女子学生へのアドバイス
私が大学生の頃は、女性の門戸が今と比べて圧倒的に限られていました。なので、バイクが好きだったということと、国際的な仕事をしたかったという理由で、本田技研に入社しました。当時は、女性が商社・銀行に入ったら、やりたい仕事などはできず、ひどい目にあうということが言われていたので、自ずと選択肢は限られていましたね。
今の時代に生きる女子学生は、逆に選択肢がたくさんあって大変だと思いますが、とても幸せなことです。だからこそ、チャンスが増えたからこそ、「体力」はとても大事です。男性に負けないくらいのエネルギーを持って生きていってほしいとおもいます。そしてどんどんチャレンジしてください。
世の中で女性はこうあるべき!という固定観念はものすごい勢いで変わりつつあります。そして、世の中の流れにあわせて、きっと自分自身の能力や志向も変わっているはずです。そのときに自分の能力の棚卸し点検をしっかり意識してください。自分にはどのような能力があって、どのような強みがあるのか。そして自分だけでこもって考えるのではなく、いろいろな人と会って、自分の姿を客観的に見つめなおしてください。そうすれば、幸せな生き方を自然と選択できると思いますよ。
世の中の風潮に流されない人材の必要性
人それぞれの価値観、生き方の問題なのですが、敢えて日本の学生に足りない、もっとこういう学生が増えてほしいという観点でお話すると、日本の学生には、もっとセルフイニシアティブを持ってほしいと思っています。必ずしもリーダーになる必要はないので、周りに流されずに自分がエンジンになって、どんどん引っ張っていける人がもっと増えてほしいですね。なぜかというと、昔の日本であれば、アメリカがやったことをより精密に、あるいは工夫を凝らしてやればよかった。しかし、今は日本とアメリカはこれからの経済発展という観点では、ある意味にらみ合いの状況です。どちらからも雇用を生み出すような社会的付加価値の高い新しい産業が出てきていません。
そんな時代には、自分がエンジンになって、人と違うことをやろう!という人が、ものすごくたくさん必要です。シリコンバレーに見学に来る学生や、ベンチャー企業でインターンをしている学生など、そういう気概をもった学生は増えてきているような気もしますが、もっともっと増えてほしいと思います。
また、自ら何かを始めなくとも、すでに新たな事業を興したり、興そうとしている人に共鳴する人は必ず必要です。むしろ、優秀なサポーターがいてこそ新たな潮流が生まれるものです。しっかりとした選球眼をもって、既に事業を起している人や面白いと思える新しい事業を見つけたら、思い切って飛び込んでみるような、「プチ変人」(ちょっとした変わり者)もどんどん増えてほしいと思います。
シリコンバレーは厳しいぬるま湯
大企業で長く勤めているのが恥ずかしいという雰囲気があるのがシリコンバレー。これだけ聞いても日本の価値観とだいぶ違うことがわかると思います。常に何か新しいことをやらなくては、という雰囲気があり、とても刺激的で、新しいものにわくわくできる人にとっては魅力的な場所です。別の言い方をすると、厳しいぬるま湯ということになります。大企業も業績悪化によるレイオフのリスクやベンチャーも倒産のリスクが常に存在し、雇用の安定なんて概念はそもそもないし、個人も求めていないという厳しい環境。でありながら、失敗をしても、次のチャレンジがしやすいという失敗に対して寛容な社会でもあるのです。
日本企業、あるいは日本国内の外資系企業で仕事をするのも人それぞれの価値観次第では良いのですが、人口減少、内需縮小に向かう日本で展開する外資系企業は、これからは特に厳しいでしょう。これまでの日本が成長した時代では、良かった選択も、状況が変わったこれからの時代にも良い選択とは限りません。今後、ますますグローバル化する流れの中で、思い切ってシリコンバレーに来てしまうという選択もありますよ。アメリカのほかの地域に比べれば、活動しやすい地域ですし、生きていくために必要な情報はいくらでもあります。
まずは、自分の可能性を国内に限定せずに、世界に目を向けましょう。その中の選択肢として、シリコンバレーが魅力的だなと思えたならば、是非、思い切って乗り込んできてください。そのときは、こちらでお会いしましょう!
1983~87年
一橋大学社会学部卒業後、本田技研工業海外営業部中南米課に「女子総合職」採用第一号として入社。「プラザ合意」で円高になり大幅に女子社員をリストラした際、庶務が回ってきたことをきっかけに、円高を利用して海外留学しようと決意して退社、スタンフォードMBAに挑戦。
1989~96年
NTT America Inc.事業開発担当。スタンフォード卒業後、NTTに「本社採用」で入社、すぐに海外赴任という形式でニューヨークの現地法人へ。
1996~98年
NextWave Telecom Inc., Director, Business Development。FCCのオークションで携帯電話免許を取って参入しようとした壮大なベンチャー会社。そこで、通信キャリアに対して卸契約を売る仕事を経験。
1998~ 現在
ENOTECH Consulting, Principal。現在はグローバルな通信・ネット分野とその他技術分野において、提携・投資、企業戦略のアドバイスなどを行う経営コンサルタント。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。
著書「パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」では、世界に目を向けない日本人の内向的な志向を指摘し、話題を呼んでいる。
「Tech Mom from Silicon Valley」 のブロガーでもあり、地元紙ベイスポにはその抜粋である「Tech Momの侃々諤々」が連載されている。