イデアルリンクの創業経緯について教えて下さい。
実は銀行を辞めた時点では、いろいろとアイデアは考えていたものの、「これをやるから会社をやめます」という決め手となるアイデアはありませんでした。しかし、具体的な事業内容を持たないことよりも、長く銀行につとめてしまうことのリスクの方が怖く感じました。これも、多くの人がなかなか起業に踏み出せない理由の一つだと思うのですが、完璧なビジネスモデルを組み立て、人もお金も集めてから会社を創るなんていう恵まれた状況は、なかなか生まれないものです。当初考えていたアイデアなんて、ころころ変わります。となると、まずは何も考えずに飛び出す思い切りの良さが重要だと思うのです。弊社も、創業当初、いろいろと考えて二転三転しましたが、ようやくHot.Docs(ホットドックス)という文書共有サイトで、世の中に価値を提供しようと思えるものに出会えました。創業したての頃は、どれだけ利益をあげられるのかという視点のみで考えてしまいがちですが、そういうことばかり考えていては、会社は成長しないと思います。自分の懐にどれだけお金が入ってくるのかよりも、世の中にどれだけ価値を提供できているかの方が大事です。
会社の利益を最優先に考えれば、例えば、安い商品でも高く見せてお客様に売り、従業員の給料を下げれば利益は出ます。ただ、弊社ではそういうことは絶対にしないと決めているので、学生のインターンに対しても、高めの時給を設定して、モチベーションを高めるようにしています。その結果、給料の何倍もの働きをしてくれるようになるのです。学生のスタッフが作ったサービスが、様々なメディアに取り上げられて、実際に世の中に大きな価値を提供できているのです。彼らの頑張り、成長速度には、日々感動しています。
御社の今後のビジョンを教えて下さい。
弊社の文書共有サイトHot.Docsを空気のような存在、日常生活に欠かせないものと言われるサービスにまで育てていきたいですね。これまでのメディアは、紙媒体で閲覧した方が良い部分と、ネット媒体で閲覧した方が良い部分は、相反する部分がありました。Hot.Docsでは、それをうまく融合させる糸口をつかんでいます。まだ少し時間がかかるかもしれないですが、3年以内にはそれを実現したいと思っています。紙媒体とネット媒体を、本当の意味で融合させたいです。
そういった先端技術を生み出すには、大企業とベンチャーのどちらが良いでしょうか?
大企業では新しいことになかなかチャレンジさせてもらえないので、イノベーションが起こりにくいです。イノベーションを起こしたかったら、
間違いなくベンチャーが有利だと思います。東工大の学生が、各自一つずつ面白いネットサービスを作り始めることを想像してみて下さい。
きっと革命が起こりますよ!一気にシリコンバレーを越えるかもしれないと思います。そもそも、インターネットも「ものづくり」の一つなので、
ものづくり大国である日本が世界一になってもおかしくないはずです。ただ、東工大の学生は、そんな魅力的なベンチャー企業があるという情報を
知らないのが現状だと思います。とりあえず、何か感じるところがあれば、うちに来てみて下さい。実際にやってみれば、ベンチャーの楽しさがわかりますよ。
ものづくりなら、トヨタ、ホンダ、ソニーなどに行った方が良いと考えてしまう人も多いのではないでしょうか?
教授の推薦で有名企業に行く東工大の学生は多いです。でも、実はそれって企業にとって都合のよいことばかりなのです。私も銀行時代に採用する側として、東工大の学生さんと話をする機会がありましたが、大企業に優秀な学生さんを誘い込むのが、とても簡単なことに驚きました。内定を受諾するかは別にしても、現状の採用環境では、企業側が学生を選ぶ立場にあります。学生の意思で進路を決めさせているように見せてはいますが、実際は企業にうまく誘導されているだけです。そこに気づかないのはもったいないですよ。例えば、より速い車やバイクを作りたいのであれば、トヨタやホンダに行けば思い通りの仕事はさせてもらえると思いますが、それは果たして「ものづくり」なのでしょうか。東工大の学生の中には、本気でガンダムを作り出すことを夢見ている人もいます。そういう突き抜けた考えこそ、ベンチャー企業は求めているのです。そういう次元においては、既存の技術の延長上にあるものではないので、既存の技術を豊富に持っている大企業に入るよりも、制約や固定観念が全く無く、イノベーションに賭けてあれこれ試行錯誤するベンチャーに行く方が、本当の意味で「ものづくり」ができるのではないでしょうか。
最後に東工大の学生にメッセージをお願いします。
「先輩は信用するな」と伝えたいですね。
教授推薦で有名企業に行けるから自分が東工大に入った甲斐があると、先輩からアドバイスを受けることもあると思いますが、結構危険なことだと認識した方が良いです。
それは結局、よくわからないまま毎年のように先輩から後輩に引き継がれている価値観に過ぎないので、どこかでその流れを断ち切らないといけないですよ。
まず、「自分が何をしたいのか?」をとことん考えて、それから先輩の話を聞いた方が良いと思います。そこで、先輩の話をうのみにするのではなく、自分の意見とどう違うのかを確かめて下さい。自分が何をしたいのかわからない状態で、周りからいろいろな情報を得ようとすると、自分の意志とは無関係に、ただ周りに流されてゆくだけです。
あと、私が昔から好きな言葉で、今でも私自身の信念として大切にしている言葉があります。
「人事を尽くして、天命を待つ」
この言葉ってすごく深い言葉だと思うんですよ。天命とは結果のことですが、天命は自分の意志でつかめるものではありません。でも、その結果のために、自分にできることは全てやりつくす。その後の結果は天が決めてくれる。ビジネスにおいても同じです。金が儲かるとか出世するとかは、周りが決めることであって、自分が求めることではないのです。大事なのは自分にできることを愚直にやりつくすことだけ。そうすれば必ず天が味方してくれます。結果が出たら、今度は天(周りの人)に感謝することです。決して驕らずに、常に謙虚な姿勢で一歩一歩前に進んで下さい。
メガバンクでの勤務経験を持つ山本氏は、会社勤めをすればするほど、独立心や自由な発想が失われる感じがしたと言います。「自分で何かを生み出したい」と本気で考えている人には、何かを生み出す必要性の低い、できあがった大企業よりも、イノベーションを起こすことが必然となるベンチャー企業で働く方が良いのでしょう。