「人間理解」を軸に理念経営の実現を目指す

Jan, 19, 2018

株式会社ビービット

遠藤 直紀 氏

人間理解による、人間のための問題解決

ビービットは「人間の心理や行動特性を探求することで、真に役に立つ高品質な製品やサービスを創出し、豊かな社会の実現に貢献する」という理念を掲げて、顧客ロイヤルティ経営の導入、主にデジタル領域を対象にしたサービス開発、マーケティング改善のご支援をしています。人間理解に基づいて、人間特性に合った企業システムの在り方、サービスの在り方、マーケティングの在り方をプロトタイピングし続けることで、クライアントの「長期的な事業の成功」に貢献したいと考えています。人間理解のコア手法である「行動観察」では、人間がどういう状況で何をどう認知し、具体的に行動するのかを明らかにしていきます。店舗における接客改善では、お客さまとスタッフのやり取りの観察とインタビューを通じて、効率的な接客を至上とする KPI(日々の活動のパフォーマンスを測る指標)と文化が、お客さまに十分な説明なく、不要な製品をお薦めしてしまうという行動を引き起こすことが明らかになりました。その結果、お客さま対応をすればするほど、お客さまが離反していくという構造が生じます。当たり前のようですが、問題の深刻さに経営者は意外と気付いていなかったり、解決の方法を十分に見据えることができていなかったりすることがあります。このケースでは、こうした人間理解を基に CXO(Chief Experience Officer、最高体験責任者)と議論を重ね、業務・サービスの在り方や企業文化の変革をご支援しています。

企業活動は価値のやり取りであり、人が誰かの役に立つことである

先述の店舗改善の例で重要なのは、スタッフは個人の人間として、お客さまに不要な商品を薦めたいとは思っていないという点です。仕組みや構造がスタッフにそういった行動を促し、結果としてスタッフは仕事に希望を見いだせなくなることもあります。だからこそ、私たちは企業システムの在り方から問い直し、人間特性に合った品質の高い仕組みに変革していきたいと思っています。

なぜ私がこう考えるようになったか。それは私が最初に勤めた会社での経験が影響しています。新卒で入った会社で、私はソフトウェア開発を行っていたのですが、そこでは「ユーザが誰なのか」「どんな価値のために働いているのか」が分からず、誰かの役に立っている実感がありませんでした。少なくとも私の周りには、仕事に誇りを持っている人はいなかったように思います。その頃の自分は生きているのか死んでいるのかわからないと半ば人生を諦めた心境で、全く自尊心の持てない状態になっていたことを思い出します。こういった状態はとても個人的で、特殊だと思っていましたが、その後の仕事経験を通じて、同じような気持ちになっている人が少なからず存在していることを知りました。企業活動は価値のやり取りであり、人は誰かの役に立つために仕事をし、その実感を通じて幸せを感じる。それが文化として広がっている。そんな社会を創りたいというのがビービットの想いです。

あらゆる体験の品質を科学的に扱う

製品やサービス、企業システムが人間特性に合っているのかを扱うためには、それらの人間にとっての品質を「見える化」する必要があります。製品やサービス、企業システムが人間に提供するのは「体験」です。私たちはユーザビリティという概念を手掛かりに、人間の体験を科学的に扱います。大切なのは「誰が何のために行動しているのかという文脈の中でしか体験の品質は議論できない」、「体験とは相互作用であり、提供者と受益者の双方が存在し続ける必要がある」という2点です。行動観察は文脈理解の強力なツールです。店舗のスタッフに「押売りせずに丁寧に接客しろ」と指示しても、指標や文化に縛られてどうにもできないということは、スタッフの方が置かれている状況を知ることで理解できます。また、押売りを続ければ短期的な利益は上がるかもしれませんが、お客さまは離れていき、スタッフの離職率も高くなるかもしれません。つまり、体験が成立するための「人」がいなくなってしまいます。これもまた、品質が高い体験とは言えないと考えています。

「品質」という概念は、デジタルインターフェースから店舗やコールセンターでの対応、マーケティングコンセプト、コミュニケーション設計、そして経営の在り方まで、あらゆる対象について検討可能です。経営・マーケティングにおける体験設計を通じて、人間にとって品質の高いビジネスシステムを創りたいと考えています。

株式会社ビービット

Interviewee

遠藤 直紀 氏

えんどう・なおき

株式会社ビービット

代表取締役

横浜国立大学経営学部経営システム科学科卒。アクセンチュア(当時アンダーセン・コンサルティング)を経て、2000年にビービット設立。「Marketing Communication」等、ビジネスカンファレンスにて多数講演。2013年TED×Todaiへ登壇。