全日本空輸(ANA)の特徴・企業研究レポート

目次

  • 全日本空輸(ANA)の特徴
  • 主な事業
  • これまで事業の歩み
  • 今後の経営戦略
  • 全日本空輸(ANA)や、出身者による著書

全日本空輸(ANA)の特徴

日本を代表する航空事業会社として、国内線の旅客数シェアNo.1を誇るANA。2015年現在は255機の航空機を所有し、日本で唯一SKYTRAX社より世界最高評価の「5スター」を3年連続で獲得しています。航空会社連合であるスターアライアンスのメンバーです。

売上高における航空事業の割合は72.9%に及んでいます。燃油費の高騰などもあり2014年の業績を大きく落としましたが、それ以降は回復。ANAは2016年3月期決算で、国際線旅客事業の好調を中心に、売上高、営業利益、経常利益で過去最高を記録しました。国際線旅客数でも、攻めの姿勢で初めてJALを上回る結果となっています。一方、国内線は座席数を減らしながらも搭乗率を上げる堅実な戦略で、収入をあげています。

北海道のエアドゥ、宮崎のソラシドエア、福岡スターフライヤーなど、各国内航空会社と提携してコードシェアを実施。また、LCCブランドとしてバニラ・エアとPeah Aviationをグループに持っており、訪日客需要への対応を強めています。

主な事業

航空事業

全日空、バニラエア、Peachなど

航空関連事業

空港地上支援や、整備、貨物・物流、コンタクトセンター、ITシステムなど

旅行事業

旅行会社、法人、個人向けの旅行商品販売や、自社企画の訪日旅行事業・旅行積立商品など

商社事業

リテールカンパニー(店舗運営、機内販売ほか)、食品カンパニー、航空・電子カンパニー、生活産業・メディアカンパニー(客室用品や、機内の広告・メディア事業)

これまで事業の歩み

ANAの歴史は、第2次世界対戦直後にまで遡ります。終戦後、GHQによって日本国籍の航空機の運行は停止されていましたが、1952年に解除されたことで、日本ヘリコプター輸送株式会社が設立されました。当初は役員12名、社員16名の非常に小さな企業でした。1953年には貨物航空事業、1954年には旅客航空事業も開始し、本格的にビジネスを始めていきます。1957年に、社名を全日本空輸に変更しました。

国内航空輸送を一本化するという運輸省による方針もあり、1958年極東航空株式会社と合併、1963年藤田航空株式会社の吸収合併が行われ、その規模を拡大していきました。

設立後初めての人身事故は、1958年の下田沖墜落事故。乗客乗員合わせて33名が全員死亡し、経営にも大打撃を受けますが、JALからの援助と業務提携を通じて再建を図っていきます。

初の国際線運行(東京-香港間)が始まったのは1971年。1972年に東証一部上場、1978年にはフランクフルト証券取引所に上場、1991年ロンドン証券取引所上場、1999年航空連合スター アライアンスに加盟など、その勢いは世界へと拡大していきます。

しかし、2001年のアメリカ同時多発テロ事件や、2003~2004円のSARS蔓延などにより、世界規模で航空需要が落ち込み業績が低迷。リストラを行うことを条件に、日本政策投資銀行から2回の無利子融資を受けています。結果、2003年は黒字を達成しました。

2002年には民事再生法適用を申請し経営破綻した株式会社AIRDOを支援する形で、再建に協力、現在は実質的にANAの傘下としています。2011年には関西を拠点とするA&F・Aviation株式会社(現 Peach Aviation株式会社)を設立、2011年8月にはエアアジア・ジャパン株式会社(現 バニラ・エア株式会社)を設立するなど、LCCビジネスにも進出していきます。

2013年4月には、イギリスのスカイトラックス社が運営する「エアライン・スター・ランキング」で日本の航空会社として初めて、世界で7社目として5つ星を獲得しました。同年、アメリカでパイロット訓練事業を手掛けているパンナムホールディングスを137億円で買収します。

2014年には、これまで契約社員採用であった客室乗務員を正社員化。2015年超大型機の導入によって経営破綻が確定したLCCスカイマークへの出資を行うなど、近年は比較的ダイナミックに事業拡大を進めています。

今後の経営戦略

事業としては圧倒的に航空事業に依存しているために、近年の燃料価格高騰などで大きな影響を受けてしまいました。そのため、既存事業の強化・コスト削減に加え、ノンエア事業の拡大も含めて多様化を目指しています。

航空事業では、少子高齢化や生産年齢人口の減少により日本国内市場は成熟しつつあることを理解しつつ、2020年の東京オリンピック・パラリンピックを踏まえた国際的な航空需要をとらえたグローバル市場の発展を見込んでいます。

例えば、国際線では以下の様な戦略が挙げられています。

  • 羽田空港国際線新枠の活用により中長期的に有望な都市への就航を検討する
  • 16年度に国際線の生産量(座席数×運航距離)を国内線と同水準にする
  • アジアでネットワークの相乗効果が期待できる複数の航空会社などへの出資を検討する

国内線については、需要に合わせたサイズの機体を飛ばす「ピタッとフリート」モデルの投入による効率化を2016年から開始。さらに、オリンピック時の訪日外国人向け需要を意識し、バニラやPeachを通じたLCCの成長を促進させていきます。

また、ノンエア事業では、アジア地域のパイロット訓練や航空機整備事業(MRO)などのビジネス育成が計画されています。実際に米国のパイロット訓練企業パンナムの買収や、タイ バンコクでの操縦士訓練会社設立など、新しい取り組みが始まりつつあります。

全日本空輸(ANA)や、出身者による著書