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起業大国アメリカは、若者に何を教えるか。【HBS編】

Mar, 03, 2017

Harvard Business School Japan Research Center

佐藤 信雄 氏

Harvard Business Schoolとは?

■卒業生に
・DeNA創業者南場智子氏
・ライフネット生命保険創業者岩瀬大輔氏

■卒業生は世界167ヵ国にわたる

■グローバルMBAランキング連続首位(『Financial Times(2014)』,『Financial Times(2013)』)

日米のベンチャーキャピタル投資額における著しい差は、新興ビジネスに対する両国の姿勢を象徴しているかもしれない。

世界でも最低レベルの起業意識(起業への自信の有無、起業へのハードルの高低等から測定)などと言われるこの国で、新しい事業を創ることへの前向きな意識は、一体どのように醸成しうるのだろうか。

この答えを探るべく、ハーバードビジネススクール(以下、HBS)日本リサーチ・センター長の佐藤信雄氏へ、HBSがいかにして「起業家」を輩出しているか尋ねた。

高邁な理論演繹ではなく、現実からの帰納で学ぶHBS流ケースメソッド。

HBSの卒業生は、卒業から15年以内に半数が起業かスタートアップ企業(設立3年以内の企業)に参加します。昨年は9%の卒業生が卒業した時点で起業かスタートアップ企業に就職をするという選択をしています。

―なぜ、多くの学生が起業という進路を選択していくのでしょうか

一つは仲間に感化されることでしょう。起業に意欲的な一部の学生の価値観が伝播し、起業が身近に感じられるのだと思います。

もう一つは起業やスタートアップ企業を専門に研究する学者を多数擁しながら、HBSが起業家育成に注力していること。1年生から起業は必修科目で、これは「ベンチャーキャピタル 」を世界で初めて創り出したアーサー・ロックによる寄付により始まりました。

―具体的にどのように「起業」を学ぶのでしょうか

学ぶ、というより仲間との議論を通じて気付かされるという方が正しいかもしれません。HBSの授業では、過去実際に起きた事例を再現して書かれたケースの中で「あなただったら、この状況でどのような行動を取るか」を考えて議論します。そこに正解は無く、個々人がいかに説得力ある説明をしながら結論を導くかが重要となります。ケースに向き合う中で、学生は現実とリレートしながら起業家として持つべき視点を体得するのです。

同時に、ケースの内容は起業に伴い起きうる、あらゆる喜劇と悲劇を含みます。起業のリスクとその先にありうる最悪の事態をも、きちんと伝えながら「それでも、あなたが情熱をもって世の中にインパクトをもたらしたいことは何か」を学生に問うのです。

―HBSでは「ギリシャの漁師とウォール街の男」の逸話が語り継がれていると伺いました

「ギリシャの漁師とウォール街の男」
自営業を細々と営み、家族を支えることで満ち足りた生活を送る漁師に、投資家が歩み寄り、漁の「事業拡大」を雄弁に持ちかける。そして漁師に「それに何の意味があるの?」と問われて投資家が閉口する逸話。

ええ。ビジネスを通じて社会に『インパクト』を与えることを掲げるHBSだからこそ、一人ひとりにとっての『成功』が何かを素朴に、徹底的に問いかけます。あなたにとっての人生のゴールが明らかになってこそ、あなたが世界を変えるビジネスが描ける。これはHBSが学生に贈る大切なメッセージの一つといえるでしょう。

Harvard Business School Japan Research Center

Interviewee

佐藤 信雄 氏

さとう・のぶお

Harvard Business School Japan Research Center

HBS 日本リサーチ・センター長