2008年8月、ボストン。日米学生会議の季節がやってきた。
日本と米国の学生全60名が集い、毎年一ヶ月間をかけて熱い議論を交わす。
政治、経済、環境問題、歴史認識、ときには人生・キャリアについて。
その議論は尽きることはない。
OB・OGガイドブック委員会では今回、日米学生会議の協力の下、
「日本と米国の就職活動」について議論する座談会を企画した。
アヤ:アメリカと日本における就職活動の大きな違いは、選択肢の違いだよね。 アメリカでは、卒業後に必ずしも就職しないで、一年間海外でボランティアをして過ごす人が意外と多いし。 もちろんお金は稼げないし、機会コストも高いと考える人もいるかもしれないけど、 収入や名声よりも社会貢献に価値を感じる学生は最近増えていると思う。
ナンシー:ハーバードの学生も、卒業後の進路として、就職を必ずしもスタンダードとして捉えていないと思う。 学問を学ぶ姿勢も、就職するためというよりは、人間として成長するためという人が多い気がする。 結果的に、成長する手段は必ずしも就職とは限らないのかもね。
レイチェル:確かにそうだよね。ハーバードにも就職活動をする人はいるし、 投資銀行やコンサルティングファームを選択する人は確かにいるけど、昔ほどの人気はないとも聞くし。 むしろ今多くのハーバード生が関心を持っているのが、社会的意義の高い企業や、社会貢献団体。 例えばTeach for America (TFA)※やPeace Corps※はすごく注目されていて、就職ランキングもかなり上位だよね。
※ Teach for America(TFA): エリート大学の成績優秀者が卒業後の2年間、貧困地区にある公立の学力底辺小中校で教師になるというプログラムを行うNPO団体。
※ Peace Corps: 教育や農業などの分野での発展途上国援助を目的とする米国の長期ボランティア派遣プログラム
李:6万5000ドル(約650万円)の初任給がもらえる投資銀行を 蹴ってまで、
年収2万5000ドル(約250万円)のTFAでの活動を選ぶ人が増えてきたって聞いたことがある。
日本だとそもそも「卒業→企業に就職」と言う流れがスタンダードになってしまっているよね。伊藤:本来、就職活動は決して強制的なものではないし、キャリアは主体的に自分で選択すべきだと思う。 日本の学生も会社に行きたいなら就活すればいいし、経営を学びたいなら起業すればいいし、社会貢献に携わりたいなら、 アメリカの学生みたいに、まずそこの現場に飛び込めばいいと思う。
◆トップクラスの就職活動生とは?
松尾:東大・早慶などの学生に人気があるのは、投資銀行、コンサル、商社、マスコミの有名企業だよね。 やはり、そこに就職する学生はトップクラスといえるのかな。
盛島:自分と矛盾するけど、ベンチャー・成長企業に行ける人はすごいと思う。 ビルゲイツもそうだったように、組織に頼らなくても自分で創り上げていける人がトップと言えるかもしれない。 そもそも本当に優秀であれば、大学に行く必要性も高くないと思うし。
李:規模が小さくて急成長している組織に行くことは、とても刺激的。
だけどチャレンジだよね。問題発見能力・解決能力が両方備わっている人でないと務まらないし、
そんなチャレンジをすべて心得てその道を選ぶ人は尊敬に値すると思う。
本当に優秀な人は、自分の適性を見極めて、自分が一番成長できるところを選んでいるような気がするかな。ジョッシュ:トップかどうかを、企業や業界で判断することは適切でないと思う。 ある人は、お金を稼ぐために投資銀行に行くし、またある人は、お金は稼げなくとも、社会に貢献するために薄給の公務員になるかもしれない。 どちらもとても尊敬できるキャリアだと思うよ。ただ、自分の価値観を投げ出して、世の中の潮流に迎合してしまうのはもったいないとは思う。
◆「個の能力」と「組織の力」
ナンシー:アメリカに”Tool”というスラングがあって、その意味が、「所属している組織の力や肩書きのおかげで活躍できているのに、 自分の能力が高いから活躍していると思って、実は会社に利用されているということに気がついていない人」 もし大きな組織に所属していたとしても、そうなりたくないし、そこは踏み外してはいけないと思う。
松尾:組織の肩書きで認識されるよりも、個人の名前で勝負できる人材でありたいよね。 そういう意味では、日本の就職活動は、知名度が高い企業に人気が集中しすぎている傾向があるかも。 将来”Tool”になってしまう人が多いんじゃないかな。
盛島:そのためには、もっと新しいロールモデルがあってもいいよね。 例えば、既存の枠組みからはみ出して挑戦をして、世の中に新しい価値やサービスを提供している人とか。 ただ学生に知られていないだけかもしれないけど、そういう人を成功者としてしっかりと称える文化は、 日本がアメリカから学ばなくてはならない大きなポイントなのかもしれないよね。
熱い議論はまだまだ続く・・・
日本初の国際的な学生交流団体である日米学生会議は、米国の対日感情の改善、日米相互の信頼回復を目指し、1934年に発足した。
本会議では、日本と米国から同数の学生が約一ヶ月にわたって共同生活を送り、分科会活動、フィールドトリップ、
そしてフォーラムなどを通し、相互理解を深める。また、会議で得られた成果は、長期的な社会的貢献、社会還元が期待されている。第61回日米学生会議実行委員ブログ http://ameblo.jp/jasc61/
(座談会の内容は2008年8月20日に収録されたものです。)





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