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地域活性のフィールドを拡げ、 地域の付加価値が増す社会を実現する

株式会社フューチャーリンクネットワーク(以下「FLN」)が2006年、最初に自治体との協働を始めてから12年。地域独自の課題を解決し、地域活性化を推進する同社が着実に築き上げてきた、地域連携の基盤と今後の展望について、代表の石井氏に聞いた。

Jan, 15, 2019

株式会社フューチャーリンクネットワーク

石井 丈晴 氏

地域の情報流通を官民協働でスタートしたパイオニア

 FLNは現在、地域情報流通事業を柱に複数の事業を展開していますが、そもそも地域の付加価値情報を流通して、地域を活性化していきたいと思った時に、自治体の情報と民間の情報はワンストップであるべきだというのは、創業当時から考えていました。

 例えば、子育て一つをとっても、保育園の情報は行政のホームページでは調べられず、予防接種は市の保健課、子ども手当は子供支援課と何回も調べなければならず、行政と民間の連携不足や行政の縦割りには課題を感じていました。

 そんな時、イギリスが香港行政のホームページ運営に民間媒体を活用した事例を見つけて、考えていたビジネスモデルが確信に近いものになり、2004年頃から官民協働で地域課題を解決するという公共ソリューション事業を構想し始めました。意気揚々とスタートしたのですが、当時は自治体は自治体、民間は民間で事業を行うのが主流で、民間企業が自治体と連携して地域活性化を推し進めるという前例が無かったので、何百回と断られましたね。

 そうした中、ある川崎市職員の方にお会いした際に、私たちの話に興味を持っていただき、どうすれば議会を説得できるか、運営が法的根拠に基づいているか、など一つひとつの課題をクリアして、2006年に川崎市との、最初の官民協働が実現しました。

 当時サービスを開始するに至ったポイントは、行政が民間情報を出せないのは市民に不利益があるという点。もう一つは税金投入を軽減して、継続的なサービス提供が可能になるという点。最後はサービスの中立性と品質を保つことができるという点です。川崎市との協働は現在でも続いていて、3年目以降はサイトの収益で運営されているので、税金が投入されていた状態から自立採算に移行することができました。

いま地域で求められている、付加価値情報の流通

 創業当初から一貫して、理念に基づいた地域活性化のためのサービス提供を行ってきた理由は三つあります。1つ目は日本全体のGDPをあげるため。2つ目は主要な都市機能が一箇所に集中するのを避ける、安全保証上の理由。そして3つ目はイノベーションを起こす文化の多様性を維持するためです。

 創業間もない頃はインターネット黎明期で、まだGoogleもないような時代でした。インターネットは地域の付加価値情報を発信していくのに最適なツールだと感じていましたが、当時は検索エンジンやデバイス開発競争が盛んでグローバル競争になると捉えていたので、いずれ必要となるであろう付加価値情報を足で稼いで蓄積していこうと考えていました。過去には飲食店専門サイトやクーポン配信サービスなど、地域情報を配信する一つのツールとしてそれらが勢いを増す時期もありましたが、最近はより地域の付加価値情報が求められるようになってきているという実感があります。

 また、地域のコミュニティは、何かあった時には安全を担保するための防止策として活用できたり、情報交換を円滑に行うためのハブとなったりもします。そうした価値も今後さらに浮き彫りになっていくことでしょう。

 おかげさまで全国の運営パートナー企業は120社に及び、毎月1、2社ずつ増えています。それだけ地域の課題を肌で感じている企業が多くあり、その解決のために各地域の経営者の方々が、経営判断として地域活性化のビジネスに参入する意思決定をしているということです。さらに、私たちが地道に培ってきたノウハウや蓄積した情報を必要としてくださっているという現状があります。地域の経済コミュニティの中で、地域の論理や、意思決定のプロセス、商店街や商工会議所との付き合い方まで、私たちが実際に経験してきた具体的な事例をもとにパートナーに情報提供できるので、本社が船橋にあるというのが、結果的に圧倒的な強みになっていますね。

理念に基づき、事業領域をぶらさずに築き上げた好循環

 今や官民協働は当たり前で、地方創生の文脈でもだいぶ賑わっていますが、以前は地域情報ポータルなんて、儲からないから絶対やめたほうがいいとか、NPOでやったほうがいいとか、さまざまな助言をいただいたこともありました。でも十数年経った今は、事業環境も大きく変化していて、自治体にアプローチした時に、会っていただけないことはまずなくなりましたし、直接お問い合わせをいただくことも増えてきました。ようやく一丁目一番地になってきたという実感です。

 社内では「利益がなければ生きられない、理念がなければ生きる価値がない」という言葉が共通認識となっているのですが、あらためて振り返ってみると、今があるのは理念先行で経営してきたからに他ならないと思っています。収益がなければ事業経営は成り立たず、継続性が担保できません。だからといって収益のために自分たちの理念から外れたことはしませんでした。正しい事業をやって価値を提供し続けていれば、収益が上がらないはずはないと考えて、そこをぶらさずに続けてきたからこそ、自社のビジョンについて堂々と語ることができますし、それに共感する社員やパートナーが仲間として集まってくれています。さらに地域と連携を深めていくためには、何よりも誠実さが求められますから、その誠実さを軸に地域といかに向き合って、貢献価値を提供していくかを、突き詰めて考え、行動する習慣が根付くようになりました。そうして組織がますます強くなり、人が財産となる好循環が生まれてきたという感じです。

地域のマネジメントシステムを数十年後の世界へ

 今後、私たちが取り組む地域情報流通のカバーエリアはますます広がり、全国に波及していくのは時間の問題でしょう。一方で、すでにテキストで文字を読ませることは時代遅れになりつつあるので、音声検索で情報が読み上げられるような機能など、最新技術を使った新しいあり方を追求していきたいと思っています。

 また全国に存在する、活用されなくなったインフラに付加価値をつけて再活性化していくことにも取り組んでいきたいですね。例えば、廃校でお店を経営してもらったり、共通の趣味や習い事をしている人が集まることのできるコミュニティの場を作ったりすれば、地域の人は、思い出の場所を失わなくて済みますし、交流の場所が生まれて活気のある街を再現することができます。

 さらにその先には、日本と同じようにアジア各国も少子高齢化に見舞われる時代が訪れます。都市に人口が集中し、地域が過疎化することが予想されるので、自社で蓄積したノウハウを活かし、地域マネジメントシステムとして海外に輸出できればと考えています。それによって、ゆくゆくは日本だけでなく世界の国々の地域活性化にも貢献していきたいですね。

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株式会社フューチャーリンクネットワーク

Interviewee

石井 丈晴 氏

いしい・たけはる

株式会社フューチャーリンクネットワーク

代表取締役

慶応義塾大学商学部卒業後、株式会社リクルートに入社。学生時代より社会の役に立つ事業がしたいと考えており、2000年、「地域活性」をキーワードに株式会社フューチャーリンクネットワークを設立。千葉県出身。趣味はギターとトレイルランニング。