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世界初、全自動洗濯物折り畳み機、遂に開発に成功

世界初の全自動洗濯物折り畳み機の開発を、ベンチャー企業が成し遂げた。彼らは何故トップメーカーにできなかったことを実現できたのか。「世の中にないモノを創り出す技術集団」が10年という膨大な時間を投じて生み出した『laundroid』開発秘話に迫る。

Jun, 30, 2016

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社

阪根 信一 氏

洗濯物を畳むのに使う時間は一生のうち375日

洗濯物を畳む。この行為に人は、人生の375日を費やしていると言います。これを自動化して、人生に1年間の自由な時間を生み出したい。「洗濯物畳み機があったら良いな」、妻のその一言をきっかけに私の挑戦が始まりました。2005年のことでした。

洗濯物をロボットに畳ませることなど、容易なことに思えるかもしれません。しかし人間が日々当たり前のようにやっているこの行為は、衣服を広げるという単純作業すら、実はロボットにとっては非常に難しいのです。特許を調べてみても、これまでに実現できたメーカーは一社もありませんでした。関連技術のスペシャリストですら、洗濯物の種類を判別して畳むことなど、技術的に不可能だと言っていたのです。

人の生活を変える、ハイレベルな技術開発に挑む

では何故、我々がこの無謀な開発に挑んだのか。それは、セブンドリーマーズが世の中にないモノを創り出す技術集団として、誰も成し得なかった、圧倒的に技術レベルの高い開発を目指しているからです。ただしそれは、実生活に即していないハイテクノロジーではありません。我々は人類のライフスタイルを変える製品を生み出すことにフォーカスしています。

実際にマーケットニーズを調査をしてみても、洗濯物折り畳み機は欲しい家電ランキングのトップ3に常にランクインしていましたし、大企業が掲げるこの先30年のビジョンにも必ず入っているものでした。開発にさえ成功すれば、世界的普及は間違いありません。困難は承知の上、強い意志を持ってやり抜くことに決めました。

開発に要した10年間の軌跡

全自動洗濯物折り畳み機『laundroid』の開発には10年を要しました。一般的に3年で目処のつかない開発を大企業の株主は許しません。開発期間10年という一見馬鹿げた挑戦ができるのは、それなりに資金のある我々のようなベンチャーだけです。5名チームで走りだしたこのプロジェクトは、5年が過ぎる頃も成功しそうな気配は無く、メンバーも少しずつ離れていきました。最後には1名しか残っていませんでしたが、10年の時を経て、遂にプロトタイプを完成させたのです。

『laundroid』は、洗濯物の山から1枚衣服を取り出して展開し、画像解析技術を使ってそれがTシャツなのかYシャツなのか、ズボンなのかスカートなのか認識します。そして認識した物体を、ロボティクス技術を使って適切な方法で折り畳むのです。家庭内の洗濯物の内容はあまり変化がありませんから、次第に機械学習を使って服のロゴから瞬時に服の種類を認識するようになり、畳む時間を短縮していきます。

ラスベガスで開催された「CES2016」に『laundroid』が出展された時の様子。家電テクノロジーにおける世界最高の舞台とされる本イベントでは、大企業からも多くの製品が出展されたが、『laundroid』はその斬新さと技術レベルの高さにより、多くの来場者の注目を集めた。

ものづくりベンチャーにとって大手企業との提携は不可欠

洗濯乾燥機と合わせたオールインワンランドリーを2019年には商品化させるため、知的財産権を持つパナソニックとの共同開発を開始しました。パナソニックを選んだのは、製造を依頼する際に信用のおけるパートナーであったからでもあります。また、大和ハウス工業とも提携したのは、『laundroid』がいずれスマートハウスの一部を構成すると考えたからです。

今後の日本がもう一度イノベーションを起こすためには、こうした大企業とベンチャーとの提携が不可欠ではないでしょうか。突出したアイデアは大企業にもありますが、安全基準が厳しく、製品化を承認するプロセスのどこかで白紙にされることが大半ですからね。そのため、イノベーションを起こせずにいる多くの大企業が今、ベンチャーに大きな期待を寄せているのです。一方でベンチャーも、スピーディーな世界制覇を狙う限り、生産の段階で大企業と組むことが欠かせません。

パナソニック、大和ハウス工業との提携を行い、『laundroid』がスマートハウスの一部となることを目指す。

『laundroid』は進化する

『laundroid』はただの白物家電ではなく、IoTデバイスです。ハードウェアの開発で終わるわけではありません。今後は、機械学習やロボティクスの部分を強化することで、畳む速度を上げていきます。また、Yシャツ用にアイロン掛け機能を追加するなどソフトウェアの開発にも力を入れていく予定です。いずれは洗濯物を洗い、乾かし、畳んで、分類したうえでタンスまで運ぶ、スマートハウスの中で欠かすことのできない究極の存在にしていきたいと思います。

いずれこの製品が世界に普及すれば、『laundroid』から吸い上げられる大量のデータを、次なるサービスに活かしていけるでしょう。『laundroid』は、生活の中で日々進化する全く新しいデバイスとなるのです。

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社

Interviewee

阪根 信一 氏

さかね・しんいち

セブン・ドリーマーズ・ラボラトリーズ株式会社

代表取締役社長

1971年、兵庫県芦屋市生まれ。2000年に高機能性材料の研究開発を事業とする株式会社 I.S.T 入社後、取締役本部長、専務取締役、CEO を経て2008 年に社長に就任(2010年社長を退任)。同年スーパーレジン工業をM&A により取得し社長に就任。2011 年より現職。