Appleの総称)です。彼らのような既存のビジネスモデルや業界の常識を別の角度から崩していくような人たちを、「ディスラプター」と呼びます。未来の自分たちのありたい姿を鮮明に描き、そのために業界全体を変えていこうとしているのです。いま世の中ではこうしたディスラプターが、ビジョンドリブンの経営手法を用いて、レガシーな産業を駆逐していっています。テクノロジーを活用した新しいビジネスモデルで未来を描き、既存のビジネスを置き換えていくというのが彼らのやり方です。これはGAFAだけに限らず、他の様々な業界でも起こっています。

例えば、自動車業界ではテスラが挙げられます。テスラが出てくる前は、電気自動車なのか水素自動車なのか、何が良いのか判断がつかない状況でしたが、イーロンマスクという天才的な経営者が出てきて、電気自動車をエコカーのスタンダードにしてしまいました。まだ赤字であるにも関わらず、1人の経営者のビジョンのもとに大金が集まり、自動車業界の次世代パワートレイン(動燃機関)の標準を電気自動車の方に誘導しています。同じように、Uberもその一つです。テスラ同様にまだ赤字であるものの、その時価総額は5兆円以上です。Uberのシステムが既存のタクシー業界をディスラプトしているわけです。生活に身近な小売業でいうと、Amazonや楽天のようなEコマースプレイヤーによって、既存のスーパーマーケットやGMSがディスラプトされています。また金融業界では、Fintechによる電子マネーの普及により、既存の金融機関の手数料ビジネスがディスラプトされています。

なぜ、経済におけるゲームのルールが変わってしまったのか

こうした中、ディスラプターは市場からの評価も集めています。EBITDAMultipleベース(時価総額が営業利益+減価償却費の何倍か)で見ると、一般的な上場企業のEBITDAMultipleは10倍と言われていますが、Amazonは40倍に及びます。Amazonは利益をほとんど出していませんし、配当もしていません。数字として利益が出ていないのに、稼いだお金をどんどん投資しているAmazonに対して、「Amazonのやっていることは価値がある」と投資家たちは評価しています。こうしてディスラプターとレガシーな企業との間に、市場からの評価の差がついてきてしまっているのです。そして、ディスラプターは集めたお金を更なる投資に回します。デジタル投資はとにかくお金がかかるので、投資力のある会社が最終的に勝ち残るというわけです。例えば、AIの優秀な研究者を一人雇うことになったとして、普通の企業では年収3000万円を払うことはできません。でも、Amazonのような企業はキャッシュが潤沢にあるので、そういうことが可能になってきます。日本は遅れていますが、このようなことが欧米では激しく進行しています。

では、なぜゲームのルールが変わってしまったのでしょうか?その理由は、「マネーサプライ」にあります。世の中に出回るお金は、20年前に比べ3倍以上になっています。これは、いわゆる「金融緩和」によるものです。リーマンショックの後に、アメリカの中央銀行が金利を0%にして「マネーサプライ」を増やし、「お金の調達を簡単にして企業に投資をさせる」ということを繰り返してきました。それによりお金そのものの価値が下がり、お金を集めやすくなっているというのが現状です。この状況下ではどういうことが起こっているのでしょう。

これまで企業の価値は、過去から足元の実績をベースに将来のキャッシュフローを予測し、評価されてきました。つまり「今後、企業がどれだけキャッシュを作れるか」を算出するために、これまでどのように儲かってきたかが重要だったわけです。しかしこれからは、「未来にどれだけすごいビジネスや新しい価値を生み出せそうか」という、未来の価値で企業が評価される時代です。このようなことが可能になってきた背景として2つの理由があります。1つは先ほど述べた「マネーサプライ」の増加。もう1つは、デジタルイノベーションによって、レガシーを壊すようなビジネスモデルが実際に可能になってきたということです。私はこれを、「期待経済の到来」と呼んでいます。

例えば、Amazonのジェフ・ベゾスは創業以来一度も配当をしていません。Amazonは配当ではなく、20年後30年後も繁栄する企業を創るために、少しでも多く投資をして、企業の時価総額を上げることこそが株主への報いだと考えています。さらに重要なのは、そこから新しい製品やサービス、新たなビジネスモデルが生まれて、進化していくことです。そうして、より期待経済を匂わすビジネスモデへと繋がっていきます。こうした進化のサイクルでディスラプターはどんどん成長しているわけです。

従来型企業は「売上高や営業利益」を評価指標としています。一方、ディスラプターは評価の指標を「時価総額」に置いています。戦い方も全然違います。従来型企業は既存事業のアセットやシナジーを優先させるため、過去の延長線上の戦い方になり、革新性は小さくなります。一方でディスラプターは、ビジネスモデルの革新性によって市場からの期待を得るので、ビジョナリーで革新性が大きくなります。加えてリソースの柔軟性も違います。従来型企業は自前主義になりがちですが、ディスラプターはスモールスタートが基本で、オープンイノベーションを活用します。時間軸で見ても、従来型企業は組織が多層構造になっており意思決定に時間を要しますが、ディスラプターはフラットな組織構造をとっているので素早い意思決定が可能です。このようにビジネスモデルだけではなく、組織運営においてもディスラプターが有利なことがわかるでしょう。

コンサルタントがコモディティ化する時代

世界の時価総額ランキング上位の企業も、この30年間で大きく変わりました。トップ10にラインナップされていた日本企業に代わり、現在はグローバルのディスラプターが名を連ねています。いま多くの日本企業はトランスフォーメーションを求められているものの、変化への対応に苦しんでいる現状がありますが、伸びている業界もいくつかあります。その一つが、コンサルティング業界です。実際に外資系コンサルタントの数は2000年頃と比べると5倍程度になっています。では、この現状をどのように捉えたら良いのでしょうか。

戦略コンサルタントに求められるケイパビリティはどんどん進化しています。コンサルタントの数が5倍になれば当然、「コンサルタントのコモディティ化」が起こるわけです。コンサルタントの肩書きの価値は下がり、もはや有名コンサルティングファームの名刺だけでは仕事ができない時代が来ています。これまで戦略コンサルタントに求められたスキルは、いわゆる3c分析です。消費者と競合を分析し、その上でクライアント企業のリソースや強みを分析する。そして、その3つの分析の上に合理的な戦略をつくるというのがこれまでの典型的な戦略コンサルティングの考え方でした。ところが、世の中が複雑化してデジタルの価値が上がり、コンサルタントがコモディティ化したことで、3c分析だけで生き残ることは難しくなってきました。近年コンサルタントに求められているのは「デジタルへの対応力」はもちろんのこと、データから新しい示唆を見出す「データアナリシス」、M&Aなど一連の実行支援にあたる「エグゼキューション」の3つと言われています。もちろん3c分析も大事ですが、新たにこの3つに対応しなければ、高単価のコンサルティングは担保できなくなっています。

さらに、これらに加えて大切なのが「コンサルタントならではの独自性」です。各戦略コンサルティングファームも自分たちの付加価値や方向性を考えているところですが、答えが出ない状況にあり、もはや戦略系や総合系、IT系などの従来の枠組みは意味をなさなくなっています。そんな中でコンサルタントが多様なスキルと独自性を持つことは非常に重要であり、これからはそれをどう創っていくかということを考えなければならない時代です。

“令和のキャリア”を選択する上で必要なマインドセット

こうした時代ですから、キャリアに対するマインドセットを変える必要があります。まず、自分で多様なスキルをどうやって身に付けていくかを考えなくてはなりません。そして自分自身がコンサルタントとして、独自性をどこに持つかを考える必要があります。何でも完璧にできる人間なんて居ませんが、どうやってファームや業界全体の中で際立ったコンサルタントになるのかがポイントになります。また、世の中は常に大きく変化しているので、変化への柔軟性や思考のバランスをどのように保っていくかも考えなくてはいけません。偏差値思考でコンサルタントを目指す時代は既に終わりました。人気のコンサルティングファームに入社できたとしても、皆さんのキャリアは全く保障されていないのです。

さらに、働き方も変化しています。一つのファーム、一つのプロジェクトで自分をレバレッジしていくだけでは追いつかない時代の中で、どうやって自分のキャリアを進化させていくかも考えなくてはいけません。事業環境に紐づけて考えてみると、これまでは「垂直統合」型の事業環境がありました。特定業界が上流から下流まで垂直統合で結ばれているので、業界に詳しいことが武器になり、その知見によって仕事ができたわけです。しかし、現代は「水平協働」型です。業界を超えたプロジェクトやイノベーションを牽引できる人材にとても価値があります。様々な業界の経験があり、多才なスキルを持つ人間こそ求められています。我々は「水平協働」型の時代に結果を出せるコンサルタントにならなくてはいけないのです。

ローランド・ベルガーだから実現できる、新時代のコンサルティング

ローランド・ベルガーはコンサルティングファームで唯一兼業が認められていて、なおかつベンチャー企業のアドバイザーなどになることが推奨されています。私がローランド・ベルガーにいるのは、この働き方を実現できるコンサルティングファームが他にないからです。

今年パートナーになってからは、また新しいことにチャレンジしたいと考えています。一つは、グローバルでコンサルティングファームの経営に携わること。そしてもう一つは、多動力をつけることです。背景には、コンサルタントとしての反省と振り返りがあります。コンサルティングをしていると、クライアントに対してはバリューを出せたとしても、その業界全体が盛り上がっていない状況に直面することがあります。個人的にはそうした状況を見る度に、非常に歯がゆい思いになります。そこで、「特定業界や日本の産業を成長させていくためには、従来のコンサルティングの枠組みを取っ払い、活動の幅を広げていかないといけない」と感じ、5つの取り組みを実践しています。まず一つは、従来通り我々の「クライアントの支援」。二つ目は、「業界を支援する政府や官公庁の改革」。三つ目は、「PEファンドを活用した業界再編」。これは業界の中で数が多すぎるので、一つの会社にロールアップすること等が大切になってきます。四つ目は「メディア活動を通じた業界への啓蒙活動」。コンサルタントを雇えない企業にも発信をして、業界活性を促していくことができるように、メディア活動に力を入れています。五つ目は、「スタートアップを活用したイノベーション創出や変革支援」。これら5つの取り組みを自ら実践することで、業界全体にバリューを出していこうと考えています。

令和のコンサルタントは、大企業だけではなく、ベンチャーやスタートアップとの関わりを深め、新しいストラテジーを創っていくことにこそ価値があります。そもそも、どういう自分になりたいのか。それには何が必要で、それを身に付ける環境があるのはどういう会社なのか。そこまで考えて、自分が入る企業を決めてほしいと思います。そして、様々なスキルを身に付け、業界をまたいで活躍できるようなコンサルタントになりたいと思う方は、ぜひローランド・ベルガーの扉を叩いて欲しいと思います。

株式会社ローランド・ベルガー

Interviewee

福田 稔 氏

株式会社ローランド・ベルガー

パートナー

慶應義塾大学商学部卒、欧州IESEビジネススクール経営学修士(MBA)、米国ノースウェスタン大学ケロッグビジネススクールMBA exchange program修了。電通国際情報サービスにてシステムデザインやソフトウェア企画業務に従事した後、ローランド・ベルガーに参画。東京オフィスの消費財・流通プラクティスのリーダーを務める。経済産業省「服づくり4.0」をプロデュースし、ACC TOKYO CREATIVITY AWARDS 2017「クリエイティブイノベーション部門」ゴールド賞受賞。また、PEファンドの支援を通じた消費財企業に対する投資・再生支援実績は業界トップクラス。シタテル株式会社や株式会社IMCFの社外取締役を務めるなど、業界の革新を促すスタートアップ企業に対する支援も行っている。