三菱商事の事業内容/経営戦略

目次

  • 三菱商事の特徴
  • 事業グループにおけるプロジェクト事例
  • これまでの事業の歩み
  • 今後の経営戦略
  • 三菱商事や、出身者による著書

三菱商事の特徴

日本の総合商社として圧倒的な知名度を誇る三菱商事グループは、600社を超える連結対象会社と共にビジネスを展開しています。グループ全体の従業員数は約7万2000人、90カ国200以上の拠点で活動する巨大グローバル企業です。

全世界に広がるネットワークを通じ、エネルギー・金属・機械・化学品・生活産業関連の多種多様な製品の流通・売買・製造や、資源開発、インフラ関連事業、金融事業、新エネルギー・環境分野等における新しいビジネスモデルや新技術の事業化などを取り扱っています。

三菱商事本体では、事業内容を8つのグループに分けています。その中でも生活産業グループにおける従業員数が他セクターに比べ多く、従業員全体の16%ほどが在籍しています。2015年度の利益は、上から順に生活産業、機械、新産業金融事業、地球環境・インフラ事業、エネルギー事業(非資源)、エネルギー事業(資源)、金属となっています。

2016年3月期は連結最終損益が1500億円の赤字となり、60年余りの歴史の中で初の赤字転落となりました。チリの銅事業の減損2800億円が大きく響き、次いで豪州のLNG事業の減損、中国経済減速の影響を大きく受けたものとなります。「資源商社」とも言われるほど資源で過去最高益を出していましたが、ここに来てその成長は頭打ちとなっています。

資源関連事業は大規模リストラや撤退などの重要な意志決定が難しいビジネスです。そのため、ある程度中長期的なポートフォリオの見直しや、従来の「事業投資型」から事業のライフサイクルを踏まえた「事業経営型」へのシフトを図っています。

事業グループにおけるプロジェクト事例

生活産業グループ

  • マーケティング事業、ポイント・決済関連サービス事業(Pontaなど)
  • 消費者向け各種商材・サービスの開発・流通
  • 水産物の生産・調達・加工・販売
  • 穀物・飼料・食品原料・住宅資材に関連する原材料の生産・集荷・製造・加工・販売事業

地球環境・インフラ事業グループ

  • 三菱商事パワー(国内発電事業、太陽光/火力発電)
  • Diamond GeneratingEurope(太陽光/太陽熱/風力/ガス)
  • マンダレー国際空港建設

新産業金融事業グループ

  • 不動産ファンド関連事業
  • 国内外総合リース事業(航空機リースなど含む)
  • 大規模都市開発事業
  • 総合物流事業

エネルギー事業グループ

  • コートジボワール炭鉱(原油・天然ガス)
  • 東南アジア諸国におけるLNG関連事業

ビジネスサービス部門

  • デジタルビジネス開発
  • MCデータプラス(企業向けデータ活用プラットフォームサービス)
  • 日本タタ・コンサルタンシー・サービシズ(ITサービス・コンサルティング業務)

金属グループ

  • モザンピークにおけるアルミの探査・探鉱・開発プロジェクト
  • 日本のフルヤ金属における工業用貴金属製品の製造
  • メタルワンによる金属の加工・流通販売など

化学品グループ

  • タイにおける可塑剤・接着剤・ホルマリンの製造販売
  • 肥料市場・農業現場における技術開発と普及
  • バイオ医薬品の受託製造事業
  • フリーズドライ食品、醸造調味料や水産エキスの製造

機械グループ

  • 工作機械、農業機械、建設機械、鉱山機械の販売
  • 衛星画像データ処理・加工・販売
  • 自動車輸出(完成車・組立部品・補用部品)

これまでの事業の歩み

日本で初めての株式会社と言われる、坂本龍馬の海援隊が後に岩崎弥太郎に受け継がれ生まれた九十九商会が、三菱商事の発端となります。現在の三菱商事の経営理念「三綱領」は、4代目社長の岩崎小弥太が確立したものです。

1918年、第一次次世界大戦でビジネス上の成功を収めたため、三菱財閥から商社部門が独立し、三菱商事としてスタートします。満州事変から第二次世界大戦まで事業の拡大を続けるも、GHQの財閥解体政策のために三菱商事は解散。財閥自体が174の会社に分裂することになります。

1954年、再合同する形で総合商社・三菱商事が新発足。商社による海外投資も極めて稀だった1970年頃より、資源開発への直接投資を開始し、ブルネイでのLNG開発事業や、メキシコの塩田事業などグローバル展開を推進しました。1989年には、ロンドン証券取引所に上場しています。

近年では、オンサイト発電事業、三菱商事と双日の鉄鋼製品事業部門が独立したメタルワンの設立、都市商業施設ビジネスの推進などが実施されてきました。

2007年から、社内新規事業を専門に手掛けるイノベーション事業グループ・新産業金融事業グループを新設。ローソンの新浪氏やSoup Stock Tokyoの遠山氏など、40代で抜きん出るメンバーがではじめます。

三菱商事出身の著名人には、以下の様な人物がいます。

新浪剛史
ローソン代表取締役社長兼CEO、サントリーホールディングス代表取締役社長
遠山正道
株式会社スマイルズ代表取締役社長(三菱商事初の社内ベンチャー、後にMBO)
安達保
マッキンゼーパートナー、カーライル・グループ日本代表
石坂泰章
サザビーズジャパン代表取締役社長
岡島悦子
株式会社プロノバ代表取締役社長、アステラス製薬株式会社、株式会社丸井グループほか社外取締役多数
堀紘一
ドリームインキュベータ代表取締役会長
鳩山玲人
株式会社サンリオ常務取締役
内田陽介
みんなのウェディング代表取締役社長兼CEO

今後の経営戦略

2014年度時点では4000億円の黒字を出したものの、2015年度においては1500億円の赤字。三菱商事にとっては創業以来初の赤字となりました。資源分野に収益を頼っていた部分が多く、オーストラリアでの液化天然ガス事業、チリの銅鉱山開発への投資が資源安によって一時的に裏目に出た結果となっています。

これを受け、2018年に向けた新たな経営戦略を発表。経済状況に対応してキャッシュフロー重視の戦略に転換する他、安定した利益をあげるため非資源分野を中心としたポートフォリオの多角化を図っています。これまでの事業投資型ビジネスではなく「事業経営」へのシフトを目標にしており、これまで以上に投資先事業への関与を強めていく方針です。

また、事業には環境の変化によって常に「成長→安定→衰退」といったようなライフサイクルが存在していることを念頭に、入れ替えの促進が計画されています。

自動車、食糧、食品流通、電力、ライフサイエンスなどの事業をさらに伸ばすとともに、北米シェールガスの川下展開、金融事業のアセットマネジメントへのシフトなどが動き始めており、これから総合商社としての強さを非資源分野においても発揮できるかが企業の命運を握っているといえるでしょう。

三菱商事や、出身者による著書