スタートアップが起こすイノベーション(Slogan Summer Job 2016)

全米No.1のビジネススクール訪問をはじめ、近年スタートアップ熱が加速しているニューヨークにて起業家インタビューやスタートアップ訪問を実施するスローガン(Goodfind運営企業)の海外渡航インターン、「Slogan Summer Job 2016」。300名もの中から選ばれた大学生3名とスタッフが、現地の様子などをレポートします。
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参加者インタビュー:東京大学2年生 中村 龍矢さん(Slogan Summer Job 2016)


こんにちは、「Slogan Summer Job 2016」参加メンバーの、東京大学2年の中村龍矢です。今回は、「スタートアップが起こすイノベ-ション」というテーマについて、私自身が学生時代に実際に事業を作ったり、書物に触れたり、多くの起業家と会ったりしている中で感じたことをお伝えしていきたいと思います。


1.小さな組織が生み出してきたイノベーション

ここ数十年のうちにITは人々の生活に大きな影響を与えており、それは農業革命、産業革命と並んで情報革命とも言われています。そんな中、数々のイノベーションを起こし今や世界的な大企業である会社のほとんどは、意外にも数人の若者のちょっとした試みからスタートしてきました。Googleは、大学での研究プロジェクトから始まり、借りたガレージにて学生二人が創業しました。Facebookも最初はハーバードの学生が交流を図るためのサービスで、学生寮の一室で作られたアプリケーションでした。また、最近何かと話題のVR分野を代表するOculusも、創業者が19歳のときに最初のプロトタイプを作っていたことで知られています。

2.なぜ大企業はイノベーションを起こしにくいか

イノベーションが、莫大な資金や人材を持つ大企業ではなく、小さな組織、スタートアップから生まれているのはなぜでしょうか。スティーブ・ジョブズが愛読した書籍としても知られる『イノベーションのジレンマ』。著者のハーバードビジネススクール教授クレイトン・クリステンセンは、本書の中で巨大企業が、新しい技術を持つ新興企業の前に力を失う理由を説明していますが、その中で「合理的な判断の積み重ねが大企業を滅ぼす」というジレンマを提唱しています。

既に圧倒的な資源を持っている大企業は、分析的な戦略を立てにくく、短期的利益につながらない(そのため投資家への説明もしにくい)市場参入・技術開発を行うよりは、既存の事業に注力するケースが多いです。これは合理的な判断ではあるのですが、結果的に自社製品の価値を破壊し得る新しい製品を持つ新興企業に大きく後れを取ってしまうという現象のことです。最近の例としては、iTunesやYoutubeの登場により苦戦を強いられている既存のレコード会社などが挙げられるでしょう。

イノベーションを起こせる確率はかなり低い(Yコンビネータのポール・グレアム氏によればDropboxやAirbnb等のように大成功する確率は0.3%程度)と言われていますし、大企業にとっては、失敗率が高いが革命を起こす可能性がある新しいことに挑戦するより、投資したときの期待値が高い既存事業に注力するのが合理的なのでしょう。このジレンマに陥らないために、大企業も様々な取り組みを始めていますが、社会全体の新陳代謝を活発にするという点でも、次世代の大企業となるようなスタートアップを生み出し続けることは必要不可欠であると思います。

3.社会全体でイノベーションのジレンマを起こさないために

視野を広げて、「イノベーションのジレンマ」での大企業を、スタートアップを取り巻く環境や社会全体としたマクロな視点で考えてみると色々発見があると思います。スタートアップを取り巻く環境は、アントレプレナー、VC、エンジェル投資家、インキュベーター、大学、など、様々な人・組織が関わっていますが、それらが前項であるように、分析しやすく、短期的に利益を出しやすい市場や技術ばかりに注目し、既存の価値を破壊し得る新しい価値のために挑戦しなくなれば、きっとイノベーションは生まれなくなるでしょう。もちろん新しいからというだけで騒ぎ立てるのはよくありませんが、まだ現時点では価値を感じられていないものに、若者、小さい組織が好奇心をもって挑戦する、またそれらを支援するという風潮は、これからもっと加速するべきだと思っています。

この観点だと、VC等による投資は、市場、提供価値について分析的な見通しがあった上で将来性に期待されてなされるものなので、上述のようなジレンマの可能性を孕んでいて、VCの投資が活発だからといて一概にイノベーションを促進しているとは言えません。むしろ、まだ何もプロジェクトを始めていない学生が、一見無駄に思われるような沢山の実験と失敗を通して、革命的なアイデアに出会うというプロセスを支援することがイノベーションの活性化につながると思います。例えば、スタンフォード大学のd.schoolのように、違う専門性を持つ学生が集まってアイデアを創出し、実際にプロトタイプを制作出来る施設をもっと増やす、といった取り組みを増やすことがイノベーションの促進につながると考えています。

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[2016'09'12' 更新]

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