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業界トップブランドだからこそ進化を止めず、新たな使命を追求する

労働人口の減少に伴い、企業の業務効率化の重要性は高まっている。弥生は小規模事業者向けの業務ソフトウェアのマーケットでトップシェアを誇るプレーヤーだ。同社の圧倒的な競合優位性を築き上げたマーケティング戦略と、ソフトウェアメーカーの枠に留まらない新たな挑戦について、取締役の飯野弘也氏にお話を伺った。

Dec, 11, 2020

弥生株式会社

飯野 弘也 氏

業界をリードしてきた弥生が担うデジタル時代の使命

当社は30年以上にわたり、バックオフィス業務の効率化を支援するソフトウェアを提供してきました。従来型のデスクトップ製品だけでなく、オンラインで完結するクラウドサービスも提供しており、その両方で高いシェアを獲得しています。

新興企業を中心にクラウドサービスの利用は増加傾向にありますが、当社の製品を長くご利用いただいている中小企業のお客さまには、機能性・パフォーマンスに優れたデスクトップ製品も根強い人気があります。

最近話題のDXやデジタルシフトと聞くと、テクノロジーによって世の中が急速に変化するイメージがあります。しかし本当の意味でそれを実現するためには、2、3年の短期的な動きではなく、中長期を見据えた取り組みが重要だと考えています。なぜなら国内企業の99.7%は中小企業であり、彼らは大企業や中堅企業と同等のバックオフィス環境やそれを刷新していく部署を整備できていないからです。

例えば、クラウド化により金融機関からの取引データ取り込みや、官公庁、地方自治体への各種申告・届け出をオンラインで完結できれば、そのメリットは大きいですが、全てのお客さまが急激な変化に対応できるとは限りません。ましてや、バックオフィスの環境の急激な変化のためにお客さまの本業務が滞るような事態は避ける必要があります。

10年先の未来を掲げて、短期間にお客さまに大きな変化を強いるのではなく、個々の状況に合った選択肢を提示し、変化を促す。これがデジタルシフトの成否を分ける重要なポイントだと考えています。社内ではよく「お客さまに一歩先をご提案する」と言っていますが、お客さまである事業者に寄り添いながら、社会にデジタルを浸透させていくことが私たちの使命でもあります。

競合優位の源泉はマーケット特性と独自のパートナーシップ

弥生の製品は中小企業の中でも、従業員20名以下の小規模事業者に多くご利用いただいています。この領域は裾野が広く企業の数が多いことに加え、毎年新しい事業者が約20万も生まれるのが特徴です。そうした市場的な魅力や近年のFinTechブームもあり、最近は業務ソフトウェアを提供する会社が増え、当社も激しい市場競争に晒されています。

その市場環境下でも、当社が圧倒的なシェアを維持・拡大できる一つの理由は、1万以上の会計事務所とパートナーシップを築いていることにあります。事業者の多くは、事業を起こす際にもしくは初めての決算申告時期に、煩雑なバックオフィス業務や経営支援を会計事務所に委託(顧問契約)します。

当社では会計事務所の方向けに、会計事務所とその顧問先双方にメリットがあるパートナープログラムを提供し、それにより彼らの顧問先の事業者に弥生製品・サービスの利用を推奨していただいています。日本最大級の会計事務所とのパートナーシップがあり、彼らを介して中小企業と繋がることができるのは、私たちのマーケティング戦略における大事なポイントです。

マーケティング戦略の転換で築いた盤石な基盤

当社は、20年以上前からLTV最大化、製品を購入していただいた後にサポート・サービスに加入・継続いただくストック型モデル(今でいうところのサブスクリプション型モデル)に取り組んでおり、堅牢なビジネスモデルが確立されていましたが、7年ほど前に展開したマーケティング戦略の転換で、さらに安定的な基盤を築くことができています。 ※ライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の略

従来は製品に加えて、サポート・サービスを小売店に卸して販売するビジネスモデルでしたが、価格設定などマーケティングの自由度を高めるために、サポート・サービスをお客さまへ直販するビジネスモデルに切り替えました。

その際に、年単位の利用料で販売していた製品のサポート・サービスを初年度(最大15ヵ月間)無償とし、お客さまがサービスを実際に無料体験した上で継続利用するかどうかを選べる仕組みを作りました。初年度無償にしてもサービスの継続率が上がる確証はない中で、当時初年度だけで7億円程あったサポート・サービスの売上をゼロにすることは相当な経営判断でした。

実際に初年度無償のサービスを開始してからこの7年程で、それまで15年間で獲得した数の3倍以上のお客さまが増えました。また、現在は製品を購入したお客さまの7~8割がサポート・サービスに加入し、そのうち9割程が翌年も更新しています。

お客さまの継続利用を促進するため、サポート・サービスに力を入れてきたここ数年の間に、世の中にサブスクリプション型のビジネスが浸透してきたことも追い風となりました。15ヵ月無料で使えるというのは、他社にはない戦略上の大きな優位性です。お客さまにとっても、会計業務のサイクルは基本的に1年単位なので、実際の使用感を確認した上で購入を決めることができるというメリットがあります。

事業コンシェルジュという新たなビジョンの追求

当社は、レガシーなイメージでとらえられるところがありますが、先述したマーケティング戦略やビジネスモデルを大きく変革しながら現在に至っていますし、今後においても大胆に会社を進化させ、事業を拡大していきたいと考えています。

従来から提供している業務ソフトウェアをDX時代にふさわしい形に進化させていくことは、最優先課題として取り組んでいきますが、小規模事業者は慢性的に人手不足で、抱えている課題は業務効率化に限りません。私たちはお客さまの事業成功のパートナーでありたいという想いから、事業運営において発生する様々な課題や悩みにお応えする「事業コンシェルジュ」への進化を掲げ、サービスの拡充や新サービスの提供に取り組んでいます。

例えば、AIによるデータスコアリングから融資の金利の算出や資金調達ができるオンラインレンディングはその一つです。また、弥生の顧客基盤・会計事務所ネットワークを活かした事業継承のためのマッチングサービスや、起業を支援するサービスなど、複数の事業企画を検討しています。

他にもカスタマーサポートの部門から解決方法を提案したり、会計事務所や協力企業とのパートナーシップを活用した新たなサービス創りを進めたりと、既にある資産を活用した幅広いアプローチに取り組んでいます。こうした新たなチャレンジを重ねて、現在弥生は「ソフトウェアメーカーの弥生」から「事業コンシェルジュの弥生」へとブランドの進化を図っている最中です。

豊富な資産と発想を掛け合わせ、お客さまにさらなる価値貢献を

社内にはやりたいこと・やるべきことが沢山あるので、意欲的な人には新卒も中途も関係なく仕事を任せています。日頃から「さらにお客さまに喜んでいただくためには何をすべきか」を考えているメンバーが多く、一人ひとりが安定した環境に甘んじることなくチャレンジを続けています。

今後は、当社の中だけで何かを創り上げていく仕事以外にも、他社と組んで事業者向けに価値を提供する機会も増えて行くと考えています。場合によってはM&Aなどの資本政策を進める機会もあるでしょう。またブランド進化の過渡期なのでマーケティングやブランド戦略に興味がある方にとっても、様々な業務にチャレンジしていただけると思っています。

弥生にはこれまで30年間で培ってきたブランドへの信頼や、顧客基盤、業務データ基盤、開発基盤、他にも充実したカスタマーサポート、会計事務所とのパートナーシップなど、豊富な資産が備わっています。しかしどれだけ資産があっても、それを活かす新しい発想がなければイノベーションは生まれません。

特に若手メンバーには、安定感ある組織の中でも現状に満足せず、新しい風を吹かせてくれることを期待しています。柔軟な発想で次世代製品・サービスを主導し、お客さまのためになる新たな価値を創造したいと思っている方と一緒に働けたら嬉しいです。

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弥生株式会社

Interviewee

飯野 弘也 氏

いいの・ひろや

弥生株式会社

取締役 執行役員 マーケティング本部本部長

東京理科大学を卒業後、薬剤師として製薬メーカーに入社。インターネット黎明期(1990年代)に、個人で様々なWebサービスを立上げインターネットの可能性を感じ、ソフトバンクグループに入社。複数のサービスサイト立ち上げを経験した後、2002年にインテュイット(現 弥生株式会社)に入社。一度退職した後、再入社。2013年にマーケティング本部本部長、2014年に取締役に就任。