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トップコンサルタントが語る、世の中を変えるコンサルティングの極意

“コンサルティングサービス"と“ITソリューションサービス"の二つのサービスを保有し、企業の経営戦略立案からシステム構築・運用までを一貫してサポートする野村総合研究所(NRI)。インフラ・製造業・金融・流通・公共など多方面の業務ノウハウを蓄積し、経営戦略・グローバル戦略・事業戦略・IT・技術開発などあらゆる経営テーマに取り組む同社のコンサルティングの極意を、パートナーの北氏が語った。

May, 23, 2019

株式会社野村総合研究所 (NRI)

北 俊一 氏

“ICTの普及”に尽力する先に見た業界のガラパゴス化

私は1990年に野村総合研究所(以下、NRI)に入社しました。1995年に携帯電話システムがデジタル化して、携帯電話端末が小型化すると同時に、PHSサービスが始まり、その辺りから急速に携帯電話が普及し始めました。Windows95が発売され、ようやくパソコンが家庭に一台普及し始めたというのもこの頃です。そうした状況ですので、我々の仕事は“目的”としてのICT、つまり「いかに携帯電話やPHS、パソコンなどのICTを世の中に普及させるか」ということが中心でした。

しかし2005、6年ぐらいに、気が付いたら「おや?」という状況になっていたんです。その当時私が発表したのが、いわゆる『ガラパゴス論文』と呼ばれているものです。この論文を発表してから、様々な業界が、「ガラパゴス化している」という表現を用いられることが増え、“ガラパゴス”という言葉が普及していったこともあり、私は業界で“ガラパゴス北”なんて呼ばれています(笑)。それまで、通信キャリア各社や総務省と連携を図りながら、携帯電話や光ファイバー、iモードなどの普及に尽力することで、生活がより便利に、より豊かになると信じてやってきたわけですが、気がつくと日本だけが突出して、独自の進化を遂げていたんです。

具体的にガラパゴス化とはどういう状況だったのかというと、例えば、携帯電話でテレビが観られる“ワンセグ”機能や“おサイフケータイ”は日本独自の規格であったため、日本の携帯電話を海外に持ち出しても使うことができませんでした。それまで、日本はICT先進国だとばかり思っていたのですが、知らない間に国際競争力が非常に弱くなっていることに気付かされたのがこの頃です。

誰からも信頼され、誇れる業界を作りたいという想い

リーマンショックが起こり、社会的な課題が徐々に色濃くなってきていると感じたのもこの頃です。それまでは良かれと思って、携帯電話を一人一台、子供から高齢者まで誰もが持てるように普及させようと勤しんでいましたが、今度はそれによって社会的に立場が弱い人を狙った詐欺などの犯罪や、いじめ、自殺など様々な負の側面が目立つようになってきました。それまで既に15年くらいICT業界で働いていたので、いい仕事をして業界に貢献してきたという気持ちがあったのですが、一方で新しい課題が生み出されている事実を目の当たりにし、私の残りの時間はこうした課題を解決するために使わなければいけないと強く思いました。

ひたすらICTを普及させて、通信環境を整えることばかりを考えていましたが、それからは大きな転換を図る必要性を感じ、“目的”としてのICTから、様々な課題を解決するためにICTを活用する“手段”としてのICTへと考え方を変えていきました。そこであらためて自分自身のミッションを再定義し、「通信業界を誰からも信頼される業界にする」、そして「通信業界で働く全ての人たちが誇りを持って働ける業界にする」という二つを掲げて、この10年くらいやってきました。

こうしたミッションは、NRIの中堅以上のコンサルタントなら必ず持っています。コンサルタントは、“世の中をこうしたい”という強い想いがないと続けられない職業です。コンサルタントというのは四六時中、つい世の中の課題について考える癖がついているのではないかと思うんです。日常の中でも色々な場面で“気付き”がありますから、プライベートでも常に仕事のことが頭の片隅にあって、完全にスイッチを切らないでいる、そういう人が多い気がします。

部署の枠を越え、最適な人材が課題に向き合う

私はこれまで500本ほどのプロジェクトに携わってきました。その中心はICTですが、ICTは今や“手段”になっていますから、農業×ICT、金融×ICTなど、あらゆる産業とクロスさせる動きがどんどん広がっていて、周辺領域は果てしなく広いです。あらためてこれまでの500本のプロジェクトを振り返ってみると、様々な仕事がありましたが、ふと十数年前の仕事の記憶が蘇ってきて、今の仕事に活かされるなと感じることはよくありますし、全てに意味があったと思います。

この経験から一つだけ言えることは、NRIならどこに配属されても仕事が面白いということです。企業として社員を管理するために、どうしても部署という単位が必要なのですが、どこに配属されたとしても一つの領域の仕事だけをやることはまずありません。例えば、お客様の課題を解決するために、ICTの専門家と、金融の専門家、社会インフラの専門家が必要だとしたら、部署を越えて最適な人材をアサインし、プロジェクトを組成します。

1つのプロジェクトで数千万円から、億を超える金額をいただくこともありますが、それだけの金額を出してでも解決したい課題ですから、当然難しく複雑なものばかりです。そんな課題をお客様や業界の未来のために解決するのに、社内の部署など関係ありません。部署の枠を越えてその領域に詳しい人材同士がしっかりと手を組み、最高のパフォーマンスを発揮する、これこそがノウハウ(Know How)ではなくノウフー(Know Who)で、NRIのやり方です。外資系ファームとのコンペで勝った時にお客様に理由を尋ねてみると、「NRIさんは、プロジェクトに応じて最適なコンサルタントをアサインしてくれるから」と言っていただくことも多いのはとても喜ばしいことです。

政策立案と企業の課題解決、 両面から社会を動かせる環境

NRIは長らく、政策提言を行うシンクタンクとしての役割を担ってきました。ですから、弊社のコンサルタントの中には、様々な省庁における研究会や委員会の構成員、いわゆる有識者になっている人もいます。NRIのコンサルタントだから有識者に選ばれやすいというのもありますが、その業界の中でも知名度がないと有識者には選ばれません。私が最初に総務省の委員に選ばれたのは2006年頃ですが、そのきっかけとなったのは、先ほどお話ししたガラパゴス論文です。社内には「知的資産創造」をはじめとするレポートで自分の意見を発信したり、「NRIメディアフォーラム」という、マスコミを前にプレゼンをして記者が記事にしてくれる機会があったりするのですが、そうした取り組みを重ねて、私も同じように有識者になっていったわけです。

大学教授が有識者に選ばれることもありますが、我々は企業のコンサルティングも並行してやっていますので、現場のことをよく理解しています。ですから、委員会などでの発言も現場の“生の声”に基づいたものとなるわけです。社内では「現地現物」という言葉を用いますが、こうした行動原則もまた、NRIが大切にするものの一つです。我々コンサルタントが一番大事にすべきは、自分の目で見て、感じて、商品であれば自分で使ってみて、現場でお客様やスタッフと話すことです。そこで皆さんがどのような課題を感じているか、幹部はこう言っているけど、実態はどうなのか。そういった現場の“生の声”が“最強の情報”になるんです。もちろんデータを取得したり、多角的に分析したりはしますが、“生の声”があるのとないのとでは提案の迫力が違いますし、それなしでは経営陣を動かすことはできません。

政策立案に携わる有識者として、企業のトップと比較的簡単に会うことができますし、そこから課題解決を依頼され、プロジェクトが立ち上がれば、現場について深く知ることができる、そうするとまたお声掛けいただける…というような好循環が生まれていくわけです。政策立案と、それに関連する業界や企業の課題解決、その両方に携わることができるのがNRIの特徴ですし、他社にはない強みです。

社内に根付く「先義後利」という考え方

もう一つお伝えしたいのは、NRIの社是ともいえる「先義後利」という精神で、これは私の真髄であり、仕事をする上で一番大切にしていることです。例えばプロジェクトを進めるにあたり、お客様の予算が足りないとわかった場合、普通の企業であれば当然お断りすると思います。ただNRIは少し違っていて「このプロジェクトは世の中にとって意義がある。赤字でもしっかりお手伝いをすれば、きっと5年後10年後いい結果に結びつくだろう。」と判断すれば、社内で話を通すこともしばしばです。社会的意義があれば、赤字でも仕事を引き受けるというのはNRIの素晴らしいところだと思います。

逆に社会的意義の感じられない仕事はお断りすることもありますし、お客様が自社の利益ばかりを優先しようとしているとわかった場合には、それに対してとことん戦います。もちろんお客様の利益は大切ですが、儲けることが目的ではなく、お客様が新しいサービスや商品を出すことで、世の中が良くなり、その結果お客様が栄えて、NRIが栄えるわけです。「先義後利」という言葉は、NRIのコンサルタントを語る上では欠かせない精神で、社内に深く根付いています。

求めるのは「知的好奇心」「傾聴力」「利他主義」を備えた人材

私が一緒に仕事をしたいと思うコンサルタントは、一言で言えば、お客様から愛されるコンサルタントです。具体的にはまず「好奇心旺盛であること」。一つの領域の仕事だけを担当するわけではないので、多種多様な分野に適応するための好奇心が必要になってきます。

そしてもう一つは「聴き上手であること」。話し上手じゃないと良いコンサルタントにはなれないと考えている方も多いと思いますが、実際に大切なのは聴く力ですね。コンサルティングでは初めに企業の方に課題をヒアリングしていくわけですが、最初は外部の人間である我々に対して警戒する方も少なくありません。ですから、初対面の方から短時間で本音を聴き出すことが非常に大切になってきます。聴き上手なコンサルタントは、お客様の信頼を得ることができます。

それと、最後に「利他主義であること」。自分の成長を目的としてコンサルティングファームに入った人の成長は遅いです。我々はお客様の課題解決のために膨大なエネルギーを使います。自分のためではなく、世のため人のために仕事ができるかどうか。世の中や企業のために、強い想いを持って、一心不乱に自分のエネルギーを注げるか。自分の成長はその結果であり、いい仕事をしていれば後から必ずついて来ます。そういうコンサルタントはお客様からも愛されますし、NRIはそういうコンサルタントの集まりなんです。

学生からの質問

――外資系のコンサルティングファームだと、短期間で成果を上げることが求められると思うのですが、NRIでは社員へどのような期待をされますか?

役職・階級に応じて、評価される指標が変わってきます。やはりベテラン以上のコンサルタントになってくると、売り上げで評価されますが、入社して数年は、どれだけパッションを持って仕事をやっているか、NRIらしさでもある「情意」という要素で評価されますね。中堅クラスになってくると、どれだけ自分で仕事を取ってきたかが評価のウェイトとして高くなってきます。NRIでは、早ければ2~3年目でプロジェクトリーダーを任されることもあり、若いのに大変な責任を負わされます。また、これはよく驚かれるのですが、NRIはお客様とのミーティングに新人も交えたプロジェクトメンバー全員で出席し、年次に関係なく全員が自分の意見を述べます。私は部下に、「一言も喋らなければ次は出なくていい。印象に残る一言を残して帰ってきなさい。」とよく伝えています。現地現物を重視しているので、自らの体験を通して成長できますし、一年目でも二年目でも活躍する場がしっかりと設けられていて、自分達の価値を出すことができます。外資系のコンサルティングファームとNRIを比べると、育て方の質が違うというのはあるかもしれません。

――北さんは通信業界を専門とされていますが、コンサルタントとして手掛ける業界は絞った方が良いのでしょうか?

私の場合は少し特殊で、大学が電子通信学科だったため、もともと情報通信は得意とする領域だったんです。入社後も様々な分野の仕事をしましたが、情報通信の軸は変わりませんでした。他のコンサルタントは、大抵何度かの異動を経験していますし、沢山の業界を見てきた人は色々なことをよく知っているのが強みです。私は情報通信の業界しか見てきてないので、その中ではごく当たり前だと考えていることでも、複数の業界を知るコンサルタントからすれば、特殊な環境に見えることもあります。そういうコンサルタントは、他の業界のおかしな部分を客観的に捉えて、的確に指摘することができますし、そこから気付きが生まれることもあります。ですから、最終的に自分の得意とする領域を選択するためにも、色々な領域を見た方が良いと思いますね。

――これまで特に強く社会的意義を感じた、もしくは転機となったようなプロジェクトはありますか?

「先義後利」という話をしましたが、コンサルタントは人を動かす仕事だということを思い知らされた例は沢山あります。2007年頃、ある携帯ショップの店長の皆さんが一堂に会する場で講演した時のことです。そこで私は総務省のモバイル研究会の有識者として、業界の抱える課題や、それを解決するためのプランについて話をしていたのですが、最後の質問で一人の店長の方から「北さんに一番お願いしたいのは、携帯電話ショップの店頭で働くスタッフが、誇りをもって仕事をできるような業界にしてもらいたいということです。この仕事は忙しいし、覚えることも多いし、クレームも少なくないです。それでも、私はこの仕事が大好きなんです。」と言われたことは今でも忘れられません。

その言葉を聞いて、ガーンと大きな衝撃を受けましたね。私は当時、制度や仕組みを変えることばかりを気にしていて、通信キャリアや端末メーカーのことは考えていたものの、最前線で働いている人たちのことまで考えていなかった。我々の仕事は世の中に与える影響が非常に大きい反面、一歩間違えると業界の中で一番弱いところにしわ寄せがいってしまう。そういうことをこの出来事で思い知らされたんです。そして、最前線で働く人たちが幸せになるにはどうしたら良いのか、そのためには政策をどう変えていったら良いのか、ということまで考える様に変わっていきました。世の中には大きな変化を好まない方も多くいますので、もの凄い抵抗を受けて、くじけそうになることもあります。そんな時は現場へ赴き直接話を聴くことで、それを乗り越えるエネルギーをもらうと、「よっしゃ!頑張ろう。」という気持ちが沸いてきます。

学生のうちに、沢山の“美しい”ものに触れてほしい

皆さん、最後に一つだけ。今のうちに、本を沢山読んでください。新入社員のレポートを読むと、どのぐらい本を読んできたか、どれだけ美しい日本語を読んできたかがよくわかります。文学作品とか美しいものを見ていないと、美しい文章を書くことはできない。本だけではなくて、美しい絵や景色、映画などあらゆる美しいものにも触れてください。コンサルティングって、アートでもあるんです。単に数字を積み上げて、ロジックでこうだと説明しても、それだけで人は動きません。沢山の選択肢の中から、最終的な結論をどれにするか決める時に、「北さんはどっちが良いと思いますか?」とよく聞かれます。あらゆる情報から総合的に判断して、「こっちが良い」と答えますが、美しい絵を見て美しいと感じるのと同じように、最後は直感的な解の美しさが決め手になります。プロジェクトの経験を500本も積み重ねると分かってくるのですが、コンサルティングって、そういう世界なんです。だから皆さんには、美しいものを見て、美味しいものを食べて、素敵な恋をして、感性を磨いて欲しいと思います。

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北 俊一 氏

株式会社野村総合研究所 (NRI)

パートナー

1990年に野村総合研究所入社以来、一貫してICT関連領域における戦略立案、実行支援に従事。専門は競争戦略、事業戦略、マーケティング戦略及びICT政策立案支援。現在は総務省情報通信審議会専門委員のほか、「包括的検証に関する特別委員会」「モバイル市場の競争環境に関する研究会」「消費者保護ルールに関するWG」「放送の諸課題に関する検討会」等、複数の委員を務める。1965年横浜市生まれ。早稲田大学大学院理工学研究科修了。