電通の事業内容/経営戦略

目次

  • 電通の特徴
  • プロモーション事例
  • これまでの事業の歩み
  • 今後の経営戦略
  • 電通出身の著名人
  • 電通に関連する書籍

電通の特徴

米国、中国に次ぐ世界第3位の広告市場である日本において、最大の売上を誇る電通。クライアント数は約11,000社・150カ国弱に及び、2015年には広告業界で世界5位(総売上約6.8兆円)規模です。多様なクライアントと長期的な関係を維持していることが特徴的で、企業だけでなく政党や官公庁などもクライアントとして抱えています。日本における広告市場の1/4のシェアを確保しており、特にテレビ業界では37.6%のシェアとかなり高くなっています。これは、高額なCM枠を多く押さえているためです。

電通は、事業のフィールドを、大きく7分野に分けています。

  • マーケティング
  • メディア
  • コンテンツ
  • クリエーティブ
  • プロモーション
  • PR
  • グローバル・ビジネス

2013年には売上高総利益では広告業界の世界8位にあった「英国・イージスグループ」の買収を完了し、海外本社「電通イージス・ネットワーク社(Dentsu Aegis Network Ltd.)」を設立。海外事業売上比率は15%(2012年度)から54%(2015年度)まで圧倒的に成長しています。

一方、国内事業は数%成長にとどまっており、日本という成熟市場において苦戦しているといって良いでしょう。そんな低迷しつつある国内事業の中で、大きな躍進を遂げているのがデジタルマーケティング分野です。統合的なサービス提供を目的に2016年7月に株式会社電通デジタルを設立。エクスペリエンシャルマーケティング、ブランド・コマース、CRM、データ・アナリティクス、コンテンツマーケティング、モバイル分野でのM&Aも加速し、成長機会を確実に獲得するための施策が進んでいます。

訪日外国人向けのインバウンドマーケティングの強化にも力を入れており、2016年にリクルートホールディングスとの協業を開始しました。

プロモーション事例

エンターテインメント分野では、「天空の城ラピュタ」「もののけ姫」「崖の上のポニョ」など、スタジオジブリ作品のプロモーションを手掛ける他、近年では「進撃の巨人」を手がけ成功を収めています。少し変わったものでは、人気番組「SASUKE」の番組名を「NinjaWarrior」として欧州で企画・配信するといった、コンテンツの海外輸出にも関わっています。

オリンピック・パラリンピック、ワールドカップ、世界陸上、世界水泳といったワールドスポーツイベントのプロモーションも手がけており、FIFAワールドカップのモロッコ大会は運営責任を担いました。

その他、近年で比較的有名なプロジェクトは以下のとおりです。

  • マツコロイド
  • 「そうだ 京都、行こう」
  • ポカリスエット
  • 富士山の世界遺産登録プロジェクト
  • 東京防災ブック制作
  • ポン・デ・ライオン
  • 角ハイボール
  • 鼻セレブ
  • ワールド・ベースボール・クラシック

これまでの事業の歩み

1901年、日清戦争の従軍記者の経験から「不偏不党の報道」を志した創始者・光永星郎により、広告とニュースを新聞社に提供する日本広告株式会社・電報通信社を設立しました。

1931年、満州事変時の国策により、電通は通信事業と決別。これ以降、広告専業の企業として成長していくこととなります。終戦後の1947年に社長に就任したのが、「鬼十則」を作った吉田秀雄。広告取引の透明化、近代化、民間放送の実現、PR、マーケティング、AE制の導入(広告主別担当責任者制)、クリエーティブの向上、広告関連団体の組織化、広告界の国際化と、電通は様々な手を打ち出していきました。

鬼十則
1. 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
2. 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
3. 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
4. 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
5. 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
6. 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
7. 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
8. 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
9. 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
10. 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。

1964年の「東京オリンピック」における、テレビのカラー生中継や新聞の大キャンペーンは、メディア自体の価値を高めるきっかけになりました。これ以降、電通は国内の大規模イベントから国際的なイベント(オリンピック、ワールドカップ、WBC、博覧会など)まで、企画・運営を担うようになります。

2001年には創立100周年を迎え、東証一部上場を果たしました。しかし、2009年にはサブプライムローンに端を発する世界金融危機もあり、創業初の赤字を計上してしまいました。

これまで50年以上海外戦略で大きな成果を出せなかった電通は、2000年以降M&A戦略へと舵を取りました。2012年では3社だったクロスボーダーM&A案件は、13年は12社、14年15社、15年21社と年々加速しています。

2013年には売上高総利益では広告業界の世界8位にあった、イギリスのイージスグループを約4000億円で買収。海外本社として電通イージス・ネットワーク社(Dentsu Aegis Network Ltd.)を設立し、世界で通用する広告会社、エージェンシーとして成長するための起点を作りました。

今後の経営戦略

13年度に中期経営計画「Dentsu2017 and Beyond」を打ち上げました。この計画の中心として、グローバルポートフォリオの多極化、デジタル領域の進化と拡大、ビジネスプロセスの革新と収益性向上、コア・コンピタンスである日本市場でのさらなる事業基盤強化を明言しています。

2017年度に向けた具体的な経営における数値目標(オーガニック成長指数・純利益率・デジタル領域構成比・オペレーティングマージンなど)を2013年・2014年において順調にクリア。今後も海外事業への拡大を年平均において+3~5%ほどの水準で行うことを目標とし、特にデジタル領域での海外企業買収を進めています。海外デジタルメディア企業(Fetch Media Limited. やRocket Interactive, Inc. など)の買収はその一例です。

国内事業に関しては、e-コマースにおける事業の取り組みを強化。また、2020年に行われる東京オリンピックに向けた広告関連から得られる収入として1500億円を見込んでいます。

電通出身の著名人

安倍 昭恵
内閣総理大臣夫人
佐藤 雅彦
メディアクリエイター
佐々木 宏
クリエイティブディレクター
大宮 エリー
マルチクリエーター
権八 成裕
CMプランナー
荒木 経惟
写真家
ケンイシイ
アーティスト
設楽 洋
株式会社ビームス代表取締役
雁屋 哲
漫画原作者

電通や、出身者による著書