フィックスターズに入社する前はどのようなことをしていましたか?
大学ではあまり勉強の記憶はないのですが、学部時代はインターネットが世に出はじめたタイミングとも重なりWebアプリケーションの開発が楽しくて夜な夜なプログラミングに没頭していました。大学院では所属した研究室に恵まれ海外の学生との交流やシリコンバレーの研究所の見学、国内外での一流の研究者との共同研究といった、コンピュータサイエンスの本物を肌で感じる、かけがえのない経験をさせてもらいました。幸い要領が良かったため比較的早く博士課程を修了でき、恩師に紹介されたソニーコンピュータサイエンス研究所に入所しました。3年半企業で研究者として働いた後、三木(フィックスターズ社長)と出会い、取締役兼最高技術責任者としてフィックスターズに参画しました。
理系のトップ層の学生が、歩むべきキャリアについてアドバイスをください。
私もそうでしたが、理系の人はロジカルに考えすぎる人や自分の経験や考え方に
固執しすぎる危険性があると思います。ロジカルに考えすぎると、都合の悪いことを無視して自分の論理で理解してしまい、現実離れしてくることがあります。特に技術職は趣味と紙一重な部分も多く、ビジネスニーズや社会の要請とずれてくることがありますので、インターンなど実際の企業の現場で働いてみたり客観的に自分の状況を見つめ直す
ことをお勧めします。
また、キャリアに関しては、日本では理系と文系の壁を作ってしまっている人が多すぎるようにも感じます。例えばアメリカでは、マルチメジャー(複数専攻)で、技術もわかってビジネスもわかる人たちが第一線で活躍しています。専門性を高める時期も必要ですが、それだけで終わることなく、その知識を何倍にも活用するために広い視野で学んでいって欲しいと思います。
大企業とベンチャーの違いは何でしょうか?
大きな違いはスピード感です。ベンチャー企業は一つ一つのイベントが社運を大きく変えてしまいます。また、わき道にそれている余裕がないので、良い意味でも悪い意味でも常に最善な戦略に軌道修正していくスピード感がなくては生き残れません。一方、大企業の魅力は、資本力があるので、スペシャリストを目指すには良い環境だと思います。ベンチャー企業の魅力は、実力主義で若い人でも責任ある仕事ができ、ビジネスの全体がわかりビジネスセンスが磨けます。しがらみも少ないので、大企業が手を出さないような数億円のニッチな市場のビジネスチャンスにも挑戦できるのも魅力です。
御社の事業展開についてお聞かせください。
これからのマルチコア(※1)の時代に、ソリューションを提供できるグローバルカンパニーになることが目標です。フィックスターズは、ソフトウェアカンパニーとしてソリューションを垂直に全部提供できる体制を整えたので、世界中のマーケットを対象にビジネスを加速していきたいですね。当社が注力しているCell(※2)は既存のプロセッサより数十倍高速処理が可能です。例えば医療機器で数十分データ処理にかかっていたものが数秒になれば、圧倒的な競争力になりますし、ひいては人命救助もでき、人類貢献の意義がある技術です。IT業界は成熟しつつあると思っている人もいるかもしれませんが、シングルコアからマルチコアの時代に変わり、大きなパラダイムシフトが今、起こりつつあります。ハードウェアの進化を理解した上でプログラミングを書けないといけないのです。加えてCellは職人芸的な要素が強く、腕に自信のある日本人が、世界で挑戦できる数少ない有望分野の1つなのです。日本発のソフトウェアで世界に挑戦し、将来的には、フィックスターズをグローバルカンパニーにしていきたいです。
※1 マルチコア:一つのCPUパッケージ内に複数のCPUコアを封入した技術。
※2 Cell:Cellの正式名称は、Cell Broadband Engine™ (Cell/B.E.)です。