富士フイルムの特徴・企業研究レポート

目次

  • 富士フイルムの特徴
  • 主な事業
  • これまで事業の歩み
  • 今後の経営戦略
  • 富士フイルムや、出身者による著書

富士フイルムの特徴

富士フイルムは、もともと映画フィルムの国産化を目指して設立された会社です。しかし現在では、富士フイルムグループ全体の売上のうち47%がオフィス用印刷機器などのドキュメントソリューション、39%が医療・印刷・液晶ディスプレイ材料などのインフォメーションソリューションであり、写真関係事業であるイメージングソリューションは14%を占める程度となっています。

カラーフィルムの世界層重要がピーク時の2割ほどと急激に減少する中で、フィルム開発で培った技術を応用し、機能性化粧品など様々な分野に利用することで、業績はV字回復を遂げました。現在でも新しい技術の採用には積極的であり、多くのM&Aを実施しています。

あまり知られてはいませんが、液晶保護フィルム世界シェアNo.1、イメージセンサー用カラーモザイクNo.1、医用画像システムの世界シェアはNo.2(国内ではトップ)など、競争力の高いプロダクトも有しています。

2008年には富山科学工業を買収して製薬分野に進出。アルツハイマー型認知症治療薬、がん治療薬などを開発中。2014年よりiPS細胞関連にも着手しています。

主な事業

イメージングソリューション

フォトイメージング(フォトブック、チェキなど)、光学・電子映像(デジカメ、スマホ搭載レンズ)

インフォメーションソリューション

ヘルスケア(画像診断、化粧品・サプリメント、医薬品)、フラットパネルディスプレイ材料(液晶ディスプレイ用保護フィルム)、産業機材・電子材料(タッチパネル等)、記録メディア(金融機関用磁気テープ等)、グラフィックシステム(印刷用材料)

ドキュメントソリューション

※富士ゼロックスで運営

これまで事業の歩み

富士フイルムは、1934年に大日本セルロイド株式会社の写真フィルム事業を分離して「富士写真フイルム株式会社」としたのが始まりです。1958年にブラジル現地法人設立を皮切りに、ニューヨーク、ドイツ、オランダなど海外進出を地道に続けていきながら写真事業を拡大していきます。カラーフィルムは寡占市場で、グローバル1位のコダックを追随する形で長らく安定した経営を続けていきました。

1980年代には、写真感光材料などの製造で培った技術をもとに、血液検査システム・デジタルX線画像診断装置などの開発や、フロッピーディスク・カセットテープといった磁気テープの開発にも着手。新規事業で市場を切り拓いていきます。1986年には従来の「カメラにフィルムをセットする」というカメラの常識を覆し、「レンズ付きフィルム」という新ジャンルである『写ルンです』を発売しヒットしました。1997年のピーク時には出荷本数が9000万近くにまでのぼっています。

しかし、2000年代以降、写真関連ビジネス・フィルムビジネスは急激に落ち込みます。2001年~2005年でおよそ8割も需要が減少。デジカメの製造販売を行うなどデジタル化への対応も行っていましたが、写真事業以外の経営改革も待ったなしの状況であり、当時社長であった古森氏が圧倒的なリーダーシップを取る形で業態変革を進めました。

写真フィルム部門のリストラを断行して2年で1/3の社員を削減。それと同時に約40社に6500億円という巨額のM&Aを実施。2001年には富士ゼロックスを連結子会社化して、オフィス向けドキュメントソリューション事業として富士フイルム全体を再編。2005年にはテレビなどに利用する液晶ディスプレイ事業に参入。2006年、ついに社名から「写真」を取って「富士フイルム株式会社」として、化粧品や医薬品事業など続々と新規事業へ参入し、インフォメーションソリューション事業として推進しました。

この改革により、グローバル1位だったコダックが倒産した一方で富士フイルムは再生したとして、ハーバードビジネススクールなどMBAでもケースに頻繁に取り上げられています。

今後の経営戦略

これまでの改革で事業の柱を確立した富士フイルムは、2016年の中期経営計画で安定的な利益・キャッシュ創出に力を入れる方針を示しています。M&Aを活用したコア事業の成長加速といった正攻法で利益率を上げていくと同時に、自社株買いや配当金の向上などを通じて株主還元を強めていく計画です。

特に注力するのは、ヘルスケア、高機能材料、ドキュメントの3分野。そのうち、富士フイルムでは、ヘルスケア分野で画像診断システムを中心とした安定成長と新薬の上市、高機能材料分野でスピーディーな新製品開発と市場投入を目指しています。

富士フイルムや、出身者による著書