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20代よ、「ありたい姿」を定め「修羅場」をくぐれ|ビジョンある経営者こそ世を変革する

将来経営者になりたい、社会に貢献したい、と考える20代が増えている。その中には明確なビジョンがある者も、カッコイイから、成長できるからというメリットを追求する者も様々だろう。そんな中、ビジョンこそが企業と経営者を成長させると語る二人の起業家がいた。彼らから20代に向けたメッセージをもらってみよう。

Jan, 15, 2019

エッグフォワード株式会社

徳谷 智史 氏

どう世を変えたいか。 それがあってこそ起業家だ

―経営者を目指す20代に対して、ビジョンある経営者お二人からメッセージをいただくことが今回のテーマです。

村上  ありがとうございます。最近私は若者の中で「起業がカジュアル化」していると感じることがあります。「就活に有利だから起業しました」と言っている学生もいたりして。大前提として、「自分はこういう社会変革に貢献するんだ」という強い信念があってこそ、起業家として成功できると思うんですよ。自分のメリットだけを追い求めて10年、20年と会社を存続できるほど甘い世界ではないですよね。

徳谷  同感です。実際、「なぜこんな大変なことをやっているんだろう?」と思うフェーズがどんな経営者にもあると思います。そんなとき、「稼ぎたいから」「カッコいいから」といった理由だけで自分を鼓舞し続けるのは難しい。

村上  苦しい時期を乗り越えるためにも「なぜ、やるのか?」というミッションは大事ですよね。私は大学1年生のときにリブセンスを設立したんですけど、この社名は、「生きる意味」です。子どものころ、よく「人はなぜ生きているんだろう?」と考えていました。当時の私は釣りが趣味で、釣った魚を両親にさばいて食べてもらうととても喜んでくれたんです。その姿を見て「周りの人を幸せにすることこそ、人間にとって最も幸せなことなんだ」と気付きました。それが、生きる意味に繋がると考えています。

徳谷  私は「人は何歳でも変われる・成長できる」という想いから、可能性の象徴であるエッグ(たまご)が、どんどん前進していく姿をイメージして「エッグフォワード」という社名をつけました。同時に、未だない「新しい価値」(たまご)を創り出し、世の中を前向きに変えたいという意味も込めています。

実は私は、親が転勤族だったため、新しい環境に馴染めないことも多かったんです。しかしある先生との出会いで自分が変わったり、学生時代に、途上国を放浪し現地の人や文化に触れ、自分が〝変わる〞瞬間を体験したりすることもありました。逆に本当はもっともっといろんな可能性を発揮できたはずの仲間が、若くして亡くなったこともありました。それらが原体験となって、「人が変われるような新しい機会を創る」ということが私の信念になっています。電車で通勤する方の疲れた眼を見るとわかると思いますが、今の日本社会は物質的には一定恵まれているけれど、ほとんどの人が可能性を活かしきれていないと思っています。

村上  なるほど。徳谷さんは新卒で戦略コンサルティングファームに入社していますよね。そこでは実現したいことが叶わなかったのですか?

徳谷  そうですね。就職活動時にも「企業に新しい機会を提供すれば、そこに携わる人、もっといえば世の中が変わるのではないか」と考え、戦略コンサルに入社しました。

しかし実際に仕事をしてみると、1つのコンサルティングファームの中で提供できるソリューションの幅には限度がありました。とてもやりがいはありますが、「人を変える」ことまでは実現不可能だったんです。

戦略コンサルの役目は、クライアントから依頼のあったテーマに応えることであって、そこにいる「人」を変えることではないため、当然と言えば当然です。でも私は、本当に社会や世の中にとって価値のあることは、そこにいる人の可能性を引き出し、すべての人が輝けるような機会を提供することだと信じていました。だからそのミッションを実現させるためにコンサルを退職し、エッグフォワードを設立したんです。

村上  そうだったんですね。リブセンスでもこれまで数名のコンサル出身者を採用していますが、「自分が心血込めて関わった事業に最後まで添い遂げきれない」という理由でコンサルから事業会社に転身している方も多い印象があります。

徳谷  その通りです。コンサルティング自体は第三者としてクライアントの事業に寄り添う重要な仕事ではあるのですが、私はそれだけだと人も世の中も本質的には変わらないと感じました。だからエッグフォワードでは、一般的なコンサルのように戦略を提案するだけでなく、ヒトを変え、企業を根本から変えることにコミットする。いわば「企業変革」を請け負っています。

企業を変革しようとするとほとんどの場合、人材育成や人材配置などのヒトに関わる問題にぶつかるため、戦略実行と人材開発の両方を支援する機会が多くなっています。

村上  それは理にかなっていますね。私も経営をしていて思いますが、やはり戦略だけ描いても組織は変わっていきません。最終的には組織の構成員であるメンバーの行動や考え方が変わっていかなければ、その集団である組織全体を変えていくことは難しい。ただ、人材開発といっても組織ごとにフィットした手法が異なりますし、適材適所が大切だと考えます。パッケージのセミナーや研修に参加したけど全く効果がなかった、というのはよく聞く話です。

徳谷  私もよくそういう失敗談をよく耳にします。長年コンサルを経験してきてそういうことを理解しているからこそ、エッグフォワードではクライアントのカルチャーや組織の状況に合わせ、1社ごとにフルカスタマイズで人材開発を行うようにしているんです。

我々が提案した戦略の実現に向けて、組織開発や人材育成計画を考案し、実行まで一気通貫して行います。自分たちが提案した戦略が本当に実現されるまでクライアントと一緒に伴走し、真の意味で「企業が変わる」まで共同作業する、ということです。

その結果、今では、日本の各業界のトップ企業や、外資系戦略ファームやリクルートなどの「人材輩出企業」の人材育成・開発コンサルティングまでも行うようになりました。

苦しいときのための 「ミッション」

村上  すごい。大手コンサルのコンサルを行うベンチャーは、たしかに私も聞いたことがありません。世の中にあまりない事業内容ですし、創業期は相当苦労したんじゃないですか?高い理想をビジネスとして形にすることって本当に難しいし、最初のうまくいかない頃ってものすごく凹むじゃないですか(笑)。今順調に業績を伸ばしていらっしゃるのが素晴らしいですね。

リブセンスも創業期はメンバー含めほぼ無給でしたが、さすがに申し訳なくなってSEOのコンサルティングを請け負っていた時期があったんです。給与は支払えるようになったけれど、なぜかワクワクしなかった。そんなとき、創業期の気持ちを思い出させてくれたのが「なぜ、やるのか?」を明記した「ミッション」でした。

徳谷  私も創業期に同じような経験をしています。創業していざ営業に行ってもただの1社も取引してくれないどころか、会って話を聞いてくれる企業すらほとんどいなかったんです。なぜなら、「実績」がないので。コンサル時代には、アジアオフィスの責任者もやっていたのに、「看板がなくなるとこんなものか…」って。情けなかったですよね。

創業期はほぼ無給でやっていましたが、資金繰りが厳しくなったときもありました。だけどそんなときでも支えとなったのが、村上さんと同じく、「なぜこの会社を創業したのか?」という想い、ミッションでした。今となっては、苦しいときこそミッションに立ち返ることが大切なのだと良い教訓になっています。

それに加えて、「働く上で大事にすべき4つの価値観」を4Cと名付け、私を含むメンバー全員が仕事したり議論したりする中で立ち戻るべき価値観として浸透させるようにもしています。中でも最も大事にしているのがCreaitive Valueで、常に、いまだ世にない、新しい価値を提供し続けることを大切にしています。

WHYを持て。それが当事者意識と熱量を生む

―経営者になるべく今どこかの企業で修行中の20代は何を意識して働くといいでしょうか?

村上  目先の給与や成果だけにとらわれず、向き合っている問題に対して当事者意識を持ち、「自分がなんとかしなければ」と行動することをオススメします。社会全体でみると、「数十年も経営に携わってきました」という50代・60代のプロ経営者のような方々には、知識や経験ではどうがんばっても20代・30代は勝てません。そうであるならば、執着心、行動量で勝つしかない。

私が知る限り、20代で突出した実績を残したり、経営メンバーに抜擢されたりする人材の共通点としては、「絶対にやりきる」という狂気にも似た覚悟を持っていることが挙げられると思っています。

徳谷  圧倒的な当事者意識が、うまくいくか・いかないかの命運を分けますよね。

村上  はい。まさにそういった意識の持ち方が、「三木谷曲線」でいうところの「最後の0.5%」を埋める「差」だと思うんです。「三木谷曲線」とは、楽天の三木谷社長の著書「成功の法則92ケ条」に出てくる法則のことで、人はみな99.5%くらいまでは同じように努力しているので、大きな差がつくのは、「残りの0.5%を努力できるかどうか」、また「最後の0.5%の粘りが大半の結果の差を産み出す」というグラフです。

私自身、創業当初、90日間必ず自宅のトイレ掃除をするという研修に取り組んだことがありました(笑)。毎日続けていると、見た目にはたいして汚れていないし、「もう掃除する必要ないかな」と思う日もあるんです。それでもしばらく続けた頃、ふと今まで見えていなかった部分に汚れがあることに気が付いて。「これが三木谷さんが言っていた、『もう終わりだと思ったさらにその先の0.5%の努力が、大きな成果の差を生む』ということか」と実感しました。

環境のせいにしたり、もう十分だろうと簡単に投げ出したりせず、「あと少しやれることがあるはず」と自責思考で努力し続ける姿勢が、突出した成果をあげる20代には必要だと思います。

徳谷  私がもし「経営陣に抜擢したい20代はどんな人ですか?」と問われたら、「なぜ自分がその事業をやりたいのか?」をしっかり考えている人、と答えます。

村上  経営を担う人材には「WHY」を突き詰めて考える力が必要だ、と言うことですね。

徳谷  その通りです。今のエッグフォワードには、戦略コンサルや大手企業でトップクラスの活躍をしていて、他の会社でも取り合いになるような優秀な人材が「エッグフォワードでしかできないこと」を実現するために集まってきてくれています。そういった「なぜ自分は今ここでがんばらないといけないのか?」を語れる信念を持った人は、当事者意識も必然的に強くなりますし、どんな苦しい状況でも諦めず踏ん張れる。だからこそ成果を出し続け、世の中を変える人材に育っていきます。

実際に今エッグフォワードに在籍中の20代若手メンバーでも、「なぜ自分がその仕事をやりたいか?」を明確に語れるメンバーには、一流企業のコンサルティングや新規事業開発など世の中に影響力のある大きな仕事を担っています。

村上  「なぜやるのか?」という部分ってエモーショナルな部分が絡んでくるので、突き詰めると科学的に整理できないところもありますよね。だから成功に与えるWHYのインパクトの度合いを理解しづらい。

徳谷  WHYは、チャレンジの成否を握る数値化できない重要指標ですよね。

村上  まさに。賢い20代は論理的に物事を考え過ぎだと思うんです。物事を相対化しようとしてしまう気持ちは理解できるのですが。最終的には、うまくいきそう、メリットがありそう、といった客観的な情報よりも、「とにかくやりたいんだ!」という絶対的な熱量が多い人のほうが、経営者や起業家を見ても、最終的にやりたいことを実現している気がします。

徳谷  コンサル出身なので、そのお話は痛いほどわかります。私の周囲を見渡しても、賢い人ほどキャリア選択でも新規事業の計画作りでも、「メリット・デメリット」を比較してどうするか決断する人が多い。しかし変化の激しい今の時代では、昨日までメリットが多いと思っていた選択肢が急にデメリットばかりの選択肢に変わることもあります。

だからこそ、世の中の一般的指標で捉えた「メリット・デメリット」ではなくて、そういう事実を凌駕する「熱量」で物事を判断する人の方が、5年・10年という長期的視点でみると 結果的に突出した成果をあげることが多くなると思っています。

20代の成長は 修羅場の数で決まる

―視点を変えて、お二人がいま20代に戻ったら何をしますか?

徳谷  それまでの人生とは全く違う環境に身を置いて、今まで会ったことがない人との接点を増やすために時間を使いますね。自分はこのままではダメなんだな、と痛感させられる機会を掴みに行き、「こんな人になりたい」と思える人にたくさん会いに行きます。

村上  「いかに自分が成長できる人と 出会えるか」が人間を大きく変えると。

徳谷  はい。私の好きな言葉で「Life begins at the end of your comfort zone.」という言葉があります。人の成長は自分のコンフォートゾーンを飛び出してから初めて始まるものです。20代のうちにコンフォートゾー ンから飛び出す体験をたくさん積み、修羅場を何度も経験することが急成長につながります。

今の環境を飛び出せ、というとハードルが高そうですけど、別に転職しろとかいうことではなく、今の会社で自分が本当にやりたいことを経営陣に提言したり、普段付き合う仲間を変えたりは今すぐできるはず。そういった簡単で今すぐ起こせる変化を取り入れることから始めればいいんです。

村上  私の場合は、やはり現在と同じように起業家になる道を選ぶと思います。そしてその出発点も昔と同じで、「自分が社会の中でどんなことを実現させたいか」に尽きますね。

「やりたいこと」は 行動した先に見つかる

―今やりたい事や、起業するテーマが見つからないという人はどうしたら良いでしょうか?

村上  見つかるまで、色んなことにチャレンジするしかありません。学生ならインターンでも留学でもいいし、社会人ならボランティアでも知り合いの会社のお手伝いでもいい。徳谷さんの言うとおり、とにかく今いる居心地が良い環境から抜け出して、異なる環境にチャレンジして全力で動けば、思わずのめりこんでしまうくらいやりたいことが見つかるはずです。

徳谷  とりあえず起業して自分を追い詰めるのも良いですし、自分より優秀な人が多い環境で、常に困難が伴う経験を積める場に身を置くのもありだと思います。

エッグフォワードにも将来経営者になりたい20代が ジョインしていますが、彼らがなぜエッグフォワードを選んだかには、先ほどのWHYはもちろん他にもいくつか理由があって。一つはプロフェッショナルな戦略ファーム以上のスキルや経験を得られること。もう一つは、コンサルでは普通体験できない、自社の新規事業立ち上げにも関われるから。実際、社内で今新規事業をリードしているのは20代です。

村上  これから更なる拡大期を迎えるエッグフォワード様ならではの魅力ですね。リブセンスの創業期もそうでしたが、組織が急拡大し、事業やチームの数が増えてくれば、必然的にリーダーの数もどんどん必要になってくるので、若い人にもチャンスが増えますよね。

徳谷  そうなんです。我々はまだ少数精鋭のため、私をはじめとした経営層とも近い距離で誰でも働けます。その上、コンサルティングするクライアントは、日本を代表する企業の中核層。イヤでも毎日コンフォートゾーンから逸脱させられる環境です。決して楽ではないですが、このような圧倒的成長環境で経験を積み、将来の経営層・新規事業を担う人材がどんどん出てくることが、今のエッグフォワードには必要なんです。

しかし、コンサルティング事業に留まるつもりは全くありません。ミッションに従い、いまだない価値を創り出し、人の可能性を実現しあう世界を創りたい。そのためには、クライアント個社の企業変革に留まらず、学校向けのプログラム開発支援等にも携わり、世の中全体へインパクトを広げていく。人の可能性を広げる「創発のインフラ」を生み出したいと強く思っています。

人生は無限じゃない。 やりたいことを 答えにする覚悟を持て。

―最後となりましたが、経営者・起業家を目指す20代の方にメッセージをお願いします。

村上  こうなりたい、という「想い」をもった20代が増えてほしいですね。行動と熟考を繰り返して、自分がどんな時に幸せを感じるのか、社会に対して何をしたいのか、ということをしっかり言語化してほしいです。

その土台ができたら、あとは「自分ならできる」と信じ込み、やりたいことを「答え」にしていくんだ、と覚悟を決めるだけ。その求める「答え」の線上に経営者・起業家という手段かつ選択肢があるのだと思います。経営者になるだけなら、登記さえすれば誰でもなれますから(笑)。

徳谷  おっしゃる通りです。20代にも、経営者になりたい人にも限定されませんが、「なぜ、何がしたいのか?」をしっかり持っていないと、「なんでこんなに頑張ってるんだっけ?」と我に返って虚無感を感じる瞬間が必ず訪れます。だから私からは、「自分に正直に、スピーディーに、小さな意思決定を繰り返そう」ということを伝えたいですね。当たり前すぎて忘れがちですが、人生は無限じゃないですから。

もちろん、怖いとか、周囲の目が気になるとか、できない理由なんて挙げようと思えばいくらでも挙げられます。だけど、村上さんもおっしゃる通り、これまでにできたか・できていないかなんてどうでもいいんです。ピュアな「想い」に従って、「ぬるま湯」から抜け出す決断と経験を、経営者を目指すような20代にはどんどん積んでいってもらいたいと思っています。

エッグフォワードについてもっと知りたい方はこちら

エッグフォワード株式会社

株式会社リブセンス

Interviewee

徳谷 智史 氏

とくや・さとし

エッグフォワード株式会社

代表取締役社長

企業変革請負人。組織・人財開発のプロフェッショナル。大手戦略コンサル入社後、アジアオフィス代表を経て、「世界唯一の人財開発企業」を目指し、エッグフォワードを設立。総合商社、メガバンク、戦略コンサル、リクルートグループなど、業界トップ企業数百社に人財・組織開発やマネジメント強化のコンサルティング・研修など幅広く手がける。近年は、先進各社の働き方改革、AI等を活用 したHR-Tech分野の取り組みや、高校・ 大学などの教育機関支援にも携わる。

Interviewee

村上 太一 氏

むらかみ・たいち

株式会社リブセンス

代表取締役社長

1986年、東京都生まれ。両祖父を経営者に持つ家庭に育ち、小学生時代から将来の夢は一貫して社長になること。 早稲田大学在学中、ビジネスプランコンテ スト優勝を機にリブセンスを創業。代表取締役社長に就任。 2011年に東証マザ ーズ上場(25歳1ヶ月)、翌年10月(25 歳11ヶ月)には東証一部に市場変更を 果たす(ともに史上最年少記録を更新)。