変革者に求められる5つの心得

マネジメント・プロフェッショナルとして企業の変革に挑むIGPIパートナーと、博報堂・投資会社・Googleを経て経理等を自動化することで経営を変革するfreee創業者は、いかにしてビジネスの変革者となったのか。それぞれのキャリアヒストリーから変革者に求められる心得を探る。

Apr, 11, 2016

株式会社経営共創基盤(IGPI)

木村 尚敬 氏

その1:迷ったら、より困難な道を選べ

●木村 失うもののない若いうちは、さまざまなことに挑戦し、出来れば多くの失敗を経験してください。40代になって初めて失敗の経験をしても、どう対処して良いか分からず、立ち直ることができなくなってしまいます。無邪気な20代のうちに多くの修羅場を経験し、失敗を積み重ねておくことが後の財産になります。

●佐々木 私は20代の頃、迷ったときはより難しい方を選ぶことを信条にしていました。簡単な方を選ぶと甘えが生じ、成長機会を得にくくなってしまいますから。ゼミでデータサイエンスを学んでいたのですが、より難易度の高い実務経験を積むためにベンチャーにインターンとして飛び込み、人力で行っていたリサーチを自動化する新しいマーケティング手法を開発しました。机の下に布団を敷いてがむしゃらに働いたあの頃の経験のおかげで、成果を出すまでやり抜く習慣が身に付きました。

●木村 私が大学生だった1980年代後半は、日本経済は右肩上がりで就職は今よりもはるかに楽な時代でした。しかし、このまま簡単にどこかの企業に入ってサラリーマンになるのは面白くないと思い、学生起業に踏み切ったのです。思い切って困難な道を選んだことで、若くして商売のイロハについて実体験を積むことができました。その後コンサルティングの道に入り、現在はマネジメント・プロフェッショナルとして様々なステージにあるクライアント企業の経営に関与しています。私のコンサルティング経験を振り返っても、一見面白そうなプロジェクトよりも、これは難しそうだな・あんまり面白くなさそうだな、と思ったプロジェクトの方が、結果的に多くの学びを得ると同時に自分の成長につながっていると思いますね。

その2:目の前のチャンスに全力で取り組む

●佐々木 私も木村さんも、学生時代にしっかりとキャリアプランを決めていたわけではありません。目の前のチャンスに全力で取り組むことで、自然とユニークで良い経験を積むことができ、次のチャンスに恵まれてきました。例えば私は、博報堂で消費者金融の売上を伸ばすように言われたとき、まずは実際に東京中の消費者金融にお金を借りに行きました。すると、店舗が汚くて怪しいところでは借りたくないなと思ったのです。そこで店舗の雰囲気と来店客数の相関を調べたところ、大きな成果が生まれて喜ばれました。小さなことからで良いのです。まずは目の前の仕事に自分ならではのアウトプットを生み出すことで、自信を付けていってください。ビジネスはスポーツや勉強と違い、徹底的にやればナンバーワンも夢ではありませんよ。

その3:環境の変化に素早く適応する

●木村 変革を起こしたいのであれば、まずは自分が変化に対応できるようになりましょう。仕事に限らず、普段の生活で多くの嵐のような経験を積み重ねることによって、肝が座っていて焦らない、むしろそういった時ほどアドレナリンが出て状況を楽しむことができるようになれる、つまりは変革者として必要な胆力が出来上がってくると思います。

●佐々木 私は博報堂から投資ファンド、スタートアップへと目まぐるしくキャリアを変化させながらも、どの環境においても短期間で必ず成果を出してきました。投資ファンドでは留学中に学んだ費用対効果の計算手法を活かしてアナリストとして価値を発揮し、スタートアップではCFOとして企業財務や資金調達と並行して、主力商品となるレコメンデーションエンジンの開発を手がけました。Googleが私に声をかけたのは、新しい環境にすぐに適応できそうだったからだそうです。

その4:自分がやるべきことにフォーカスする

●佐々木 Googleで中小企業向けのマーケティングを担当したことをきっかけに、全自動のクラウド会計ソフト「freee」の構想を思い付きました。会計処理をテクノロジーの力で自動化すれば、中小企業の人がもっとクリエイティブに働くことができると思ったのです。Googleを辞めてまで起業したのは、かつてスタートアップで会社の管理部門とソフトウェア開発部門の両方を見てきた経験があるからこそ。自分なら他の人よりもうまくできると思えたからに他なりません。

●木村 佐々木さんのように、20代のうちに多くの修羅場で意思決定し、できることが増えてくると、自分がやるべきことが自ずと見えてきます。しかし、世の中をより良くする変革は多くの人を巻き込むことが必要なので、人を動かす能力、その礎となる他者への想像力・理解力が求められます。

その5:正論で人は動かない

●木村 学生起業してからの10年間、ひたすらマネジメントに携わる中で感じるのは、世の中は多様な価値観のぶつかり合いによってできているということです。この感覚は今の仕事に非常に活きています。IGPIはプランを提案するだけのコンサルティングファームではありません。ときには顧客企業と共に、当事者・最高責任者のマインドでプランを実行し、経営へのインパクトを出し切るまで併走するプロフェッショナルファームです。従い、プランを立てることに加えて、誰がどのようにそれを実行していくのか、ということの方がより重要となってきます。組織の上に立ち正論を言えば人は動くというのは大間違いです。人を動かすリーダーになりたいのであれば、世の中の多様性に興味を持ち、想像力を駆使し、組織や人の有り様を深く理解することが大切です。

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株式会社経営共創基盤(IGPI)

freee株式会社

Interviewee

木村 尚敬 氏

きむら・なおのり

株式会社経営共創基盤(IGPI)

パートナー 取締役マネージングディレクター

大学在学中に起業。10年間のマネジメント経験の後、日本NCR、タワーズペリン、アーサー・D・リトルにおいて事業戦略策定や経営管理体制の構築等に従事。IGPI参画後は、企業のブレークスルーから戦略転換、再成長へ向けた戦略策定と実行支援を中心に活動を展開。共著書に『稼ぐ力を取り戻せ!-日本のモノづくり復活の処方箋』(日本経済新聞出版社)等。

Interviewee

佐々木 大輔 氏

ささき・だいすけ

freee株式会社

代表取締役

一橋大学商学部卒。データサイエンス専攻。大学在学時よりインタースコープ(現マクロミル)にて新しいマーケティングリサーチ手法を開発。卒業後は博報堂にてマーケティング戦略の立案に従事。未公開株式投資ファームでの投資アナリストを経て、ALBERT執行役員に就任。2008年Googleに参画し、中小企業向けのマーケティングの統括等を担当。この後freeeを創業。