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新たな課題に、新たな解決策を。時代の潮流から見極める、自らイノベーションを生み出す成長企業

就活生の間で毎年のように交わされる「大手か、ベンチャーか?」という問い。この比較軸は、産業や企業の「いまとこれから」を正しく捉えた時に、有用なのだろうか。デジタルトランスフォーメーションで再現性の高い事業開発を推し進めるSpeee代表の大塚氏が、Goodfindを運営するスローガン代表の伊藤と共に、先端企業を取り巻く経営環境の変化について紐解き、成長する産業・企業の見極め方を提言する。

Jan, 15, 2019

株式会社Speee

大塚 英樹 氏

過去の延長線上にはない、新たなアプローチが求められる時代

伊藤:まず始めに大塚さんが、新産業や成長企業というものを、どのように捉えているかお伺いできればと思います。

大塚:私たちが取り組んでいるデジタルトランスフォーメーションは、レガシーな産業をどうやってアップデートしていくかということが近いので、必ずしも新産業というわけではないですが、例えば、ブロックチェーンみたいに、全ての産業に通底している、先端的なテクノロジーの先に出てくるものが新産業という認識です。ただ、両方に共通して言えるのは、すでに強みを保有している企業が、既存モデルの横展開を繰り返してできる産業の高度化はだいぶ終わってきているのではないかと考えています。これからは新しい事業やモデルを開発したり、テクノロジーをどう染み込ませていくかというのを上段から考えられるチームが、レガシーな産業をどうデジタルトランスフォーメーションさせるか、テクノロジーをどのように新しい産業にまで発展させるか、ということをやっていく時代だと感じています。アプローチも過去の成功例や既存のモデルの延長線ではなく、いくつかの掛け合わせによって新しいモデルを創り、いかにしてデジタルの比率を高めていくかが求められています。そういう意味で、既存産業の知見と先端的テクノロジーへの理解、両方の要素を持っていて、いいテーマに臨んでいる企業こそ、これからの時代のキーカンパニーになれると思っています。

伊藤:既存産業の知見とテクノロジーへの理解が両方必要という話でいくと、アセットが多く、体力がある大手企業が有利という見方もあると思うんです。ネットベンチャーがいきなり入ってきて勝てる新しい領域は少なくなっているというトレンドがある中で、ともすればこれからは大手企業が圧倒的に勝っていくんでしょうか。

大塚:確かに大手企業は有利ですが、事業が成長するまでの時間軸や投資対効果が合わないというケースは多々あります。決済一つをとってみても、ここまでマーケットが顕在化してきて、ようやく大手企業が参入している状況ですよね。大手企業には大手企業の文法、つまりビジネスの作り方のようなものがあって、デジタル領域の大手企業がいきなり不動産の分野に数百億円の資金を投じるかというと、そうはならないと思います。彼らはもっとどメジャーな領域で、圧倒的に勝つことに対しての投資優先度が高いので、そういう役割分担かと。

伊藤:デジタル領域の大手企業というと、Yahooのような企業やメガベンチャーをイメージしやすいと思います。大手企業であっても、レガシーな産業でこれまで時代を築いてきた企業などはどうでしょうか。

大塚:そういう企業は社内外のステークホルダーとの関係性が根強いでしょうね。つまり社内の意思決定の時間軸の問題です。例えば不動産の会社であれば、中古の流通や売却の事業をやってしまうと、新築事業とのカニバリゼーションが発生してしまう部分がある。すると、どうしても慎重にならざるを得ません。また、これまで新築を中心として培ってきた事業プロセスをいきなり変えることは難しいので、意思決定の重心が、どうしても過去上手くいった手法や領域に偏りがちです。そういう点では、大手企業よりも中堅どころの不動産会社のほうが、新しい取り組みに対して柔軟だったりします。マーケットが大きく動くときって、過去の資産が負の遺産に変わっていってしまう可能性があるんですよね。大きな転換が求められる時の常だと思います。

豊富なアセットと優秀な人材だけでは、イノベーションは生まれない

伊藤:おっしゃる通り、組織が古くなっていたり、大きくなりすぎたりして、柔軟にデジタルの要素を取り入れることが難しいという企業も多いですよね。学生は実体験がないので、どの様な見極め方をすればいいのでしょうか。

大塚:実感値として思うことの1つは、アセットの内訳ですかね。創業当時、ある総合商社のITソリューションチームと、よく一緒に仕事をさせてもらいました。そのチームのメンバーは非常に優秀でしたし、出資先も多くあるので、名だたる企業との接点が豊富にあって、アポイントもすぐに取りつけてきます。ただ、社内にはソリューションがないので、私たちのように、クライアントの課題を解決できそうな企業を連れて提案に行ったりするんです。つまり、彼らのアセットは課題に対する解決方法ではなくて、タッチポイントやアクセス権を持っているということになります。それも優れたアセットですが、大手企業だからソリューションを豊富にもっているというわけではないということですね。

伊藤:大手企業でオープンイノベーションに携わっている人は、全組織の中でもほんの数パーセント。それであれば規模の大小問わず、企業の軸がデジタルになっているところに行ったほうが、様々な産業に対して仕掛けていけることが多いということですかね。

大塚:私は絶対にそうだと思います。過去の歴史をみても、テクノロジーが絡む領域で旧来の大手企業が大きな課題解決のど真ん中にいたことはないんです。例えば、今私たちが取り組む、クリニックをデジタルトランスフォーメーションする過程でも、アプローチの方法には様々な可能性があります。つまり、決まった答えがないっていうことなんですよね。それなのでデジタルの領域は、選択の自由度は高くなります。そういう時代に、会社の文法に従わなくてはいけないとか、既存の資産を活かす前提で物事を考えなければいけない、というのは機会損失を生みやすいと思います。

伊藤:少し前は、デジタルに行きたくてもスモールなベンチャーしかなかったですが、選択肢が増えているのはとてもいいことですよね。そうすると「大手なのかベンチャーなのか」というのは昔からある問いですが、それ以前に、デジタルの取り組みができる企業なのかどうかが重要だということですね。

大塚:そうですね、デジタルに軸足がある企業の方が、圧倒的にアプローチの自由度は高いです。ただ一方で、デジタルトランスフォーメーションをしようと思うと、ベンチャーに行くのが絶対的に良いというわけではなくて、”業界のキーカンパニーと組める水準のベンチャーであること“が非常に重要です。その上で自分のキャリアをどっち側で過ごしたいかということは、一度向き合ってみるべきだと思います。Speeeが多様な事業をやっている様にみえるのは、これから一番変化率が高いテーマに柔軟に取り組んで、方法論に縛られずに、アプローチの自由度をとろうと思っているからです。その方が現代に合っているし、スピードが出るからこそ、将来与える影響度も大きくなると考えています。

デジタル領域で良いテーマに取り組み、ポジションをとれる企業であるか

伊藤:新しいものに触れられる環境にいた方が成長が早く、より難易度の高い挑戦ができるようになる、という構造はありますか。

大塚:例えば、ブロックチェーン関連の事業をやっていて凄く思うんですけど、新しいことを学ぶときに、世にある情報がいくらあっても詳しくはならないんですよ。正確に言うと、途中から学習曲線がすごく緩やかになって、あるところで止まる。例えば、私がブロックチェーン関連の情報に詳しくなれたのは、事業としてポジションを取ってからです。ブロックチェーンくらい、様々な有識者が本にまとめている領域でさえそう思います。だから知り合いの経営者の方に、どうやればいいか尋ねられても、最終的には「ブロックチェーンが本当に解決策として必要な領域はまだ多くないですよ。まずはポジションをとってみると、その話の意味がものすごく分かりますよ。私もそうでした。」とお答えしています。理論上くるというのは頭でわかっていても、いざ事業としてやるとなると「これはあと4年くらいかかるな」とか、時間軸の手触り感を正しく把握することが特に大事だと思っています。その点、投資家の人たちは、組成したファンドがだいたい10年くらいでリータンを得る設計になっています。つまり、投資先は、10年以内に一定の状態になり得る事業を見極めようとされています。だから、ベンチャーキャピタルの方々が何を面白いと言っているかというのは、学生にとってすごく参考になると思いますね。もちろん、ベンチャーキャピタルの方々もタイプは様々ですが、僕らと非常に似たことを考えていらっしゃる方も少なくありません。学生のうちにTech系のベンチャーキャピタルの方が語っている内容を、よく勉強してみるといいんじゃないでしょうか。

伊藤:コンサルティングファームとかシンクタンクは、学生から見ると色んな業界を見ることができて、すごく詳しくなれるイメージがあるんだと思いますが、自分たちがポジションをとっていない分、本当に深いところでテクノロジーや産業についての知識や理解が得にくいということですか。

大塚:コンサル出身で活躍されている経営者の方もいますし、そういう方はコンサルにいたからこそ、バリューチェーンに変革をもたらすアプローチができているので、一概には言えません。ただ、その中からのイノベーターの発生確率は高くないように感じます。既存の解決策を当てはめて、課題解決をするだけの場所にいると、新しい課題に新しい解決策を生み出していく機会が少ないのかもしれません。

事業の手作り感を知り、集められる人材となる

伊藤:では、どのような人がバリューが高い時代になっていくと思いますか。

大塚:そもそもキャリアにおいて一番高い価値があるのは、”集められる量“だと思っているんです。お金も、人材も、情報も。分かりやすい例では、一度成功した起業家はお金も集めやすいでしょうし、人も情報も集めやすい、だからこそ市場価値が高いと言えます。他方、過去の成功が必須というわけではありません。過去に成功をしていなくても大きな時代の潮流の中で、特定の領域にめちゃくちゃ詳しくて、どんなテクノロジーや新しいビジネスモデルがどういう時間軸で実現されていくのかの肌感覚も含めて、計画や構想が具体的にイメージできる人に、色々なものが集まってきますよね。要は、集めたいときに集めたいものを集めたいだけ集められる人がバリューが高いのではないですかね。

伊藤:若手の段階から、どうやってそこに辿り着けるのでしょう。

大塚:最初に所属するところが、基本的な時代の潮流に合っているかが重要ですよね。企業や事業の重心が未来側にあるかどうか?そういう部分に視点を据えてみることです。

伊藤:時代の潮流に合った企業にいかないと、そういう視点では仕事ができないと。

大塚:「未来はどうなっていくべきか?」という会話が日常にあることが大事なのかもしれません。留学みたいなもので、日々の会話に頭の使い方が慣れてくるんですよ。日常から良い仲間に、良い内容の会話で揉まれる環境があればいいと思います。そもそもそういう環境の方が楽しいと思いますしね。

伊藤:社会で市場価値の高い人材に成長できる環境条件でいうと、時代の潮流に合ったものを掲げている企業、そういった会話ができる環境、それ以外に何かありますか。

大塚:人間に対する解釈力を上げておくのは良いチームを作る上で大事です。それには人のキャリアは手作りだと気づき、組織でどういう人がどんな役割で活躍しているか、という肌感を掴むことが必要です。プロジェクトにおいて各々の役割まで分解して、誰が誰に助けられ、どういう力学で組織が成果を出しているのかを、多面的に解釈できる力といえますね。若くて賢い子が出してくるプランで、一番手触り感がないのが、時間軸や採用だったりするんです。だから、採用に触れていくこともおもしろいかもしれないですね。

伊藤:作り手の気持ちが分かる、みたいなことでもあるんですかね。

大塚:そうですね。自分だけではなく、自分の周辺を取り巻く主要なロールの当事者意識を持ち、自分がいくつもの役割を想像できるようになると、高いシミュレーション能力が生まれてきます。そういう意味では、いろんな役割の人と仕事ができて、当事者意識を持ちやすい組織の方がいいんでしょうね。

クリエイティビティを最大限発揮できる環境

伊藤:これまでお話を伺ってきましたが、決してリスクが低いとはいえない事業や組織の革新を成し遂げてきた御社ならではの意思決定の方針や力学ってどういうところですか。

大塚:1つの特徴として、社内に事業家が多いということは言えるかもしれません。新規事業の難しさを知っている人間は、優秀なタレントに対するリスペクトや能力発揮の上限をよく知っていますよね。”ゼロイチ“の作法や難しさを知っている人が多いから、高い能力を最大限発揮してもらおうと支援するので、そういう環境や文化があるのかなと。

伊藤:そういう環境がある会社だと、優秀さが活しやすいということでしょうか。

大塚:一概には言えないですけど、極端な例で言えば、カリキュラムにさえ従ってくれればいいという環境だと、それに当てはまらない質問は、鬱陶しく感じるのではないでしょうか。教える側からすると一時的な生産性を落とすことになるので、言う事に従ってくれる方が階段を上るスピードは速いですからね。でも、クリエイティブは抽象的な中から生まれると考えています。具体な指示だけだと、アプローチの自由がないので、クリエイティビティは活かしにくい。だからミッションは抽象度高く、未来寄りなほど、クリエイティビティが発揮しやすいです。Speeeのミッションでも「解き尽くす。未来を引きよせる。」という未来寄りのミッションを掲げていて、いろんな種類の人間が心から動機づくような設定にしたかったんですよ。その全社のミッションを軸に、各事業部がどれだけ優れたミッションを掲げられているのかが重要だと考え、1年以上かけて全ての事業部のミッションをアップデートしました。さらに、抽象度の高い未来の方向性を掲げながらも、そのミッションが組織の日常に溶け込んで、関係者たちの日常会話になるような状況を生むための経営方式にしています。我々は、優れた人材が集まる企業になりたいと同時に、優れたミッションが集まる企業になりたいと思っています。

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株式会社Speee

Interviewee

大塚 英樹 氏

おおつか・ひでき

株式会社Speee

代表取締役

1985年、埼玉県生まれ。メディア関連事業の会社を創業し、2011年に譲渡。同年、25歳で株式会社Speee代表取締役に就任。2015年にAERAの「日本を突破する100人」に選出。2017年からREAPRA Venturesの外部アドバイザーを務める。Speeeは「デロイト トウシュ トーマツ 日本テクノロジー Fast50」7年連続成長企業上位ランクイン。Great Place to Work® Institute Japanが実施する「働きがいのある会社」ランキング上位連続受賞などがある。

Interviewee

伊藤 豊 氏

いとう・ゆたか

スローガン株式会社

代表取締役社長

2000年 東京大学文学部 行動文化学科心理学 専修課程を卒業後、日本IBMに入社。システムエンジニア、関連会社にて新規ビジネス企画・プロダクトマネージャーを経て、本社のマーケティング部門にてプランニングワークに従事する。2005年にGoodfindを運営する、スローガン株式会社を設立。協力した著書に、『大手を蹴った若者が集まる知る人ぞ知る会社』(朝日新聞出版)がある。