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生存可能性の高い、テクノロジーに淘汰されないキャリアとは

第一線の経営コンサルタント、140億円企業経営者が語る、人工知能時代の優秀人材論

Mar, 11, 2016

レバレジーズ株式会社

岩槻 知秀 氏

テクノロジーに職業が淘汰される未来をどう生き抜くか?

■岩槻 2年ほど前、英オックスフォード大学が発表した予測は大きな話題になりましたよね。米国では今後10年から20年の間におよそ半数の職業がIT化や人工知能(AI)、ロボットに淘汰されるというものです。日本も例外ではなく、単純作業や機械学習で対処できる仕事の担い手は徐々に機械によって置き換えられていきます。そうした中で、市場価値の高い人材であり続けるための秘訣はありますか?

■波頭 人材としてコモディティにならない価値をどう獲得するか、という部分をまず意識すべきでしょう。例えば私が身をおくコンサルティングの世界でもAIが奪う部分は多そうです。AIは、ある事象と別の事象との意味的なつながりを見つけるのでなく、インプットからアウトプットを導くアルゴリズム的な分析を得意としています。特に若手アナリストに求められるような定型的な仕事は、急速に代替されていく可能性も十分にあります。

だからこそ、今のテクノロジーを前提にしたジョブスキルや今までの企業の中でのキャリアモデルに捉われず、既存の枠組みを突き抜けていく人材でなければ、今後はバリューが出せなくなります。偏差値のような画一的な指標を追ったり、単純な序列化を争うようなゲームではなく、「自分自身が何者でありたいのか」というビジョンを明確にし続けることが重要です。短期的には厳しい鍛錬や努力の集積も必要でしょうが、長期的な観点ではそうした鍛錬や努力を経たからこそ得られるスキルがやりがいのある、しかも楽しめる仕事を与えてくれると思います。目先だけを見て小賢しく判断するべきではありません。

■岩槻 機械との競争だけでなく、世界の労働力との競争も始まっていますね。インターネットが普及して世界が繋がった今、言語や場所の制約が少なくなれば、最終的にはどの国でも、同じ仕事に対して同程度の賃金価値となるように収斂していきます。AIや安価な労働力への代替の結果として、賃金低下の圧力に直面することになります。

 逆に、クリエイティビティを発揮する仕事や、人の感情を動かす仕事、新興国では難しい高度な教育と専門性を必要とする仕事、大きな組織を率いる仕事などは代替されづらいと思います。事業を生み出し成長させる「事業家」や組織を牽引する「マネージャー」の能力は、ITやロボットには代替されにくく、賃金低下の波にも飲み込まれにくい領域の一つです。

 

経営コンサルタント、経営者から見た優秀人材の条件

■岩槻 コンサルティングの話題が出ましたが、現在ではどのようなテーマが中心となっているのでしょうか。いま経営者として感じているのは、かつては戦略が重要だったが現在では組織づくりが重要、ということです。ロジカルに考えれば戦略は非常に限定されたものが導出できるので、むしろ戦略を履行できる人材の市場価値が高くなっています。

■波頭 実際、いわゆる戦略系の仕事は相当減っています。私がコンサルタントになった30年ほど前は、マイケル・ポーターやフィリップ・コトラーがデビューしたばかりの時期にあたります。当時の大半のビジネスパーソンがまだ両者の名前すら知らないような時代でした。深い知恵やクリエイティブな思考力ではなく、単にそうした知識があるだけでそこそこ良い戦略が描けたのです。

 ただし、知識の非対称性だけで戦略の優劣が決まったのは、80年代終わりから90年代初めまで。それ以降はコンサルティングビジネス自体がコモディティ化して、戦略系ファームがそれまで担ってきた機能を果たすのが難しくなりました。たとえば、現在の大手外資系コンサルティングファームの注力領域も、システムやオペレーションといった戦略以外の対象にシフトしてきています。コンサルタント一人ひとりの仕事も分業化して、定型的なものが増えましたね。多くの学生が口にするコンサルタント像は、正直、時代遅れな感があります。

■岩槻 80、90年代当時のコンサルティング会社に相当するような猛烈な成長環境をいま得ようとするなら、どうするべきだとお考えですか。

■波頭 大企業であれば、多数の新卒入社の標準モデルに合わせた業務とキャリアパスが設定されているので、猛烈なレベルでの鍛錬は難しいかもしれません。新卒であれば売上30億円以上のベンチャーで社長の付き人や事業責任者になることが考えられます。あるいは起業ですね。状況に応じて変化する発言や意思決定の背後にある経営者の考えを理解できるポジションは、非常に早く人を育てます。

■岩槻 波頭さんはこれまで多くのビジネスパーソンと仕事されていますよね。その中で優秀だと思えた人材には共通する点や条件があったのでしょうか?

 私は常々、時間軸を長く持ち、定量・定性両面で価値提供できる人物が優秀だと感じています。売上やユーザ数といった定量目標の達成能力だけでなく、組織に対してプラスの影響を与えられるソフトな側面も大事です。そのための条件として、情熱・人柄・知性の3要素が高いレベルで備わっていることが非常に重要だと考えています。

■波頭 マインドとしては、自分が引き受けた仕事を責任をもって果たす、信頼のおける人物ですね。岩槻さんも言うように、知性はせいぜい2番か3番で、それ単体で優秀さを感じることはありません。行動様式としては、何よりもチャレンジと行動が重要ですね。知らないことや難易度の高いことに対して全力でチャレンジする積極性。そしてやるとなったら手を動かす、足を使ってまず動く、気持ちを込めて人を説得する。とにかく、チャレンジと行動の積み重ねが、能力と実績の両面で大きな成果をもたらしてくれます。

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レバレジーズ株式会社

Interviewee

岩槻 知秀 氏

いわつき・ともひで

レバレジーズ株式会社

代表取締役

1980年生まれ、大阪府和泉市出身。早稲田大学社会科学部入学後、大学1年時からIT企業にて経験を積む。2005年大学卒業と同時にレバレジーズを創業し、現在に至る。「関係者全員の幸福の追求」という理念のもと、創業15年で売上451億円企業を実現。「働きがいのある会社ランキング2019」大企業部門ベストカンパニー、女性部門のW受賞、「ワンキャリア就活クチコミアワード2019」人気企業ランキング インターン部門GOLD、「東大京大21卒就職ランキング」TOP100。

Interviewee

波頭 亮 氏

はとう・りょう

株式会社XEED

代表

東京大学経済学部(マクロ経済理論及び経営戦略論専攻)を卒業後、マッキンゼー&カンパニー入社。1988年経営コンサルティング会社XEEDを設立。戦略系コンサルティング分野の第一人者として幅広い分野で活躍を続ける一方、明快で斬新なビジョンを提起する論客としても注目されている。