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第4次産業革命前夜 RPAがあらゆる事業を再創造する

ロボット技術やAIによって、ホワイトカラーの業務を効率化・代行する「RPA(Robotic Process Automation)」。生産年齢人口が激減している我が国にとって、いま最もニーズの高い技術だ。RPAホールディングスの高橋知道代表が語る第4次産業革命の未来像とは?

Jan, 19, 2018

RPAホールディングス株式会社

高橋 知道 氏

RPAがホワイトカラーの生産性を劇的に改善する

『メガバンクが、国内事務作業をRPA化。同グループの従業員約3割にあたる9500人相当の労働量削減を目指しはじめた』『新入社員はロボ。「日生ロボ美 趣味:みなさんのお手伝い 特技:タイピング、入力作業」』――。

 

最近ネットやTVで、こうしたニュースを頻繁に見かけるようになったと思います。

RPAとは2015年頃からコンサルティング会社が定義した「Robotic Process Automation」の頭文字をとった概念です。ひと言でいえばホワイトカラーの業務を人に代わって行うこと。

これまでビジネスにおいてロボットといえば、工場などの生産現場に導入されるものでした。従来、人が行っていた組立作業などを手伝う産業用ロボットです。この活動範囲を、ホワイトカラー業務にまで拡大させたというわけです。

もっとも産業用ロボットのようにアームがついていたり、人間型をしていたりするわけではありません。ホワイトカラーの職場において、人間の補完として業務を遂行できることから、「デジタルレイバー」とも言われています。RPA(デジタルレイバー)はロボットの「人の作業を代行出来る」「変化に強い」「能力が高くミスをしない」という特性を活かし、人と協働して仕事をします。

これまでも企業は情報システム(以下「システム」)を活用し業務課題を解決してきました。ただし、システムは投資額が大きく、業務の変更に弱いという課題があります。投資対効果に合わない業務や環境変化に合わせて変更が必要な業務には、システムが導入されません。つまり人の手によって行われている業務はまだ膨大にあるのです。また、環境変化に合わせて変更が必要な業務も全て人の手によって行われてきました。

RPA(デジタルレイバー)は人と協働して仕事をすることで、圧倒的に生産性を改善する技術です。

RPAは誰もが使う当たり前の技術になる

まだRPAという概念が存在しない2008年から、弊社は「BizRobo!」という事業で、RPA(デジタルレイバー)を活用した事業に携わり続けています。わずか一年前まで、この領域に関わる企業は数えるほど。この一年で一気に数百社もの企業が参入しています。

30年前にデビューしたPC、20年前のインターネット、10年前のスマホがたどったのと同様に、RPA(デジタルレイバー)はピーク期、幻滅期、定着期を経てあらゆる産業、会社、部門に深く浸透していきます。誰もがRPA(デジタルレイバー)を当たり前のように使う時代の入り口に、私たちは立っていると言えるでしょう。

人間は定型的な「作業」から解放される

某金融機関で既に導入されているRPAの具体例をお話ししましょう。そこでは、お客さまに記入してもらった手書きの申込書を管理するため、システムを導入しています。

このシステムは効率的に顧客データを管理するものです。ところが、このシステムを使うには人による作業が必要です。名前、生年月日、住所などは紙に手書きされているため、これを正確にデータ入力する必要があります。この入力作業のために、数百名の人員を配置するほどでした。この作業をRPAに代行させることにしたのです。

手書きの申込書をスキャンすると、RPAが自動的にテキストに変換して、社内システムの然るべき場所にデータとして入力し、保存。人は膨大なルーチン作業から解放されます。人しか出来ない柔軟な対応が必要な業務に、より多くの時間を割けるようになりました。

システムへ入力する機能は人間で例えると「手の機能」の代行です。最近では、AI(人工知能)を活用し、先の例に挙げたスキャンの機能つまり「目の機能」の代行まで出来るようになってきています。RPAは、より高度な業務を人に代わって手がけ始めています。

さらに将来的には、人間で例えると「脳の機能」に相当する技術の実装も実現すると予想されています。例えばカスタマーサポートなどの電話やチャットの対応場面で、自動的に精度の高い返答を導き出すようなRPAも実装されはじめています。このように人は「作業から解放」され、人にしか出来ない「付加価値の高い仕事」にシフトしていくようになります。

新たなテクノロジーは人間の「仕事」を進化させる

ロボットは風邪をひくことはありませんし、24時間シフトを組み替える必要もなく、働き続けることが可能です。また法律や業務ルールが変わっても、システム投資をすることなく、設定を書き変えるだけでスピーディーに対応できる。こうした特徴から、企業はRPAを導入することでコストを削減でき、利益を最大化できます。

こういう話をすると必ず「RPAがこのまま普及し、人間の仕事が無くなっていくのではないか?」という議論がなされます。しかしながら、技術革新の歴史を振り返れば、事の本質を理解し易くなります。

産業革命により自動車が馬車に代わり、馬車産業で働く人は一時的に仕事を失いました。しかし、新たに生み出された仕事の付加価値や産業(自動車産業)は、それを遥かに上回る規模になりました。

人間はルーチン作業を繰り返すのが苦手。その時々の最先端の技術を使って人間が苦手な「作業」を置き換えることによって「仕事」の付加価値を進化させてきたのです。

最近では、単調な道路走行を自動運転に置き換えることで生産性を飛躍的に向上させる試みが実現化しようとしているのは周知のとおりです。これらの試みにより産業のありかたそのものが再定義され、人間が行う「仕事」も全く違ったものになるでしょう。

時間軸を私が就職した1993年まで戻してみましょう。大学を出てコンサルティングファームに入った当時、インターネットは商用化されていませんでした。

現在では当たり前の「情報はウェブで検索」という作業は不可能であり、例えば、クライアント報告のための調査資料も、書籍や出版物、時には霞が関にある国会図書館に通い、丸1日かけてようやくほしい資料にありつくという状態でした。今なら、スマホに向かって「Hey Siri」とひと声かければ、その場で手に入れられる情報ですら、丸1日かかるような「作業」が必要だったわけですね。インターネットやスマホという最新技術を活用する事により「作業」が効率化され、「仕事」の付加価値を高める事に、人は集中できるようになったわけです。

RPAを活用した新規事業創造により日本の社会的課題を解決する

これからの日本は生産年齢人口(15歳〜64歳)は毎年60万人減る。これは大学を卒業する学生の数を上回ります。また直近(2017年10月時点)の有効求人倍率も、1.55倍と43年9ヶ月ぶりの高水準となっていて、圧倒的な「労働力不足」です。

日本が直面する「労働力不足」という喫緊の課題を解決する上でも、RPAにかけられている期待は想像以上に大きい。RPA分野におけるリーディングカンパニーである私たちのような企業にとっても大きな事業機会が広がっています。インターネットやスマホの普及がさまざまなサービスの在り方を根本から変えたように、RPA(デジタルレイバー)を活用することによって新しいサービスが生まれると思いますので、それも我々にとっての大きな事業機会になっていくと考えています。

業界のリーディングカンパニーとして、顧客企業のRPA(デジタルレイバー)活用の支援だけではなく、新規事業創造グループとして蓄積したノウハウを活かし、来るべきデジタルレイバー時代における新規事業創造を次々と仕掛けていきます。

誰よりも早く、タイミングを捉えて行動した者が勝つ

事業で成功するためのカギは「タイミング」です。パラダイム・シフトを起こすような新技術は、普及する直前の誰もが素人で競合も少ない段階で、どれだけスピーディーに立ち上げることができるかが重要です。スマホがこの世に存在していなかった10年前は、全員がアプリの素人。必死になって3ヶ月もやれば、業界のトップランナーとして先頭を走れる可能性が高かったはずです。

私はそれを会社員時代に学びました。 当時入社したのは出版事業とフロッピーディスクに入ったソフトウェアの卸事業を手掛ける売上1000億円未満のほぼ無名の会社でした。1994年にインターネットがこの世にデビューして間も無く、日本のどの会社よりも早くブロードバンド事業(当時はデジタル多チャンネル衛星放送)への参入をします。

当時、MITメディア・ラボの創設者であるニコラス・ネグロポンテ氏が書いた『ビーイング・デジタル』という本に感化されていた私は「デジタル情報革命に関連する事業をどうしてもやりたい!」と考え、その会社のブロードバンド新規事業の創業メンバーとして飛び込んだのです。

その会社とは、後に訪れるインターネット、スマホという「最新テクノロジー」で常に情報革命を牽引してきたソフトバンクという会社です。

私が参画したデジタル多チャンネル衛星放送事業も日本初。ということは誰も経験者は存在していなかったわけです。20代の若者も50代の放送業界の重鎮も、スタートラインは未経験=ゼロスタートです。3ヶ月も必死にやればこの分野の専門家になれ、知的体力と意欲に満ち溢れた若い人にとっては千載一遇のチャンスでした。

若い人にとってチャンスしかない

その後、私はパートナー数名と一緒に会社を興しインターネットを活用した新規事業コンサルティングの事業をスタートさせました。事業は順調に拡大しましたが、2008年のリーマンショックで大きな転機を迎えます。

新規事業コンサルティングで培った人材とノウハウを活かし、自ら新規事業を手掛ける体制に大きく方針転換。2008年からいくつかの新規事業を開始しました。

その一つが「BizRobo!」というサービスで、現在、RPA分野のリーディングカンパニーであるRPAテクノロジーズという会社です。事業開始当初は、リアルロボットさえ縁遠かった時代。「ホワイトカラーのロボット」というコンセプトが理解されない期間は長く続きました。

しかし「必要とされる時代が必ず来る」という、現RPAテクノロジーズ代表・大角暢之の情熱だけを信じて、新規事業として続けてきました。5年ほど前から日本を代表する先端的大企業の数社との取り組みが成果を上げ、さらに2年前からコンサルティング会社が開発したRPAというバズワードにより、まさに普及拡大期のタイミングを迎えつつあります。多くの企業にとっても、これから取り組むべき経営課題の一つとして認知されています。

革新的技術の市場への普及期においては、スピードが圧倒的に重要。我々のようなベンチャー精神を持った企業、皆さまのように知的体力と意欲に満ち溢れた若い人にとって、圧倒的に有利な環境と言えるでしょう。

ぜひとも、この革命的変化を千載一遇の機会と捉え、RPAと人が協働する明るく楽しい未来を一緒に創っていきましょう。

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RPAホールディングス株式会社

Interviewee

高橋 知道 氏

たかはし・ともみち

RPAホールディングス株式会社

代表取締役

一橋大学卒業後、アンダーセン・コンサルティング(現・アクセンチュア)に入社。 ソフトバンク、スカイパーフェクTV!を経て、新規事業プロデュースを手掛けるオープンアソシエイツを設立。2016年、 オープンアソシエイツを持株会社へ移行。 2017年、RPAホールディングスに商号変更した。