【1万字の本音】総合商社・伊藤忠OB訪問・完全版part2「面接の”都市伝説”」

伊藤忠のOB訪問を完全再現。いま日本で最もリアルで濃密な伊藤忠の中の話が聞けます。part1,3はこちら。

part1: 商社って意外とホワイト
part3:「ほぼ全員希望部署に配属」の真実

目次

  • 商社の社風の違い
  • もっと詳しく
  • 商社に内定したい
  • 都市伝説
  • 英語は重要?
  • 研修は寝てたほうがいい
  • OB訪問のコツ
  • 上記を踏まえて聞いてみよう

商社の社風の違い

ま、こんなかんじじゃないすかね、実際。よくOB訪問に来る就活生に聞かれたけど、あながち間違ってないですよ。




目の前に川があります。その先に宝があります。
各商社マンの行動は以下のとおり。

三菱商事:橋を作って渡る
三井物産:ヘリコプターで渡る
住友商事:商事が作った橋を渡る
伊藤忠商事:泳いで渡る
丸紅:お宝を見つけられない




もっと詳しく

だいたい商社の人はプライド高いすね。
財閥系はプライド高いです。
これ僕の主観なんでね、何ら客観性ないですよ。一般的にプライド高くてブランド志向の人が多いです。商社の中では、住友商事のほうが商売っ気があると言われてます。伊藤忠は、わりとリスクをとって財閥系にチャレンジしていく姿勢があると言われてて。丸紅もそうですね。伊藤忠と丸紅はルーツ一緒なんで。

とはいえ正直、同じ会社でも部署が変わったら別の会社なんで。あくまでも、
「ドラえもんってどんなロボットですか」
「丸いロボットです」
「うんまあそうですね」
と同じくらいのざっくりした共通点。

見た目も変わりますね。
例えば繊維だったら丸いドラえもんじゃないんですね。金髪のドラえもんなんですね。金髪でロン毛の兄ちゃん、たまにいます。食料だと、みんなおなかが出てます。ぼてっとした感じになってきます。すごい食料のサンプル食べさせてもらえるんで、嫌でも太ってくのが食料ですね。あと住生活とか新しい部署はジャケパンみたいなね、ちょっとおしゃれな感じ。あまりネクタイとかしない、さすがにTシャツはあまりいないですけど。資源とかはやっぱ古い産業なんで、オールバックとは言わないですけど、みんなこう黒のスーツを身にまとってビシっと決めたような、THEサラリーマンみたいな感じ。

もはや外見も変わってくるんですね、言ってみれば別の会社なんです。複数の事業部があって、その下に数十社子会社があるんで、文化もクソもへったくれもないってのが実情。関わる国も違えば、儲け方も違うし。

強いて言えば給料とか制度は会社ごとで明確に違う。その辺はわかりやすく比較できると思います。定性的な情報を比較するな、決算情報とかを比較する方がいい、って僕は言ってます。

新卒採用・就活全般において定性情報、この辺がいいらしいとか、就活生が作った就職活動ランキングとか、全く意味のない指標を当てにしないで。定量情報とか、1次情報、ファクトとかを集めていって、自分で考えるって癖をつけたほうがいいよ。

商社に内定したい

僕に関して言えば、就活のとき、会社のカラーによってキャラクターとか変えてないです。商社であればどこでもいいっすって言ってたので、そんなことしてないです。

えっと、ここすごく大事ですね、人の懐に入る力。なんか先生になった気分。
基本的に、新しいものを作るにしても商売を続けるにしても、人とのつながりが非常に大事な商売なので、ここが求められます。

総合商社では、わりと、年度の高いおっちゃんおばちゃんと仕事するんですよ。たいがいが。特に古い産業であれば昼間っから酒を飲んでる人とか。彼らとビジネスを回すために何をするかというと、この人にかわいがられないといけないんですよね。そういった中で、どのタイミングでどう出るべきかといった対人交渉力を身につけていく必要がある。
まあ基本的にはかわいがられる系の人が一番使えますね、素直で明るくて元気な子です、超簡単に言うと。おっちゃんに「まあしょうがねえなあ」と思わせられる人だといいので、そういう人だとうまくいきます。

なんでかって言うと、新しいもの作らないんで。新しいもの作ってもらう仕事なんで。調整力ね。商社の本質的な仕事ってオーガナイザーなんですよ。ありとあらゆるとこで案件自体を調整する、オーガナイズする力が求められます。
あとは、それを長時間労働で回すだけの体力。ぶっちゃけ体力がベースにあるってことが一番大事だと思ってるんです、働いてく上で。入った後に、その人がその仕事をやりきれるかどうかが体力。体力ってのは、精神的なタフネスさもそうし、肉体的なタフネスさもそうだし、両方ですね。

商社の中でいっぱい精神病んだ人いますよ。いわゆるメンタルヘルスに行って会社来れない人とかいっぱいいますよ。はい暗くなったー(笑)

都市伝説

都市伝説って知ってます?
商社の面接で、投資と貿易のどちらがやりたいかという質問に対して、「貿易と答えるべきだ」っていう。
先輩は、「都市伝説じゃない」って言ってましたね。商社としては、実業をやっているという自負の塊の人たちだからこそだと。

英語は重要?

大丈夫です、僕TOEICの点数ゼロでした。受けてなかったんですよ、単純に。
具体例で言うと伊藤忠だとTOEIC600だと出張行けて、700だと海外行けるんですよ。ま普通じゃないですか。伊藤忠は結構ハードル低いですね。物産は800かな?出張要件とか配属要件とかあるんですけど、満たしてないやつはいっぱいいます、入社の時は。入ってから新卒採用研修とかでなんとかする。

研修は寝てたほうがいい

伊藤忠の新卒採用研修は山登ります。みんなで楽しく登山します。総合職全員で滋賀で山登って自炊して。なんで滋賀かっていうと伊藤忠の記念館があるんで、そこでみんなでワイワイきゃっきゃしてから登るんです。

研修はまあ手厚いっちゃ手厚いのかな。配属する前に1カ月間みんなでしっかりやります。電話研修、マナー研修みたいなもの。その後、計数管理、事業管理、決算書の読み方とか。新入社員研修はやりたくもないのに、みんな寝てる研修をなぜか受けるんですよ。大概の奴らは、寝て、夜合コン行くっていう、1カ月間。

研修ないとやばいって言う人いるじゃないですか。研修ないと不安です、社会人なったことないし、みたいな。電話とか名刺の交換とかマジでやんなくていいから。

ぼく大学の時にやってたバイト、体育会だったんで時間なくて、風呂掃除と皿洗いだけです。接客経験とかゼロ。よかった、電話の研修ある、名刺の研修ある、って思ってたんですね。それが、入社3日目でインフルエンザになったんですよ。ダサいですけど。見事にそこだけ受けなかったのね。もう配属初日マジビビリ。で、ある日電話出たんですよ。めっちゃしゃべれないんですよ。先輩が激怒。でも2日で出来るようになりました。誰でもできる、やりゃできるって話。わざわざ研修でやるようなことじゃない。

名刺交換も、やったことないから分かんないんすよ。
1回目(※編集部注:何やら挙動不審な動きで名刺を渡す)。
2回目(※よどみない所作)。
もう一発でできる。それぐらい研修意味ないです。ぶっちゃけ大手でやる研修意味ないです、寝てたほうがいいです。僕からのメッセージ。

OB訪問のコツ

OB訪問行ったとき、基本的に皆さん、すごい人なんだってバイアスが絶対かかるんで、とっぱらって、こいつ大したことないなと思って聞いてください。大した事なさそうに話します。商社マンて基本的に口がうまいし、やってる事自体はデカいしすごそうなんで、デカそうに話すのは簡単なんです。自分が日々やってることはこんなつまんないんだけど、せっかくだし夢見せてやろうと思って面白くかっこよく話すか。本当に大したことやってなくて、合コンの話ばっかするか、そのどっちかです。ほんとに、ほんとにどっちか。

どうせ昼間寝て、トイレで寝て酔いを覚まして、夜合コン行ってんだろみたいな目で見てあげると、健全に話が聞けます。これほんとですよ。

上記を踏まえて聞いてみよう

僕、新卒採用2年目で3桁億円の買収案件やってるんですよ。これすごくない?そのレベルの買収なんてなかなかないんで、ホントすごいでしょ。デューデリジェンスって言う、企業の買収先の情報を集める時間があるんですけど、そこにおいて、僕、なんとね、企業の情報全部見られるんですよ!そこで何をやったかというと、エクセルファイル開いてCtrl+Pを押してEnterすると、印刷機から紙が出てくるんですよ。出てきた紙を自分のデスクの上にぽんとおいて、ファイリングするんですよ。これ一日中やってるんですよ。すごくない?3桁億円の買収に関わった男。
まあ半分ネタですけどね。

例えば、事業領域において、他の事業を侵犯しちゃいけないんですよ。
うちの部署である******(家庭用の電気小物)を扱いたいかったんですけど、すでにBtoCの小売で日用雑貨扱ってる部署があったんですよね。そこにお伺い立てて、うちで扱っていいですかって聞くのに3カ月。今の時代に、3カ月って、超長いからね。その間に世の中のトレンド超変わるからね。3カ月かけないと物事が前に進まないっていうスピード。

投資資料作り。投資検討用のパワポ資料作るとか、かっこいい仕事に見えるでしょ。やってることリアルに言うと、10年間、データとしてパソコン上に誰も残してなかったから、書庫から10年分の紙のファイル引っ張ってきて、この紙を横において、エクセルに転記してた仕事です。商社マンがやる仕事じゃねーみたいな。つまんなくは全くなかったですけど。

「トレード」も。モノの売り買いやってるみたいじゃないですか。実際には、熟練したね、契約社員とか派遣社員の人がいっぱいいるんですよ。もう40歳くらいの、契約社員なんだけど、社内の誰よりもトレードの事知ってるみたいな人がいるんですね。社内にいっぱい、あらゆる部署に。たまにトラブルがおこって、取引先から電話がかかってきたときに「すみません!」って言う役がトレード。あと、契約書がまわってくるんで、契約書の判を回してくるみたいな仕事ですね。

繊維とか食料の人にOB訪問いくと、めっちゃ「デリバリー」って言います。デリバリーって言うとかっこよさそうでしょ。うわデリバリーやってんだみたいな。何やってるかって言うと、見積書と契約書で、見積書の一言一句間違ってないかチェックしてる人です。株式会社なになにの、ここ文字間違ってないかとか、見積書と注文書で点が間違ってないかとかゼロが間違ってないかとかコンマ間違ってないかとか商品名の英語が間違ってないかとか全部チェックして、オッケーって言ってまわすやつ。それデリバリー。究極ね。まあこれだけじゃないけど、めっちゃこれに時間取られるんです。これ4年間やります。

これは笑い話なんですけど、ある英語の案件で、打ち合わせ行って何も分かんないんで、iPhoneに録音して帰るって仕事してました。

海外新規事業担当のとき。向こうがやっぱ時差あるんで定例が朝7時とか8時で、電話会議して。眠いんですけど、どうせ何も進まないんで、とりあえず聞いとくみたいな。案件自体は子会社さんが全部やってくれるんで、でも担当だから行かなくちゃいけなくて。海外の担当者が子会社の担当者をめっちゃ怒ってるんですね、そこで小さくなって待ってるだけ。子会社の子会社と折衝してたら、3カ月なんてあっという間です。結果、新規事業とか生まれないわけです。他のサービスとかどんどん立ち上がるし。それが総合商社です。

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