伊藤:
過去に多くの企業研究を進める中で、特に経営人材を輩出する会社には強く関心を持ってきました。マネジメントや起業に関心をもつ学生も年々増える中で、エス・エム・エス(以下、SMS)は、すでにいくつもの事業ラインを立ち上げ、実際に経営人材を社内外に輩出してきた点が非常に特徴的に映ると思っています。そこで今回は、その原動力となる取り組みや要求される人材水準などをお聞きしていきます。

事業ドメインは、世界的な社会問題を背景に拡大するグロースマーケット

伊藤:
少子高齢化がすでに社会問題となり、今後もますます深刻化していくであろうことはすでに指摘されてきています。しかし、これは視点を変えれば、ビジネスによって問題解決を行うチャンスも同時に大きくなることを意味しています。その中で、高齢社会に必須な医療・介護、そしてアクティブシニアという非常に有望な事業領域でビジネスを創ってきた御社は大変良いポジションを築いていると思います。改めて、事業ドメインの定め方、立ち上げる事業の選び方などをお聞かせいただけますでしょうか。

後藤:
SMSは「高齢社会×情報」というところに立ち位置をおいていますが、これ自体が今後の日本において非常に数少ない成長領域であると考えています。そもそも、先進国の中でも特に急速な高齢化が進展する日本では、従来にないサービスや商品に対するニーズが拡大し続けています。しかし、医療制度や介護制度といった保険制度が過去に整備されてきた社会背景もあり、政府主導での制度変更の影響を大きく受けるため、なかなか民間でビジネス化するのは難しい状況もありました。その一方で、サービスや商品に紐づいて消費者に必要とされる「情報」を扱うことに関しては、民間側がビジネスとして切り込んでいくことが大いに可能であり、かつ社会的ニーズも高まっています。そこでSMSは、「高齢社会の情報インフラとなる」ことをミッションに掲げて、医療・介護にアクティブシニアを加えた3領域を戦略的に選択しました。ミッション実現に向けて今後さらに領域を広げる可能性はあるものの、現時点ではこの3つの領域に絞ることで、顕在化しているニーズをほぼ取りこぼしなく事業展開を進められています。実際、設立から11年間で30にのぼる事業を立ち上げ、東証一部への上場も果たしてきました。

ミッションゆえに続々と生まれる新規事業。経営人材を多数輩出していく

後藤:
ただ、今後5年10年のスパンでは、必ずしもこれらの切り口だけで十分だとは思っていません。既存の医療や介護でカバーされていない領域、例えばヘルスケアや予防医療、さらには今後ますます増加するノンアクティブな高齢者層に対する価値提供なども視野に入れ、現時点での事業領域には固執せず柔軟に事業領域を広げたり、入れ替えていくことを考えています。
SMSの戦略ビジョンを説明する際、私はよくマンダラ図に似た図を使ってお話します。マンダラとは複数の要素(円を用いることが多い)がある秩序をもとに組み合わさって何かしらの世界観を表現する図ですので、この円の一つひとつがSMSの価値提供先を表すと考えます。医療であれば、患者、看護師、医師、病院などですね。各々に対してコミュニティや人材紹介、メディアなどのアプローチで価値提供のできる事業が立ち上がれば円の色を濃くし、提供価値の総量を可視化するのです。そもそもどのような円を用意するか、円と円の結びつきをどのようにプロデュースするか、高齢社会の情報インフラ産業は関連事業者まで含めると膨大な事業機会が広がっていき、SMSの事業領域は拡大し続け、新たな産業の創出につながります。その過程で、メンバーの挑戦機会は膨大に生み出されていきますし、それだけ経営人材を生み出していく必然性があるとも言えるでしょう。

伊藤:
「高齢社会の情報インフラとなる」というミッションゆえの必然性として、これからもビジネスがいくつも生まれてくるということですね。その結果として、事業ユニットを任せられる経営人材も次々と必要になってくると。では、社内でそういった人材を育成し増やしていくことや、仕事の任せ方に関してはどのようなお考えをもっていらっしゃいますか。

後藤:
30個ほど存在する事業の中には、まだシード段階のものもあれば、すでにマーケットでNo.1のシェアを獲得しているものもあります。ビジネスモデルや事業ステージが多様性をもって混在している状態です。だからこそ、個々人のスキル向上や拡張については、全ての事業領域に対して画一的な方法を採るのではなく、各々が携わる事業ステージに応じた手法を都度模索しています。
例えば、すでに強固なビジネスモデルを確立できている事業においては、明確なキャリアステップと各段階で身につけるべきスキルセットを定義し、きっちりと経験値を積み上げる仕組みを創っています。実際、すでにセールスやWebマーケティングといった高度な専門性を身につけた人材も徐々に育成できてきており、まさに事業を進める上での中核的な役割を任せています。特に新卒で入社し20代でマネジャーを務める社員も出てきており、新卒人材の活躍機会が大きくなりつつある環境であると自負しています。将来的には、20年、30年先も成長を続けるマーケットの環境を読みつつ、基幹となる事業をさらに盤石なものにし規模を拡大していくタイプの経営人材輩出を目指します。
一方で、ビジネスモデルもまだ未確立なシード段階にある事業では、組織レベル、個人レベルの双方で強い変化対応能力を求めます。0から1を生み出す、もしくは1から10へと拡大させることに特化した能力を磨く必要がありますし、そうした経験を積んで力をつけた人に事業責任者を任せます。

伊藤:
実際、すでに社内でも30人近くの事業責任者を育成されてきていますし、社外にも注目度の高い事業を行っている起業家も過去に輩出されていますよね。創業からこれだけ短期間の内に経営人材の育成・輩出に成功されてきたのは、国内を見渡しても稀有なことなのではないかと思います。

組織知を継承する新卒人材は、経営者の世代交代の一翼を担う

伊藤:
実は、以前から諸藤周平さん(前・SMS代表取締役社長)とはよくお話しをさせていただき、若い人に大きな期待を寄せていらっしゃる方だと感じてきました。SMSには中途人材でも優秀な方が続々と入社されている一方で、若手に期待する価値観・カルチャーはどのように形成されてきたのでしょうか。

後藤:
私たちは創業当初より、SMSを「100年続く企業にする」という強い意志をもって経営に臨んでいます。世界的な人口動態の変化を背景とし、マーケット自体に長期的な成長性が見込まれる中で、「高齢社会の情報インフラ」として事業を継続する限りは数十年単位で社会に必要とされる企業であり続ける可能性が十分にあると考えているのです。だからこそ、まさに諸藤が11年目で私にバトンを渡したように、およそ10年という一つの単位を目安として経営人材を入れ替えると同時に、これまで培ってきたSMSのアイデンティティとでも呼べるものの考え方やSMS流のビジネス創造手法、いわば組織知を継承していくことが必要です。キャリアのスタート時点から、まっさらな状態でこの経験値を吸収していける新卒人材であるからこそ100年のバトンをつなぐ有望な候補が出てくるはずだと考え、期待を寄せています。

伊藤:
実際、後藤さんが新卒採用時に注目しているポイントなどはありますか?人材イメージや、モデルケースがありましたらお聞かせください。

後藤:
経験の差よりも経験からどう感じるのかの差を重視しています。他人と異なった経験をしてきた人材というよりは、他人と同じ行動であったとしてもより深く本質を見極められる感度を持った人材に強く関心を持っています。学生起業していた人がここ数年の新卒入社組には毎年複数名いますが、起業経験そのものを評価しているわけではありません。起業経験や海外在住経験の有無などは表面的な話だと思っています。海外に留学していようが、地方から出て東京でひとり暮らしをしようが、自立した生活をひとりで送るという面では何の違いもありません。私が問うのは、そこに対して何を感じて何を学び、自分自身がいかに変化していったか、という点です。また起業に関しても、かつて投資銀行や商社、コンサルティングファームが人気を博したのと同じように、一種の流行に乗る形でやっているだけの人には魅力を感じません。
もちろん、人生の中での位置付けや目的を明確にするべく、自分の頭で考え続け、何かしら行動に移している人には大きな可能性がありますし、実際にどこに行っても活躍するポテンシャルがあると思います。今後、こういった人材とは一緒に仕事をしていきたいですし、「高齢社会の情報インフラ」となる事業を自分事として駆動していける、そんな方にはぜひSMSの門を叩いていただきたいと思います。