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“Credit Tech”で、新しい信用を創造する。事業と組織の両輪で、性善説に基づく社会の実現を

人々の生活に急速に根付き始めたFin Tech。世界規模で加速する潮流の中で、信用創造のあり方にも変化の兆しが見え始めている。Credit Tech“を掲げ、革新的な方法で信用創造に挑むネットプロテクションズは、 今なぜ信用を再定義するのか。 Credit Tech推進室リーダーであり、新卒採用責任者も務めた河西氏に、同社が見据える未来の社会とそれを可能にする事業や組織の特徴について聞いた。

Dec, 02, 2019

株式会社ネットプロテクションズ

河西 遼 氏

データとテクノロジーの活用で、新たな信用を創造する

――まずはじめに、ネットプロテクションズが推進している「Credit Tech(以下、クレジットテック)」とはどのようなものか教えてください。

 クレジットテックは「クレジット(信用)×テクノロジー」から生まれた造語です。データとテクノロジーを活用することで、これまで存在しなかった新しい信用を生み出し、可視化していく。それによって社会的な信用を増していき、取引やコミュニケーションを円滑化するような価値を提供していく事業領域だと捉えています。

 そもそも信用とは、不信感や危険を軽減していくことで生まれるものだと考えています。世の中にある危険や脅威が取り除かれることで、不信感や不安感がなくなり、信用が生まれていく。さらに信用が積み重なっていくことで、メリットや期待感に繋がっていくと思います。

 例えば、飲食店の口コミ投稿や、SNSの「いいね」の数、友達の人数などは、お店の質や人格を保証するような情報の一つです。信頼できる他者からの評価や、大勢の人の承認は、信用を構成する一つの要素になると思います。ただ、あくまでもこれらはクレジットテックに活用できるデータの一部にすぎません。クレジットテックは、何か一つの根拠に依存するのではなく、様々な指標を元に、多面的に信用を測り得るものだと考えているからです。

リスクをのみ込み、ユーザーの利便性を高める

――ネットプロテクションズの事業もクレジットテックに当たるものだと思うのですが、具体的に、どうやって信用を生み出しているのでしょうか。

 私たちはNP後払い、NP掛け払いといったサービスを提供しています。NP後払いはBtoC向けの、クレジットカードがなくても後払い決済ができるサービスです。例えば通信販売の場合、支払いの主流はクレジットカードです。しかしクレジットカードは、作りたくても作れない人もいますし、作ることに抵抗感がある人もいます。そういう人たちにとって、通信販売の買い物は不便なものになってしまいます。それではクレジットカードを所持できる、一定の層しか利便性を享受できません。そこで弊社が未回収リスクを保証する、後払いシステムを導入しました。

 NP掛け払いも、BtoB向けであることを除いて、システムはほとんど同じです。売掛、買掛は古くからある商習慣ですが、支払い能力に対して信頼がおける、一定規模の企業しか取引することができませんでした。創業間もない会社や、中小企業、個人事業主はどうしても不利になってしまう状況があったんです。そこに弊社が介在することで、掛け払いができる環境を実現しました。これによって、事業者は規模の大小に関わらず、フラットな状態でチャレンジできるようになり、取引先企業も安心して取引できるようになりました。両方とも、これまでの金融業界の常識では無理だと言われたサービスでしたが、今ではほぼ誰にでも使っていただけるサービスです。

 もちろん未回収となるリスクはゼロではありませんが、それも織り込んだ上でこのサービスの提供を開始し、過去に信用の実績がないことから「なんとなく怪しい」と切り捨てられていた人々に対して、先に信用を付与することにしています。結果として、これまでメリットを享受できなかったユーザーの信用情報の蓄積が可能になりましたし、実績ベースではなく新しい信用を創造することができるようになり、より精緻なリスクコントロールも可能になりました。何よりも、これまでメリットを享受できなかったユーザーがサービスの利便性を感じられるようになったことが大きな変化です。

「性善説」に基づく思想が、事業や組織づくりの土壌となる

――なるほど。サービスの支払い実績によって、より多くの人に信用を創造できるようになったんですね。ただこうしたサービスは、リスクがあることから多くの事業者が手を出さなかった領域だと思います。どういった思想でこの領域でビジネスを始められたのでしょうか。

 それは、代表の柴田の「性善説を大事にしていきたい」という思想によるものです。柴田はこの会社の経営を請け負うことになってから、性善説に基づいて事業を展開しています。例えばNP後払いも「あとで必ず支払ってくれる」という性善説に基づいて設計されています。実際、しっかりと支払ってくれる人がほとんどなので事業が成り立っています。こうしてNP後払いは累計利用者数が1億人を突破し、NP掛け払いとともに成長を続けています。事業を通じて私たちが実現したい社会を創りあげていくためには、性善説が必要不可欠だと考えています。

 実は、ネットプロテクションズは事業だけでなく、組織づくりも性善説を元に行っているんですよ。組織においては、個人の自律性や自己実現を大事にしたティール型の組織を作っています。社内では「自律・分散・協調型組織」と呼んでいますね。上下関係や競争関係を無くして、個の自己実現と全体の協調を両立させる、新しい組織の型です。

 中でも特徴的なのが、人事評価制度です。一般的な組織の評価制度は、報酬の最適配分が重要視されてしまい、それによって限られた人件費を社内で奪い合うような構図ができてしまいがちです。これでは金銭的なインセンティブが金銭面以外へのモチベーションを阻害してしまいます。そこで評価制度の考え方を「個人の成長の支援」に大きくシフトすることにしました。性善説に基づき、資源の奪い合いではなく、社員全員が互いに支え合い、学び合う、「与え合い」に変えていこうとしたんです。

 具体的には、まずマネージャー制度を廃止しました。どのプロジェクトも固定の役割の人はいないので、全員で話し合う中でそれぞれの役割を決定しています。部署の異動も話し合いによって行われますね。また、月次の面談もよくある上司部下という限られた関係性の中で行われるのではなく、ローテーションしながら様々な人と話せるようにしています。評価も360度評価といって、特定の一人ではなく、その人に関わる人全員で評価し、それが反映されるようになっています。

 また、報酬もある程度ベーシックインカムのような設計にしていて、細かな差分はつけていません。社員には市場の平均給与より高い報酬を支払うようにして、細かい部分は気にしなくてもいいような状態にしています。

 こうした取り組みによって、金銭的な側面を気にしたり、余計な競争意識を持ったりすることなく、本質的な自己実現に向き合える環境を整えています。

自律・分散・協調型の世界観を、率先して体現する組織

 こういった組織設計において重要なのは、まずミッションへの共感性です。個人の意思と会社のミッションの方向性を揃えることで、個人も社内で自己実現ができるようになるし、会社自体も望む方向に進んでいける。互いにwin-winの状態で働くことができます。

 次に、潤沢な資源です。資源が足りないとどう分け与えるかという問題で、互いに干渉する領域が広くなり、衝突しやすくなってしまいます。潤沢な資源を持っていることは、組織づくりにおいても重要です。

 全員がある程度同じ方向を向いて、ある程度の報酬をもらって納得しているからこそ、衝突することはあっても建設的に議論して全体最適に向かって進めると思っています。事業だけでなく、組織も個人の善性を信じて、自主的に協調することで成り立っているんですよね。

 最終的には人々の関係性が信用や信頼で溢れる状態になるのが理想です。その結果として、性善説に基づいた形で社会が回り出すのではないかと考えています。そういう意味では、いまネットプロテクションズの組織の中で体現していることが、理想の社会の状態に近いですね。個人が自分の意思と向き合うことによって、社会の価値や幸福の総和が高まること。社会全体が自律・分散・協調することによって、個人の意思を尊重しながら全員が豊かになる状態を作り出せるのではないかと考えています。

理想的な社会の実現を後押しする、クレジットテックの可能性

――事業も組織も、性善説に基づいて設計されているんですね。クレジットテック領域の事業や組織づくりを通して、ネットプロテクションズが目指す未来について教えてください。

 先ほどお話ししたような、人々の関係性が信頼や信用で溢れる理想的な社会の実現に向けて、私たちは今後、クレジットテック領域の事業拡大に取り組んでいきたいと思っています。今はまだ、自社で有しているような支払い情報をはじめ、信用の元となり得るデータが各領域において、断片的に存在している状態です。それらをつなぎ、体系化することで、信用情報として社会に届けられるような状況を作りたいと思っています。

 金融、決済事業はもちろんのこと、それ以外にも事業の幅を広げていきたいですね。例えばネット取引。特にCtoC取引においては、私たちの情報を活用することで、利便性の高いサービスの普及を後押しできると思っています。不正や犯罪、トラブルを回避するために、もっと精度の高いリスクコントロールが可能になるでしょう。また、スコア化された信用を元に、様々なサービスの優遇が受けられるような施策も実現可能だと思います。そういったシステムを展開しようとしている企業もありますから、他社との連携も視野に入れながら、価値提供できればと思っています。

 クレジットテックは、資本主義の根幹のOSになりうる領域だと思うんですよ。社会は今後、AIやロボティクスなどの様々な技術が発展することで、限界費用ゼロ、つまりモノを増産した時に追加コストがかからない状態に近づいていくと思います。そうなった時、ベーシックインカムのような制度が導入されるか、そうでなくても低コストで暮らしていける時代になっていくはずです。人が生きるために必要な原資を稼ぐのに費やす時間は、どんどん減っていくでしょう。そうすると、人々が追い求めるものはこれまでの物質的な豊かさから、精神的な豊かさにフォーカスが移っていき、より人間的な活動に注力できる時代になるはずです。クレジットテックはその移行を後押しするような、新しい価値になると思っています。

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株式会社ネットプロテクションズ

Interviewee

河西 遼 氏

かさい・りょう

株式会社ネットプロテクションズ

人事総務グループ

2013年新卒で入社し、大手クライアント向けコンサルティングセールス、市場調査担当、新卒研修WGに従事。入社2年目で新規事業「NP後払いair」の立ち上げ責任者となる。その後「NP後払い」事業責任者を経て、入社4年目以降は人事企画担当、新卒採用WGリーダー、人事マネージャーと人事領域全般に深く携わる。現在は、人事総務グループとCredit Tech推進室リーダー、ビジネスアーキテクトグループを担う。