日本は「パラダイス鎖国※」を脱すべき
※世界に目を向けない日本人の内向的な志向を表現した海部氏による造語
パラダイス鎖国についてブログではじめて書いたのが実は2年前です。その当時から、日本人あるいは、日本企業が海外に目を向けなくなっている傾向を危惧していました。これは学生さんにもあてはまることで、海外がもはや憧れの対象でなくなりつつある。我々の時代は、何が何でも海外に行きたい、働いてみたい、そんな欲求がありましたから、自ずと日本人は世界にでていきました。出て行かなくなったのは、ある意味日本が先進国になった証かもしれませんが、むしろ海外とのつながりが重要になるこれからの時代には危惧すべき現象です。
私は、新型と呼んでいますが、最近は「自己正当化」をしてしまう傾向も見受けられます。日本はこうなんだ!日本が素晴らしいんだ!と。確かに日本は経済的にも社会的にも素晴らしい国のひとつですが、それを言った瞬間に新しい可能性を一気に狭めてしまいます。最初から大して知ろうともせずに、自ら海外への門戸を閉ざしてしまうのはとてももったいないことです。
日本企業のパラダイス鎖国化についても触れたいと思います。最も顕著な例が、ビジネススクールに来る日本人の数です。私の時代は、スタンフォード大学のビジネススクールであればクラスに最低でも10人くらいの日本人はいましたが、今では2~3人になってしまいました。明らかに企業派遣が減ってしまった影響です。また、海外転勤の社員も花形ではなく、むしろ冷遇されつつあります。昔は海外手当は出るし、花形の部署として羨望の対象だったものです。しかし、今では海外手当も減り、3~4年海外にいると本社の政治についていけなくなり、出世競争に取り残されてしまうというわけです。
ではどうしたらいいのか。こればかり一概に答えることができません。個々人、各企業が自ら答えをみつけるしかありません。ただ、グローバル化への対応が一層求められていく時代という認識を持ち、最初から海外という可能性を閉ざさない。これだけは忘れないでいただきたいです。
起業やベンチャー企業を考える際に留意すべき点
起業、あるいは事業創造というのは一人ではなかなか難しいものです。すなわち全部自分でやる必要はないのです。シリコンバレーでも、大きく成功している企業は、二人で協力しているパターンが多いですし、日本でも、例えば本田技研の本田宗一郎氏と藤沢武夫氏のコンビはとても有名です。 また、大学卒業後すぐに、起業することは並大抵のことではありません。なぜなら、起業に求められる能力は大学で教わる類のものではないからです。ベンチャーの教科書は起業家の武勇伝のみと考えられがちですが、実はそうではなく、しっかりとした方法論があります。そのためのスキルセット、時間、トレーニングが必要で、そこから確率の高い事業創造が生まれます。将来、起業を考えている学生は、まず早くから事業創造の方法論が学べ、実務としてトレーニングができる環境に身を置くことが大切です。そのためには、ビジネススクールに行くのも良いでしょうし、何より事業創造の機会が若いうちからできるだけ得られるような、成長している組織に身を置くべきです。旧態依然とした日本の大企業では難しい会社が多いかもしれません。
1983~87年
一橋大学社会学部卒業後、本田技研工業海外営業部中南米課に「女子総合職」採用第一号として入社。「プラザ合意」で円高になり大幅に女子社員をリストラした際、庶務が回ってきたことをきっかけに、円高を利用して海外留学しようと決意して退社、スタンフォードMBAに挑戦。
1989~96年
NTT America Inc.事業開発担当。スタンフォード卒業後、NTTに「本社採用」で入社、すぐに海外赴任という形式でニューヨークの現地法人へ。
1996~98年
NextWave Telecom Inc., Director, Business Development。FCCのオークションで携帯電話免許を取って参入しようとした壮大なベンチャー会社。そこで、通信キャリアに対して卸契約を売る仕事を経験。
1998~ 現在
ENOTECH Consulting, Principal。現在はグローバルな通信・ネット分野とその他技術分野において、提携・投資、企業戦略のアドバイスなどを行う経営コンサルタント。シリコンバレー在住。子育て中の主婦でもある。
著書「パラダイス鎖国 忘れられた大国・日本」では、世界に目を向けない日本人の内向的な志向を指摘し、話題を呼んでいる。
「Tech Mom from Silicon Valley」 のブロガーでもあり、地元紙ベイスポにはその抜粋である「Tech Momの侃々諤々」が連載されている。