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苦手や不得意なことがある人こそが活躍する 多様性経営論

ビジネスソリューションとコミュニケーションデザインという二つの事業を軸に、創業以来18期連続で増収かつ黒字経営を続け、世界6カ国、13拠点、社員数300名を擁するにまで成長を遂げたオロ。同社を牽引してきた川田代表が、その成長を支える組織の創り方を語る―。

Jan, 26, 2017

株式会社オロ

川田 篤 氏

〝多様性〟こそが弱点を補い、強みを活かす組織を創る

―昨今、多様性(ダイバーシティ)という言葉が取り沙汰されますが、企業にとって〝多様性〟が重要なのはなぜでしょうか

グローバル化や女性の社会進出、LGBTなどさまざまな文脈がありますが、ここでは〝能力〟に着目してお話をしたいと思います。企業の競争力は資金力、技術力、ノウハウなど、さまざまな側面から考えることができますが、それらは全て〝人〟が何らかの能力を発揮したことの結果です。でも、残念ながらスーパーマンのように何でもできてしまう人は滅多にいませんよね。私もそうですが、多くの人が多かれ少なかれ弱点なり苦手なことを抱えています。だからこそ能力の多様性を前提として、個々人の弱点を補い合い、得意なことを組み合わせることで組織の成果を最大化することが企業にとって重要です。

―日本の学校教育では内申点やセンター試験など、幅広く何でもできる人を求める傾向がありますが、逆の発想ですね

そうですね、学校の試験は一人で解かなければなりませんが企業は皆で取り組めます。例えば、お客さまに高い価値を提供するために、今まで誰も解決できていない技術的問題を解決する必要があったとします。その場合、お客さまとのコミュニケーションは苦手でもいいので、特定の技術に誰よりも長けているエンジニアが活躍すべきです。一方で、その技術を使って今までにない規模にビジネスを拡大する際には、マーケティングに強みがある人の力が欠かせません。

〝オロらしい人〟を作らず、正解を一つに決めない

―多様性が活かされるためには、どのような組織を創っていく必要があるのでしょうか

活動指針が書かれたカード。全員が所持し目標や考え方を共有している。

管理能力など、特定の力だけが評価されるのではなく、それぞれが秀でている能力で評価される仕組みが必要です。多くの会社は、昇進というと管理職を意味しますが、オロでは特定のスキルに秀でたスペシャリストを、管理職と同等かそれ以上に評価する仕組みを導入しており、スペシャリストとマネージメントという二つのキャリアを選択できます。技術に秀でたエンジニアはスペシャリストとして活躍し続けていますし、ビジネスサイドの人でもセールスやマーケティングなど特定のスキルを活かしスペシャリストとして評価されることもあります。

―管理職的観点だけではなく、多様な観点から評価されるということですね

そうですね。採用の際にも「求める人物像」をあえてつくらず、社内でも〝オロらしい人〟といったイメージを持たないようにしています。〝唯一の正解〟が決まってしまうと、物差しが一つになり、結果的に多様性が抑圧されてしまう。テクノロジーの領域も同じで、社内にCTO(Chief Technology Officer、最高技術責任者)はいません。一つの課題を解決できる解は複数あるはずなのに、CTO一人の判断が常に優れていると考えると、お互いが強みを活かしあう機会が減ってしまうからです。

自分の強みを全力でぶつけ合える人が活躍する

―事業の拡大に伴って組織もさらに大きくなっていくかと思います。多様性の高い組織を拡大させていく際の課題とは何でしょうか

常に課題となるのは、人によって前提が異なるために「会話の行間(言葉にしない意図)」を読み間違えることです。例えば、オロでは営業、マーケティング、エンジニア、デザイナーとさまざまな職種のメンバーが一つの事業に関わっていますが、常識や前提が異なるため、言葉の行き違いから価値観の相違までさまざまなギャップがあります。さらに最近では、中国、台湾、シンガポール、ベトナム、マレーシア、タイといった海外の拠点が増えているので、拠点間での考え方や文化の違いにも直面しています。

―職種ごと、国ごとに本当にさまざまなギャップがありそうですね。こうしたギャップをどう乗り越えていくのでしょう

簡単な近道はありません。ギャップを埋めるためにあらかじめ正解を一つに決め、お互い衝突を避けては多様性が死んでしまいますし、お互いの強みが活かされません。ぶつかり合い、違いを理解し、お互いを尊重しながら皆で一つのものを創っていく、そのためには、一人ひとりが自分の得意分野や強みを持っていることが大切です。

このことに立ち戻れるように、オロの「活動指針」の中では、「常にナンバーワンを目指して」というメッセージを掲げています。胸を張って「任せてください」と言える得意分野をしっかり持つ。これこそが、弱みを補い合い、強みを活かし、皆で最高のものを創っていく方法なのではないでしょうか。これからも、苦手や不得意なことがあるからこそ、自信を持てる強みを身に付け、お互いを認め合う、そんな組織を実現し続けていきたいと思っています。

オロのロゴマークは創立10周年を機に掲げられたもので、たくさんの人を笑顔にしたいという想いが込められている。

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株式会社オロ

Interviewee

川田 篤 氏

かわた・あつし

株式会社オロ

代表取締役社長

1973年、北海道札幌生まれ。東京工業大学工学部卒業後、1999年に大学時代の友人(専務取締役 日野 靖久氏)と二人で有限会社オロを創業、代表取締役社長就任。2000年、株式会社に組織変更。